——志磨さんは、マリーズ時代はロックは技巧云々ではないという美学と爆発力を推し進めてバンドを転がしていたと思うんですね。その後、ドレスコーズではテクニカルなアプローチにも目を配って、今はひとりでバンドを動かしてるわけじゃないですか。
志磨「そうですね」
——今現在はどんなモードなんですか?
志磨「僕もね、そこは現在進行形でいろいろ考えていて。去年ひとりでドレスコーズのアルバム(『1』)を作って、そこからいろんなミュージシャンにドレスコーズに出入りしてもらうようになって。もう、誰でもドレスコーズになれるみたいな。この夏のライヴはOKAMOTO’Sも一緒にやってくれて。お客さんに関しては、おそらくそんなに目まぐるしく入れ替わってないと思うんですね。だから、バンドのメインコンポーザーとオーディエンスは変わらないまま、演奏者が変わってるという状況でライヴをやってるんですけど。そうすると、やっぱり毎回のライヴがものすごく違うんですよ。でね、それはお客さんにも影響していることがわかるのがいいなって。僕らは演奏するからもちろんどのライヴでもいろいろ考えるんだけど、お客さんってそこまでサウンドについて細かく考えない人も多いじゃないですか。『カッコよかった! ヤバかった!』という感想が多くて。でも、こういうライヴのやり方を実践してみて、出音やプレイスタイルはしっかりお客さんに影響するということがわかった。それがすごくおもしろい。だから、僕の今のモードは制作でもライヴでも演奏者が違うから常にバンドを組んだばかりのような状況なんです(笑)」
コウキ「なるほど(笑)」
志磨「それってズルなんですけど、最強なんですよ。バンドは組んだばかりのころがいちばんカッコいいから」
——でも、やっぱり志磨さんはそういうフレッシュな状態を常に求めてるんだなって思う。
志磨「そうっすね。これはもう、アレですね、業というか(笑)。売上云々ではなく、落ちたくないんですよ。トップスピードから落ちたくない。今、僕がやっているのはその方法のひとつって感じですね。じゃあずっとバンドを組み続ければいいんだという(笑)」
——この夏のライヴで、OKAMOTO’Sをドレスコーズに招こうと思ったのは?
志磨「当然、一緒に演奏をしたいと思った人に声をかけて手伝ってもらってるんですが、そのなかでもOKAMOTO’Sは自然とお願いしようと思いましたね。なんて言うんでしょう? これはTPOみたいなことかもしれないですけど、今の日本の夏の音楽シーンっていうんですか? そのなかで野外フェスティバルの位置づけはものすごく大きいじゃないですか」
——市場としても。
志磨「そう。この場に僕が誰と演奏したらおもしろいかを考えて。それで30分くらいのショーケースみたいなイベントではキングブラザーズと一緒にやったりして。で、夏の野外フェスティバルでOKAMOTO’Sと一緒にやるというのはすごく自然にイメージできたんですよね。とりあえずダメ元でオファーしたっていう」
コウキ「それまでの志磨さんの動きをおもしろいことやってるなと思って見ていたので。演奏陣が全員女性メンバーのライヴもキングブラザーズと一緒にやってるライヴも観に行って。お客さんとして『こりゃおもしろい!』と思って観ていたら、まさか自分たちに話がくるとは思っていなかったので『おおっ!』と驚いて。でも、やっぱり僕個人としてはこういう演奏がいいなと思ったり、やっぱりあの曲だったら西さん(毛皮のマリーズのギター、越川和磨のニックネーム)のあの感じがいいなという思いが根底にあるので、それを自分たちがやっていいものなのかという葛藤は正直ありました」