国によって人の顔のつくりや話す言葉が違うように、国境を越えればその土地で花開く文化も色や形が変わるもの。それが最も分かりやすいのが、映画かもしれません。例えばアメリカ映画といえば、迫力満点の大スペクタクル、そしてダイナミックな世界観といった大衆向けの商業映画をイメージする人が多いでしょう。
一方で、同じ映画と言えど全く毛色が異なるのがフランスの映画です。監督の哲学が詰め込まれた、素朴でどこか味のある作品の数々はまさしく“芸術”であるとして、古くから多くの人の心を掴んで離しません。
そんなフランス映画の中でも、世界観やストーリーはもちろん、ファッション、音楽、アートなどあらゆる分野に多大な影響を与えたのが、1950年代末に同地で誕生した映画運動・ヌーヴェルヴァーグの中で誕生した作品です。「新しい波」という意味を指すこの運動は、映画の制作会社等で下積みを経験しない若者たちが、同時録音や即興演出といった手法でロケを中心に低予算で映画をつくるというムーブメントのことを指します。それらの作品たちは、パリに生きる恋人たちの感情を瑞々しく等身大に描いたことで、当時の若者たちから絶大なる支持を得ました。
そして、ヌーヴェルヴァーグは後の映画界の“巨匠”と言われる映画監督をも輩出しています。中でも、元々は映画評論家であったフランソワ・トリュフォーやファッション・アイコンとしても名高いジャン=リュック・ゴダールは、その名前を誰もが一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
そんな彼らの作品計21作品を、貴重なフィルム上映で蘇らせる上映企画が、7月4日、東京・渋谷のBunkamuraル・シネマで始まります。期間中はトリュフォーのデビュー作『大人は判ってくれない』や、ゴダールの『はなればなれに』、そしてヌーヴェルヴァーグの後継者であるカラックスが産んだ伝説の愛の傑作『ポンヌフの恋人』なども上映されます。
上映期間は7月31日まで。今もなお新鮮な魅力が溢れる恋人たちの物語、ぜひ見に行ってみてはいかがでしょう。