——okadadaくんとのユニット:dancinthruthenightsでの“T.D.M. feat. okadada”はディスコ路線で、これはtofuくんのメジャーでの動きに沿った部分も感じさせて。
tofubeats「KISSの“Beth”っていう曲があって、レコーディングで帰れない事を恋人に詫びるっていう、めっちゃかわいい曲なんですよね。その後にライヴで火ぃ吹いたりしてるんですけど(笑)。その雰囲気を、dancinthruthenightsで形にしようとした曲ですね。このEPの中でも、攻めるというよりは、安定感のある曲になったし、一番キャッチーだと思いますね。ラジオでかかりやすい(笑)」
——EPはバラード“衛星都市”で終わるけども。
tofubeats「バラードなんだけど、『いびつな』サウンドで作りたいなって」
——メロやトーンとしてはポップなんだけど、ドラムやブレイクビーツがスゴくラグドな感じになってて。
tofubeats「ブレイクビーツもサンプリングではなく、自分で作ってるんですよね。ドラム抜いたら普通のポップスになるんだけど、それとはちょっと違うモノを作りたくて。これは“衣替え feat. Bonnie Pink”と同じように、のちのちは女性が歌うってことも考えてるんですよね。だから、アルバムでは信じられないぐらい、綺麗なものにしよかなって」
——全体として、DJミックス的な意味では無くて、「感覚」や「空気感」みたいな部分が、曲ごとに繋がってる感じを受けて。
tofubeats「今回は制作の時に肩肘張ってないから、雰囲気が揃ったと思いますね。ホームランや長打を狙うんじゃなくて、しっかりと内野安打、二塁打位を目指してたんで、自分でもしっくり来てますね。今回の制作はほぼ自分のスタジオで作ったし、サウンド部分の制作に関わったのは、okadadaさんとマスタリングエンジニアさんだけっていう、それぐらいミニマムな形なんですよね。だから自分の思い通りに形作れる部分も強くて。今回で一番お金をかけたのは、ジャケット写真のモデルさんですからね(笑)」
——tofuくんが外国人家族の中にいるっていう、ジャケット写真がなかなかゾワッとする感じになったのは?
tofubeats「アメリカのホーム・コメディっぽい感じっていうのがテーマなんで、コンセプト自体は異常じゃないんですよ。最終的な写真のセレクトは異常だと思いますけど(笑)。でも、デザインを担当したスケブリは、このCDを指すときに『家族のCD』って言えるように、っていうのは考えたって言ってましたね」
——背表紙の部分のtofuくんの笑顔も……。
tofubeats「はっきり言えばいいじゃないですか、背表紙が完全にサイコパスな感じで、相当気持ち悪いのは認めますよ(笑)。写真を撮ってる時は、違和感がなかったんだけど、完成品になった時に『怖っ!』みたいな(笑)。アートワークは、狂気をぐっとまとめた感じになってますね。これじゃ買い辛いかなとも思うんですけど、でもぱっと見、渋谷系っぽくない?って思うんですよね」
——EL-MALOの「SUPER HEART GNOME」の笑顔なのにゾワッとするジャケ写もちょっと思い出すかも。
tofubeats「そういう渋谷系のダーク・サイドのエッセンスが入ってるんですよね(笑)。あと、スケブリが石野卓球さんの高校の後輩なんですよ。そこで培われたであろう、ヴァイブスを受け継いでるかも知れないな、と。“STAKEHOLDER”のMVも、嫌なカットの集積じゃないですか」
——ビンタされたり、パソコン壊されたり、ポテトチップを食べた指でメガネのレンズを触られたり。そういう短く細かい嫌がらせがどんどん集積していくという。
tofubeats「僕はこの曲を聴いてると、自動車の安全性確認実験の映像しか浮かんでこなかったんですよね」
——車がクラッシュした瞬間に、乗ってるダミー人形がどんな動きをするのか、スローモーションで録ってるやつ?
