NeoL

開く

「こどものきもち」vol.6 キム・ソンへ

 

37

――アーティストとして活躍する傍ら、三人の子どものお母さんとしての顔も持つキム・ソンへさん。子どもを生んで何か変わったことはありますか?

キム・ソンへ「一人目が産まれたのはデビューから3年後のこと。“子どもを育てていかなきゃいけない!”っていう本能的な何かが働いたのか、子どもを生んでからすごく保守的になっていた時期がありました。それまで何も考えずに作っていたのが、“こういう風にした方が売れるかな?”っなんて、ヘンにあれこれ考えるようになっちゃった。保守的な要素が入ってきたことで、思うように作品が作れなくなっていったというか。何だか面白くないなって思いながら、ひとり悶々としてました。

あとシブカル祭が出てきたり、きゃりーぱみゅぱみゅの世界観を見た時に、本質は違うんだけど、同じようなことを自分より大規模にやってるひとたちがいるという焦りが出て。私はどうしたらいいんだろうと……。

その時は無理して人と並ぼうとしたり、負けたくないって思ったり、どこか子どもっぽいところがあった。でも最近やっとそういうものから解放されたというか、もう少し自由に、人の目を気にせずに作ってみようというところに戻ってこれた。ずっと悶々としてたけど、それが世の中の評価を気にしてのことだと気づいて、自分でも“どうしようもないな”って思ったんです。今はもう少し余裕を持って作品を作れる気がするし、精神的にもかなりいい状態だと思います。いろいろ悩んだ時期もありましたけど、すごくラクになりました。きっと私、10年周期なんですね。10年経って気づいて、また原点に戻ってきた感じです」

――精神的に解放されたきっかけは何だったのでしょう?

キム・ソンへ「個展が決まったことで、これで何か違う道が開けるかなって思えました。それで、やっと本当の自分に戻れた気がします。あと、三人目の子供を生んだことも大きかったですね。妊娠中って世間に追いていかれる感じがしちゃうので、周りにはギリギリまで内緒にして、普通に仕事をしてました。三人ともそうだったんですけど、幸いなことに私はつわりが全くなくて、妊娠中も平気で動けてしまうんです。だから、余計に仕事がしたいって思っちゃう。生まれる前もそうだったけど、生まれてからもすごく元気で、病室まで歩いていけるくらい。ところが3人目のとき、生んですぐ働き出したら、産後の肥立ちがすごく悪くて。身体がボロボロになっちゃって、ここまでして仕事をする必要があるのかなって思ったんですよね」

――身体を壊してはじめて気付くものがあったという……。

キム・ソンへ「というのも出産直後に出展した展示で、思ったほどリアクションがなくて“ここまで命削ってやったのに!”ってショックがかなり大きかったんです。そのとき、自分は母親なのに、子どもがお腹にいるのなんて一瞬なのに、何をやってるだろうって気付かされた。仕事も子育てもどっちもやりたいっていう気持ちはどうしようもないけれど、だからといって子どもを犠牲にしてはいけないし、子ども以上のものはないってことに気づけたというか。それまでは、子どもは欲しい、でも仕事も沢山したいって感じだった。だけど、子ども優先に考えてあげたいって、やっと思えるようになりました。結果として、創作スタイルを見直すいいきっかけにもなりました」

6061

 

1 2 3 4

RELATED

LATEST

Load more

TOPICS