グルテンフリーを実践した後のジョコビッチは完全に一皮剥け、世界ランキングの頂点へと一気に駆け上った。著書の中で、キレキレで疲れにくく反応速度が上がった身体の変化だけでなく、脳の霧がなくなったという表現で、メンタルがすっきりと明晰でポジティブになったことを驚きと共に語っている。その変化の素晴らしさに、二度と戻りたくないと以後グルテンを含む小麦、大麦、ライ麦と決別した。
グルテンフリー以前はいわば常に二日酔い状態と言わしめるほどの変化。
私は興味深々で、ジョコビッチが提唱する二週間プログラムにさっそく取り掛かってみた。プログラムといっても単純に小麦、大麦、ライ麦を抜くだけのことで、恐れていたほどの心的苦痛もなく、パン、パスタ、など無しで過ごすことができた。
それを期待していたわけではないが、最初の一週間で体重は2キロほど落ち、以降は心身ともにすっきりした感じが持続した。体力は落ちずに、むしろ持久力が高まったようだった。
そして二週間後に、小麦粉食品を食べてみた。ジョコビッチの本では、翌日はまるで二日酔いのように体が重く、頭の中に霧がかかっているかのようだった、とあるが、私の場合はそこまで劇的ではなかったにしても、やはり体の重さとだるさを感じた。
そもそもジョコビッチはグルテン不耐症という体質だったので、一般的な人と比べてグルテンフリーの効果は劇的だったのだろう。だが、そこまでの変化は正直感じられなかったが、私にも確かな手応えはあった。
それは肉中心の食事から、野菜中心へ、さらにはベジタリアン、ビーガン、フルータリアン、断食、などという段階的な変化を経験した時にも感じた、心身が透明化していき、生きる喜びや、各感覚器官が本来の性能を取り戻したかのように世界が瑞々しく感じられた時とも類似していた。
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