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『夫婦フーフー日記』佐々木蔵之介×永作博美インタビュー

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──それから17年後、今度は別の居酒屋で、2人きりで向き合って告白するシーン。親しさと照れが入り混じった何ともいえない空気感を、長回しのカメラワークで撮ったシーンも本当に素敵でした。実在の夫婦をモデルにしたキャラクターを演じるにあたって、何か意識したことはありましたか? 

永作「うーん……本当に平凡な言い方ですが、やっぱり亡くなった奥さまが空から見てくださってるのを、常に思い浮かべて。できるだけ恥ずかしくないように、誠実に演じようと。自分にできるのはそれくらいだと思っていました。いくら私がご本人の雰囲気に似せようとしても、かえって違和感が出てしまう気がするんです。観てくださる方にとっても、演じている私自身にとっても」

佐々木「うん。その感覚、僕もよく分かります」

永作「ただ今回、生前のシーンと同じくらい、実は亡くなった後のやりとりが多かったのでそういった場面では逆に、『こいつ絶対死なないな』という感じを出せたら、とは思っていました。そのくらいシナリオに描かれた奥さまが生き生きしてたんです。周囲を巻き込んじゃう性格だったり、それこそ死んだ後もダンナが心配で出てきちゃうバイタリティーだったり……そういうパワーが本当に魅力的だなっと感じました」

──そういえば病床で大好きなハンバーガーを頬張るシーン。豪快な食べっぷりも、とても印象的でした。

永作「あんぐり口を開けてね(笑)。原作やシナリオから私自身が受け取った自由で素敵な魅力──彼女の生きるエネルギーみたいなものを伝えられればいいなと。そう願いながら演じてました」

佐々木「撮影期間中(原作者の)清水さんとお話しする機会はなかったですね。一度だけ結婚式のシーンを見学に来られたそうですが、それも後になって知ったことで…」

永作「私たち役者に配慮して、遠くから見守ってサッと帰られたんですよね」

佐々木「そういえば清水さんご自身、こんなことをお書きになっておられました。『亡くなったヨメが自分との間に、ペ〜という息子と書籍を遺してくれた。ある意味、息子も本も“僕たちの子どものようなもの”。その息子が成長して、映画という友だちを連れてきてくれた』って。本当にその言葉の通り、どんな風に描いてもいいよと、すべて委ねてくださったんだと思います」

──ヨメが亡くなった後、1人で子育てに悪戦苦闘するダンナの姿もたっぷり描かれています。お芝居とはいえ“イクメン”を経験してみて、新たな感慨などはありましたか?

佐々木「いやぁ、これがね(笑)。永作さんと一緒のシーンでは、ペ〜役の赤ちゃんもご機嫌なんです。撮影の準備中に泣いちゃったときも、永作さんが抱いてあやしたり、いろいろと気を紛らわせてくださるので。スムーズに撮影ができました。ところが僕が抱こうとすると、お母さんの手を離れた瞬間に大泣きするんです。その意味では、1人だけで子育てする大変さはすごく感じました」

永作「あはは、そうだったんですね!」

佐々木「ストーリーの中でもそうだけど、ダンナが1人で何もかも背負い込もうとすると、次第に消耗していくでしょう。ああやって家族や友だちが一緒にいて、横でワーワー言ってくれるからこそ、何とか笑いながらやっていける。物語上だけでなく、撮影を通じた実体験としても、そういうことは考えました」

永作「何しろ死んだはずのおヨメさんまで『生きろ!』と励ましてくれてるわけですもんね(笑)」

佐々木「そうそう」

永作「死んでも人の面倒を見ないではいられない人(笑)。実際の奥さまがそういう性格だったからこそ、あんなにも多くの友だちが周囲に集まったんじゃないかと思います。そしてダンナさまがそれを本という形にされて、今回それが映画にもなった。そういう人望のある方を演じることができたのは、改めて幸せでした」

佐々木「うん。いろんな見方ができる作品だけど、これって結局はラブストーリーじゃないかなと思うんです。生前からダンナさんが綴っておられたブログも、おヨメさんに対するラブレターだったと思いますし。もちろん、未来の息子に対する思いも含めてね」

永作「いろんな愛が詰まったラブストーリー。撮っている最中には意識しなかったのですが、今思えば本当にそんな感じがします」

 

撮影 中野修也/photo  Shuya Nakano

文 大谷隆之/text  Takayuki Otani

編集 桑原亮子/edit  Ryoko Kuwahara

夫婦フーフー日記:メインs

『夫婦フーフー日記』

5月30日(土)より、新宿ピカデリー他にて全国ロードショー

※公開後のアップになる場合は、全国公開中

監督:前田弘二『婚前特急』、『わたしのハワイの歩きかた』

出演:佐々木蔵之介『超高速!参勤交代』、永作博美『さいはてにて~やさしい香りと待ちながら~』ほか

配給:ショウゲート

http://fu-fu-nikki.com/

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