――そういう流れで考えると、クラブ・ミュージック、ヒップホップが出自のtofubeatsが本腰を入れてポップスを作ろうとしているのがメジャー以降の作品だと思うんですけど、前作『First Album』と今作『POSITIVE』の制作する上でもっとも技術的に変えたことは何ですか?
tofubeats「ヘッドホンアンプを買い替えたことによって全体的にJ-POPっぽいシャキッとした音になりましたね。だから、ヘッドホンアンプを買い替えたことに全体が引っ張られたところはあります。あと『First Album』は力が入り過ぎているところがあるんですよ。18曲で80分近くもありましたから。でも今回は60分以下に収めています」
――それは曲がたくさん入っているほうがお得だという考え方だったんですか?
tofubeats「そうですね。でも今年はそうでもないなということがわかって良かったです。たくさん曲が入っている方が正しいと思っていた価値観をやっと刷新できたんです。前作よりも“風通しの良い”作品にしたくて、実際そう作れたと思います」
――これからミュージシャンとしてやっていくと見通した上で『POSITIVE』は本人としてはどういう位置づけとして作りましたか?
tofubeats「『メジャー2枚目を〆切通りに出せないヤツは、一生無理だ』というようなことを山下達郎さんがインタビューで話していたのを読んで、とりあえずちゃんと出そうという意識がありましたね。山下達郎さんだけではなくて、いろんな人がよく言うじゃないですか、2枚目は大変だと。正直作っている最中はもっとダメになるかもしれないという予感もなくはなかったんですけど、そうはならなかった。だから、これからも音楽を続けられるな、という気持ちですね。ただ今年は全体に掴みどころがない年だから、このアルバムが出てどういう反響がくるのかはぜんぜん想像もつかないんですよ」
――掴みどころのない年ってどういう意味ですか?
tofubeats「“これが今年のブームです!”というものがないですよね」
――それはtofuくんの個人的なブームとして、それとも音楽シーン全体を見てそう思いますか?
tofubeats「クラブ・ミュージック・シーン的に今年はコレが流行っています、みたいなのがないなあっていうのがなんとなくありますね」
――去年は何が流行っていたと思いますか?
tofubeats「FKAツイッグスがバーン!みたいなのがないなと。あと、タームとしてのポストR&Bがドーン! フューチャー・ベースがドーン!みたいなのがないですよね。今年は去年の流行をまだなんとなくやっている感じがする」
――ああ、なるほど。ただ、流行と関係ないところでtofuくん自身が急速なスピードで動いていますよね。昨年自分が出会いたいと思っていたミュージシャンの人たちと『First Album』で共作して、宇多田ヒカルさんのカヴァーもやりましたし。
tofubeats「そうなんですよ。しかも今年のはじめにSMAPのリミックス(“華麗なる逆襲(tofubeats remix)”)もやってたんです。夢が叶うのがちょっと早過ぎて狼狽えたんですよ。何か予定がおかしいんじゃないかと。SMAPのリミックスなんて、今年の元旦に作業に取りかかっていますからもうめでた過ぎる幕開けだったんです。後厄とは思えない(笑)。厄年の最後の大晦日にSMAPのリミックスが決まって、紅白が終わってSMAPのスタッフから返答がきますという話だったのを憶えていますね。8日〆切だったので、三が日から作業に取りかかって、4~8日までずっと修正作業をやっていましたね」
――あと今日初めてお会いして、ミュージシャン、アーティストとして当然のことと言えばそうなんですけど、上手くなること、知ることに対しての貪欲さみたいなものをひと一倍持っている方なんだなと感じました。
tofubeats「でも、早く上手くなると、あいだが楽しめないじゃないですか(笑)。だから、やりながら少しずつ上手くなるぐらいがちょうどいいし、上手くなる途中ってすごいいいじゃないですか。ゆっくり変えて行くと、意外と遠くへ来たなと実感できるからいいんですよね」
――わからないことがたくさんあるときの楽しさですよね?
tofubeats「そうなんですよ。中途半端に上手いときの自分には上手くなってしまってからでは絶対に戻れないから大事な時期だと思うんです。あと上手い人はいっぱいいるから、ちょっとぐらい下手でも味があった方がいいとは思っていますね。それはテイさんやパラ・ワンという先輩がやってきたことを見ていて思うことなんです。自分のクセは大事にしていこうと」
――最後に今後のtofubeatsの夢、野望、あるいはヴィジョンについて訊かせてもらえますか。
tofubeats「いつも言っていることですけど、良い曲がたくさん作り続けられたらいいと思っています。良い曲をいっぱい作ってそれを自分で聴くと、カウンセリングになりますから。カウンセリングというか、音楽を作ることで自分のことがわかっていくんです。で、自分でそのことを面白いと思えるんです。でもそうは言っても、面白く思えるようになるのは1年後ぐらいですけどね。音楽を作っているときは絶対しんどいんです、永遠に。でも、そのとき頑張って、1年ぐらい経つと曲を聴いて気持ちいい~ってなるのがわかっているから、ただただやっていく感じですね」
文 二木信/text Shin Futatsugi
編集 桑原亮子/edit Ryoko Kuwahara
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tofubeats
1990年、平成2年生まれ、神戸市在住のトラックメイカー/DJ。インターネットで100曲以上の楽曲を公開し続けるかたわら、 YUKI、FPM、佐々木希、ももいろクローバー、Flo Rida など様々なアーティストのリミックスも手かがけ高い評価を得ている。Web CMなどのクライアントワークも多数。盟友オノマトペ大臣と2011年末にリリースした“水星EP”はアナログ盤として異例のヒットに。強い要望を受けてリリースされたデジタルバージョンはiTunes 総合チャート1位を獲得。iTunes Best of 2012 に選出され、翌2013年のニューアーティストにも選ばれる。2013年春発売の『lost decade』も iTunesで総合チャート1位を獲得。世界のインターネットに散らばる最新のクラブミュージックからJ-POPまで、凝り固まらない平成生まれのバランス感覚を持った新進気鋭の若手トラックメイカー。2013年11月には森高千里をフィーチャリングした“Don’t Stop The Music”でメジャーデビュー。藤井隆を迎えた“ディスコの神様”でも話題に。2014年10月2日にメジャー1st『First Album』、2015年4月1日に『STAKEHOLDER』、そして2015年9月16日に2nd『POSITIVE』をリリース。