オンジェイ「森で撮ったり、街でも撮ったり、夏休みみたいですごく楽しかった。撮影現場でもモニターを一緒に見ながら、お父さんが演技を褒めてくれたこともあったし、もっとこうしたほうがいい、ああしたほうがいいってアドバイスをくれたりもして。いろんなことを話せたのが楽しかったです。」
ヤン監督「子供にとって、父親が外で何をしているのかを知るのは大切だと思います。オンジェイも私の仕事を職業として知っていたり、現場に挨拶に行く程度の経験はあったでしょうが、、実際に仕事として、どういうことをやっているのかまでは知らなかったと思うんです。私の場合、父は役者でもあったので、演劇のツアーに着いて行ってドキュメンタリー作品を撮ったことがあります。その時に初めて彼がどういう仕事をしているのかを理解しました。そうした経験があることから、子供に親の仕事を見せるのは重要だと思いますね。」
——普段の生活の中でも息子さんとの間で決めていることはあるんですか?
ヤン監督「特に決めたルールはないのですが…、私のオフィスが自宅の地下室にあるので、オンジェイは学校が終わると毎日のように尋ねてきた時期がありました。その時に20分だけ――僕らの間では“秘密の会話”と呼んでいたんですけど――地下室をどうやって改造するか、勝手にプラン図まで描いて話していた時期がありました。それから、『クーキー』の脚本を書いている時、子供の目線で書いていることもあってオンジェイともっと時間を過ごしたいと思い、2人で木の小屋をする計画をし、午前と午後の2時間ずつ、いろいろな道具を使って小屋を作るってこともしていました。その間に私は脚本を書いて。実はそんなふうにしてこの『クーキー』の脚本は完成しました。」
——オンジェイくんとの濃密な時間のなかで誕生した映画だったんですね。オンジェイくんは実際にお父さんとの会話が台詞の中に入ってたりして演じやすかったのかな?
オンジェイ「書かれてる言葉のほとんどは、お父さんが書いた脚本の通りだよ。ところどころで僕が言った言葉が反映されているかな。」
ヤン監督「劇中に出てくる「You are Strange to my eyes(僕の目には変に見える)」という台詞は、実はオンジェイが5歳の頃によく言ってた言葉です。我々大人からしたら、それが何を意味するのかよくわからなくて。でも一度、私の妻……つまり、オンジェイの母親が、食事をあまり食べていないオンジェイを見てその言葉を言うと、彼はすごく怒り出したことがありました。「そんなヒドいことを言わないで」って。なので、おそらくその言葉には“あなたはヒドい人だ”っていう意味合いを持っていたのだと思います。そんな感じでオンジェイが言った言葉をそのまま脚本に使ったところは2、3か所ありますね。」
——映画の撮影当時は7歳だったオンジェイくんも、今は14歳。いまだに放課後は監督のオフィスに来て話したりしてるんですか?
ヤン監督「今はないですね。オンジェイももうすぐ15歳になりますし、そろそろ反抗期になる頃かなって思っていますよ。ただ、彼も十分に成長してくれたので、例えば、今回のプレスツアーのように、一緒に出来ることがあるかなと思っているところです。」
オンジェイ「そうだね。そろそろ僕の目にお父さんが変に見えてくる頃かな(You are Strange to my eyes.)(笑)。」
——男同士2人での日本滞在はいかがですか?
オンジェイ「日本に来たのは初めてで、まだ2日しか経ってないけど、今のところナイスな感じだよ。」
ヤン監督「私はすごく楽しんでますね。1人で来るよりはすごく楽しいですし、チェコから日本は12時間掛かるのですが、そんなふうにオンジェイと一緒に時間を過ごすこともなかなかないですから。昨日の夜なんかは、時差ぼけもあったせいで真夜中にオンジェイと女の子の話とかをしていました。最近の女の子たちはとてもアグレッシブで、前は男の子が女の子を誘っていたけど、今は女の子のほうから誘ってくるから、男にとってはあんまり面白くないよねって。男たちは自分の手が届かないような女の子を誘うっていうほうが楽しいよね、みたいな話をしましたね。」
——大人な会話をしてるんですね(笑)。