新宿サザンテラスにある書店で目に止め、その日のうちに読み終えた本がある。著者はプロテニスプレイヤーのノバク・ジョコビッチ。今年の全仏では惜しくも準優勝に甘んじ、念願の生涯グランドスラムは逃したものの、誰もが認める現役最強のプレイヤーだ。
その彼の著作のテーマは、帯にもあるように「何を、どう食べたらいいのか?」である。プロアスリートにとって、身体のコンディショニングは言わば仕事のひとつであり、一流ともなれば、私たち一般人とは違う切羽詰まった経験の繰り返しによって成された持論があるはずだ。
ジョコビッチの方法は、ずばりグルテンフリーである。ハリウッドの有名女優やトップモデルたちによって日本でもその名を知られたダイエット方法でもあるが、最強プレイヤーがなぜそこに至ったのかを知りたくて読み進めた。
アメリカなどでは、スーパーマーケットでグルテンフリーのコーナーがあるのはもはや普通であるし、レストランでもメニューにしっかりと表示がある。これはもはやグルテンフリーが一過性の流行ではないことを示している。
私もその存在は知っていたが、小麦アレルギーの人を対象にしたアンチアレルギー食の一つなのであろうと思っていた。もちろん、その面もあるのだが、対象は一般の人にも広がっている。
You are what you eat.(あなたは、あなたが食べているものでできている)という有名な諺が示すように、何を食べるかについて注意することは身体の健康を考える時の大切な出発点だ。
「旨ければいいではないか?好きなものを好きなだけ食べて死ねるのは、病気になったとしてもむしろ本望」という考え方の人は依然としてあるだろう。快楽としての食というのは、輝きを失わない。だが、その美食が体だけでなく、心にも影響を及ぼしているとしたら、どうだろう?なんとなくネガティブに考えたり、怒りっぽい日々の原因さえも、じつは食べ物によると科学的に証明されているとしたら?
話が少しだけ飛躍するが、多くの人がすでに知っているように、幸福とはネガティブではない時間のことだと思う。心にゆとりがあり、腹を立てたり必要以上に急ぐこともなく、今の状況を楽しみ微笑んでいる時間が多い状態をきっと幸福というのだろう。決して派手ではない。
だが、なかなかそう上手くはいかないことも多くの人は知っている。その原因の一つが実は食べ物にあるとしたら、ダイエット目的でなくても自分がいつも食べている物を検証してみたくはならないだろうか?
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