iPadのCM曲“Never Stop”や、近年の評価を決定づけた『Solo Piano』シリーズ。さらには、コラボレーションで参加したダフト・パンクのアルバム『ランダム・アクセス・メモリーズ』が昨年のグラミー賞で最優秀アルバム賞を獲得したことも記憶に新しいかもしれない。他にもボーイズ・ノイズとのオクターヴ・マインズ名義でのリリースなど、活動の場をますます広げる天才音楽家チリー・ゴンザレスの最新ソロ・アルバムとなるのが『チェンバース』。ハンブルグのストリングス・グループ、カイザー・カルテットとの交流を深める中でインスピレーションを得た今作は、いわば“ピアノと弦楽四重奏のための音楽”。溌剌として唄心に溢れたピアノのフレーズ。奥行き豊か広がるオーケストラルな音色や旋律には、ジャズやアンビエント、イージー・リスニングなど様々なスタイルに通じたゴンザレスならではの素養も窺えて興味深い。そんなリスナブルにして洗練を深めた今作についてメール・インタビューで聞いた。
―今回の最新アルバム『チェンバース』の制作にあたって、カイザー・カルテットから得たインスピレーションとはどのようなものだったのでしょうか?
チリー・ゴンザレス「彼らはもの凄く才能があって、リズム感も抜群だったし、ポップ・ミュージックの弦楽四重奏団になりたいという意欲にも溢れてた。それが僕の哲学である“時代の申し子”となることに、ぴったり嵌ったんだ」
―さまざまなジャンルの音楽に造詣が深いあなたですが、室内楽についてはどのような視点から魅力を感じていたのでしょうか?
チリー・ゴンザレス「室内楽団は、19世紀のロック・バンドなんだ。4つか5つの楽器が一緒に音を鳴らしてるっていう、ちょうど僕がティーンエイジャーだった頃と同じだよ。オーケストラは軍隊みたいなもので、指揮者が大将だ。でも弦楽四重奏団は、友達同士のグループがお喋りしてるのと同じなんだよ」