−−その流れで“DA.YO.NE”が大ヒットして、ダンサーだったセク山さんも紅白に出られてるんですよね。
SEX山口「そうですね。でも、衣装もなにもなく、NHKに入った時の格好のまま、ステージに出たのは僕らだけだったらしいです。それを何故かNHKの人に褒められたり(笑)」
−−逆小林幸子じゃないですか(笑)。そのダンサーだったセク山さんがDJに進まれたのは?
SEX山口「子供の頃から、ダブルデッキのラジカセを使って、架空のラジオ番組とか歌謡曲メガミックスを作るのが好きだったんですよ。それでCDJが出た時に、これがあれば同じ事が、もっと手の込んだ形で出来ると思って、まずCDJを買ったんですよ。それで、鈴木蘭々からTLCに繋いだりとか」
−−その時点で、セク山さんのスタイルの萌芽がありますね。
SEX山口「そのミックス・テープを友達に渡して、その感想が『笑ったけど踊れるね』っていう意見だったりすると、嬉しくてそれで味をしめるっていう。そんな事をやってる時に、「申し訳ないと」に出会うんですよ」
−−J-POPなどの邦楽をメインにしたDJイベントでしたね。
SEX山口「その前に『FGナイト』(註:RHYMESTERやMELLOW YELLOW、KICK THE CAN CREWなどが結成しているFUNKY GRAMMAR UNITのイベント)で、宇多丸(RHYMESTER)さんが明け方にJ-POPをかける嫌がらせの時間があったんですけど、僕はそれが大好きだったし、スゴくシンパシーを覚えてたんですよね。『ここにもこういう人がいた!』って。それで、宇多丸さんがミッツィー申し訳(現:ミッシェル・ソーリー)さんのやってた『申し訳ないと』に、J-POPのDJとして本格的に参加するっていうのを聞いて、三宿WEB以前に「申し訳」がやってた宇都宮の「PLANET」ってクラブまで遊びに行ったり」
−−それぐらい衝撃だったんですね。今だとJ-POPがクラブでかかるのは珍しくないですが、「申し訳」が脈動し始めた00年ぐらいは、J-POPにしても日本語ラップにしても、クラブでほぼかからなかったし、御法度でもありましたね。
SEX山口「だから僕らには超新鮮だったし、「申し訳」の存在はスゴく大きいですね。それに影響をもろに受けて、茅ヶ崎で自分たちでもパーティを始めるんですよね。J-POPだけじゃなくてヒップホップもレゲエもかかったり、テクノもかかったり、ロベルト吉野(註:ラップ・グループ「サイプレス上野とロベルト吉野」のDJ)と俺の友達が大五郎片手に殴り合いのケンカしていたり(笑)。そこに「申し訳」の皆さんとか、RIP SLYME、GAKU-MCさんを呼んだりして、イヴェントを形づくっていって。そこでのプレイを面白がって貰って、他のイヴェントにも出るようになったりして、エロ本編集者とDJの二足のわらじになっていきましたね」
−−では、セク山さんがDJをされる上でのモットーは?
SEX山口「『踊れるかどうか』が、やっぱりチョイスの基準になりますね。それはBPMの速い遅いは関係なくて腰にくるか、足にくるか、首が振れるかっていう。それは僕が過去ダンサーの経験があったというのが大きいと思います。ヒップホップで言えばDJ KEN-BOさんやDJ HASEBEさん、DJ WATARAIさん、grooveman Spotさんとか、ダンサー出身のDJって多いじゃないですか。そういう人って、プレイにダンスの感覚が当たり前にあると思うんですよね。僕もそういう感覚が曲を選ぶ際の基準になるし、今回のミックスでは特別意識したわけではないのですが、そういったセンサーの元で選曲してるかもですね」
−−フィジカルに反応する曲を選ぶというか。確かに、今回のミックスもダンサブルなモノが中心になっていますが、BPM的には例えばBPM130以上の、いわゆるEDM系ポップスのような分かりやすく「躍らせるための楽曲」というチョイスにはなっていませんね。それよりも、BPM100前後でメロウな作品が中心になっていて。だから、踊らせる部分がありつつ、歌詞や編曲、ヴォーカルなども含めた、楽曲として総合力の高いモノが選択の基準になっているし、「踊らせる」と同時に、「聴かせる」も含まれていますね。
SEX山口「このミックスをどう構成しようかなと考えた時に、自分の得意な所、自分が好きな所である「メロウ」を中心にしたいなと思ったんですよね。そこから繋がって「アーバン」とか「シティ」って言う部分も。そういう、自分にとってド直球な部分を今回は出しましたね。そうじゃないと自分でも納得がいかないと思ったんで」
−−セク山さんの中心軸というか。
SEX山口「そういう自分が生きてきて、影響を受けた曲がメインになってますね。だから、選ぶ上で無理はしてないですね。それから、なるべくピッチを可変させないのは考えましたね。やっぱり自分の曲ではないし、使わせて貰うからには、それを出来るだけ大事に扱いたいなって」