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藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」#18 グルテンフリー

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食べものに制限をかけていると、禁欲的だとか思われがちだが、本質的には真逆である。食に貪欲だからこそ、素晴らしい食体験を追求しているのだろう。調理法や、皿の上でのコントラスト、貴重な食材、星の数、集う笑顔などといった美食のファクターのさらなる向う岸を見ているのだ。自分を活かす自分に合った食べものへの欲望、それは時には渇望とも呼べるだろう。日々を機嫌よく、大らかな気持ちで過ごしたいのだ。
その態度は、ヒーリング的に言えば、調和への意志である。自分というミクロコスモス的な存在内での調和。とりまく全体としての宇宙との調和。つまりは、ぎくしゃくして生きていたくはないのだ。幸福は滑らかなものだろう。
私とは、私が日々食べているものの瞬間ごとの結果である。
目の前の添加物たっぷりのスイーツが、数時間後の自分なのだ。ホルモン剤がたっぷり含まれた食肉や、農薬を飲みながら育った野菜が、明日の自分の一部なのだ。
健やかに育っていない食べものが、今日の不機嫌の原因で、寝つきと寝起きの悪さを演出しているとしたら、まずは出口よりも入り口を大切にすることが、理にかなっていると思う。
ちょっと熱量の高めな文章になっているかもしれないが、実際は食に対して、力むことなく、楽しくやっている。
繰り返しになるが、食べものを選ぶということを闘いにする必要はない。排除ではなくて、知性ある選択。知性とは寛大さとユーモアのことを言う。
そういった知性を使って、いろいろな食事法を試してほしい。肉が好きな人ならば、試しに牛だけを抜くとか、小麦好きの人ならば、麺類だけ抜いてみるとかでもいい。1日一度は発酵食を食べるとか、食後のデザートを抜いてみるとか、ちょっとした試しと、それがもたらす変化を耳を澄ますようにして観察してみてはどうだろう?
そういった注意向けから返ってくる体の声は、他人の声ではない。あなた自身の本当の声なのだ。そして一旦聞こえたら無視せずに、しばらく付き合ってみてはどうだろう?
あなたのパートナーは、まずはあなた自身である。パートナーと喧嘩をせずにうまくやっていくことで、食にとどまらない多くの気づきがあるだろう。
グルテンフリーというのは、私には合いそうなので、しばらく続けてみるつもりだ。ダイエット効果を期待している人には、自分の経験からお薦めできる。あと、気持ちがクリアになる感じも。
だが、案外一番気に入っているのは、グルテンフリーという語感かもしれない。それも含めて相性なのか。
(つづく)

※『藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」』は、新月の日に更新されます。
「#19」は2015年7月16日(木)アップ予定。

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