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tofubeats『POSITIVE』ロングインタヴュー(前編)

――メジャーからの2枚目のアルバムということになりますけど、先ほどもミュージシャンとしての職業性の話が出ましたけど、職業的な音楽人としてのあり方についてはどういう考え方を持っていますか? 

tofubeats「職業性というのは自分のアーティスト性を伸ばしてくれるところだと思いますね。宇多丸さんが、『ラップの面白さは韻を踏むと思わぬことを言ったりするところ』みたいな話をしていたんです。それに近いですね。つまり、縛りがあることによって自分が思ってもいなかった音楽を作ることができる。たとえば、タイアップで曲を作ることで、ああ、俺はコレに対してこんな気持ちを持っていたのかと知る、そういう発見がありますよね」

――自分の違う面が引き出されるということですね。

tofubeats「そういうことがあるので職業的に音楽を作る難しさはありますけど、職業性に関しては歓迎していますね」

――tofuくんはいまのようにメジャーになる前からJ-POPやアイドルからヒップホップ、ダンス・ミュージックまで幅広く、どんなジャンルの音楽も作ってきたじゃないですか。逆に嫌いな音楽、苦手な音楽はあったりしますか?

tofubeats「嫌いというのではなくて、わからないから早よわかりたいのはヘヴィメタですね。ヘヴィメタやハードロックは一瞬わかりそうになるときもあるんですけど、まだですね。だから、わかったらめっちゃおもろいやろなっていっつも思うんですよ。僕はスラッジやグラインドコアやノイズは好きなんです。関西というのもあって、そういう音楽を体験したり観る素地があるんです。そういう話で言うと、ここ2年ぐらいでやっとわかるようになった音楽がレゲエなんですよ。ラヴァーズ・ロックは好きだったんですけど、去年ぐらいから今年にかけて、いわゆるルーツ・レゲエやレゲトンがわかるようになったんです」

――それは面白い話ですね。何かきっかけがあったんですか? フェスで聴いて気持ち良かったとか、そういう体験があった?

tofubeats「いや、普通に家で聴いていてある日突然、『あ! 良いかもしんない!』と感じたんです。最近ジャマイカの若い人たちのあいだでルーツ・レゲエ・リヴァイヴァルみたいな流れがあるじゃないですか。まだ愛聴までは至っていないですけど、そういうのを聴いているときに『ああ、良いんだな』というのはわかりましたね」

――自己分析すると、ルーツ・レゲエの何がtofubeatsに引っかかったんですか?

tofubeats「いや、それはわからないんです。ある日突然わかるという話なんですよね。あと、自分が試してこそ発言できるという考え方があるんです。だから、発言権を得るためにいろんな音楽をやるというのはありますね。グラインドコアにしてもある日突然わかって、そのときの体験がすごい良かったんです。ハロプロとかもまさにそんな感じだと思うんですよね。だから、基本的に阪神タイガースみたいな感じですよ。ハマったらずっと好きだけど、ハマるのは難しい、みたいな」

――関西人特有の喩えですね(笑)。『POSITIVE』の中でこれまで挑戦していなかったスタイルの楽曲と言えば、EGO-WRAPPIN’の中納良恵さんをゲスト・ヴォーカリストに迎えた“別の人間”はそうかもしれませんね。完璧なバラードですね。この曲ではキーボードを弾いていますよね?

tofubeats「いちおう僕が弾いているんですけど、打ち込みではありますね。MIDIでダーンって弾いて、フッと止める。それを5分間やるんです。で、あとから強弱とかを全部打ち込み直しているんです。この曲には経緯があるんです。去年、本当に尊敬している宇多田ヒカルさんのカヴァー(『宇多田ヒカルのうた -13組の音楽家による13の解釈について』収録の“time will tell”)をやらせてもらったんですけど、そのときに宇多田さんのディレクターの方とおしゃべりさせていただく機会があったんです。そこでここぞとばかりに宇多田さんが使っているピアノのプラグインについてのウラを取りに行ったんです。『宇多田さんはこれを使ってたんですよね?』と。そこで確証を得て、宇多田さんが使っている30GBぐらいのピアノの音源を買って、あまりにうれしくて作った曲が“別の人間”なんです。歌ってもらうのは、昔から好きだったEGO-WRAPPIN’の中納良恵さんにお願いしようと。関西のグループでもありますし、イベントでご一緒する機会もあってお願いしたんです」

――関西の音楽の話が出ましたけど、神戸、京都、大阪の音楽シーンと密接なつながりはあるんですか?

tofubeats「あんまりないですね。特に神戸には表立ったクラブ・ミュージックのシーンらしいものはないですから。だからこそ、住む機能としての神戸を信用しているというのはありますね。しかも昔から僕はクラブに遊びに行ったりもしないので。今年ひとりで神戸で遊びに行ったのだって、昔から大ファンだった寺田創一さんのライヴぐらいですからね。それは事前に予約して行きましたね」

――たしかにこれまでのtofuくんのインタヴューを読ませてもらっていてもクラブでがんがん遊ぶような人ではないとは思っていました。メジャーで仕事をするようになったり、東京に呼ばれることが増えたりして、いろんな人と出会う中で、「夜ちょっとクラブに遊びに行きましょうか?」とか「踊りに行きませんか?」みたいな誘いも受けませんか?

tofubeats「『夜ちょっと遊びに行きましょうか?』なんて言う人は身の回りにいないですね。誘われても、お酒も飲まないし、行かないし、そもそも客として行くフェスとか苦手ですから。ライヴに行ってみんなでワイワイしたいっていう感覚はそこまでないんですよね。だから、本当に大好きなアーティストが来日していてもほとんど行かない。この前もハーバートが来日していて、行くかどうかでめっちゃ悩んで結局行かへん、みたいな。やっぱり僕はアルバムが好きなんですよ。だって、アルバムって良いじゃないですか。何回聴いてもいっしょだし、どこでも聴けるし、貴重なメディアだと思うんです」

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