tofubeats「そうそう(笑)。この曲を作りながらYouTubeでその映像を見てたら、スゴくしっくりハマったんですよ」
——……なんか病んでない?(笑)
tofubeats「いやいや。縁起は悪いけど、純粋に映像として格好いいなと思って」
——そのダミー人形役が今回は自分だったと。
tofubeats「石野卓球さんのMV(“Polynasia”)でもマンションがガス爆発で終わるっていうのがあったんで、それぐらいやってもいいかなと」
——家族が爆発で吹っ飛ぶ瞬間の顔を超スローモーションにしてるやつ。あれも異常だったけど、その精神を引き継いでるのか……。自分が写ってる鏡を壊されるとか、地味にメンタルにくるのもあれば、ビール瓶で頭かち割られるような、派手なシークエンスもあって。でも、それはtofubeatsのパブリック・イメージとしては大丈夫なのかなとも思ったんだけど。
tofubeats「女の子に瓶で殴られるのは僕の強い希望ですね(笑)。でも、自分の中の危ない部分を認識してますからね。だから生理的にゾワゾワする感じを出させたら世界レベルっていう、スケブリ師匠の世界観が、自分の世界観とフィットしたのかも知れない」
——そうやって、自分の中の狂気を客観視出来てると。
tofubeats「そう僕には接してくれればいいと思いますね」
——そんなイメージ嫌だよ!
tofubeats「あいつは何するかわからないって(笑)。でも、そうやってパブリック・イメージを壊したいって気持ちもあるんですよね。そんなに清廉潔白な人間やないですよって」
——最終的なオチとしては、可愛い子とすれ違った瞬間に浮かんだ妄想だったという、より屈折した内容で。まだ若いのに心配ですよ、性癖が(笑)。ともあれ、このEPを完成させてからの展開は?
tofubeats「“STAKEHOLDER”をみんな受け入れてくれたんで、そこはちょっと安心しましたね。これが滑ったら、自分はJ-POPの部分を走らせるしか無いのかなって思ってたんで、この曲が受容された事で、別の部分も走らせても大丈夫なんだなって」
——藤井さんや森高さんとの作品はJ-POPのクリエイターとしてのプレゼンだとしたら、今作はもっとサウンドとして別の角度のプレゼンを形にしたし、それが受け入れられれば、いろんな角度から作品作りがチャレンジ出来ると。
tofubeats「EPがリリースされて、全体としてどういう評価をされるのかが、一番楽しみですね。今年はアイドルが一段落して、J-POPも落ち着くと思うんで、『これだったらウケる』っていうお約束が、無くなる年になるのかなと思うんですよね。だから『その先』が今年始まると思うし、好きなことをやれるっぽいな。そこでどう評価されるかに興味があるし、自分としても面白いものを作っていきたいなって思いますね」
文 高木”JET”晋一郎/text Shinichiro “JET” Takagi
編集 桑原亮子/edit Ryoko Kuwahara
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tofubeats『STAKEHOLDER』
4月1日発売
http://www.amazon.co.jp/【Amazon-co-jp限定】STAKEHOLDER-SPECIAL-TRACK-DOWNLOAD-CARD付き/dp/B00UBCSL4O
https://itunes.apple.com/jp/album/stakeholder/id973085359
tofubeats
1990年、平成2年生まれ、神戸市在住のトラックメイカー/DJ。インターネットで100曲以上の楽曲を公開し続けるかたわら、 YUKI、FPM、佐々木希、ももいろクローバー、Flo Rida など様々なアーティストのリミックスも手かがけ高い評価を得ている。Web CMなどのクライアントワークも多数。盟友オノマトペ大臣と2011年末にリリースした“水星EP”はアナログ盤として異例のヒットに。強い要望を受けてリリースされたデジタルバージョンはiTunes 総合チャート1位を獲得。iTunes Best of 2012 に選出され、翌2013年のニューアーティストにも選ばれる。2013年春発売の『lost decade』も iTunesで総合チャート1位を獲得。世界のインターネットに散らばる最新のクラブミュージックからJ-POPまで、凝り固まらない平成生まれのバランス感覚を持った新進気鋭の若手トラックメイカー。2013年11月には森高千里をフィーチャリングした“Don’t Stop The Music”でメジャーデビュー。藤井隆を迎えた“ディスコの神様”でも話題に。2014年10月2日にメジャー1st『First Album』、2015年4月1日に『STAKEHOLDER』をリリース。
http://www.tofubeats.com/stakeholder/