——今年の1月にsalyu × salyuでオーストラリアツアーを回ったんですよね。
Salyu「うん。そのときに感じたことは、長岡さんがおっしゃったように、日本で培った文化をそのまま運べばいいんだということだったんですよ。もちろん、ポップスというものは西洋で生まれたものだから、その要素を大切にしながら学び続けていかなければいけない部分もあるんだけど、それでも日本人だからこそできる音楽表現というものが必ずあるんだなって。ポップスにおける学ぶべきコンテクストってあるんだけど、その最先端を作る権利は誰にでもあって」
長岡「うん、そう思う」
Salyu「salyu × salyuの音楽性って、歌だけではなくすべての楽器演奏者がものすごく気を遣わなければいけないんですね。ビートの打点が重なっては成立しない音楽だし。それがズレたらホントにどうしようもないものになってしまう。その緊張感や神経質な感じを日本人らしいまじめさをもって追求できることがあるなって思った」
——音の侘び寂びであり。
Salyu「そうそう」
長岡「でも、Salyuさんはあのとき留学してなくても大成していたと思いますよ」
Salyu「いやいや(笑)。ただ、あのとき留学していたらSalyuとしてデビューしてなかったと思う。Salyuとしてデビューしたから海外レコーディングなども経験できたと思うし」
——長岡さんも4月に台湾でソロライブをやるんですよ。
長岡「そう、弾き語りで」
Salyu「私も6月に台湾でライブするんですよ! 同じ時期に行けたらおもしろかったのに。残念」
——ペトロールズでは海外のライブ経験ってないですよね?
長岡「うん、ないです」
——じゃあ海外でライブするのは——。
長岡「その留学の時にソーホーのパブでギターを弾かせてもらったの以来かな? あ、illionで行ってるか」
——そうだ。2年前にRADWIMPSのフロントマン、野田洋次郎くんのソロプロジェクトのサポートでロンドンとハンブルクに行ってましたね。あのときはどうでしたか?
長岡「PAもローディーも、スタッフがほぼ全員現地の人で。みんなナチュラルに音楽に接してるのがすごくよかったという思い出がありますね。そのライブのときのドラムはmouse on the keysの川崎(昭)さんという人だったんだけど、彼らは海外でたくさんライブをしていて、そのときもシンガポールからロンドンに来てた。彼と話してると海外でライブをやるということに凄く興味が湧く」
——長岡さんの独創的なギターフレーズは、ルーツにカントリーやブルーグラスがあって、そこからさまざまなジャンルと交わりながら育まれたと思うんだけど。
長岡「うん、そうだね」
——今も不定期で赤坂のカントリーミュージックのお店で食事をするお客さんの前で箱バンのメンバーとしてカントリーを演奏してるのにも、常に自分のルーツを確認できるという意味でも大きいですよね。
長岡「そうだと思う」
Salyu「私、それ観に行きたい!」
長岡「本場のカントリーが聴ける感じではないんだけど、カントリーを咀嚼した日本みたいな感じで。食事してるお客さんの前で演奏して、一緒に歌って帰るみたいな。そういう場所です。今でも月1回以上はシフトで入ってます」
Salyu「ぜひ行きたいです」
長岡「おもしろいのは自分のバンドでもサポートでもツアー中にあそこにポンと出ると全然弾けないんですよ。感覚が違うから。ツアーは決められたフレーズをきれいに弾かなきゃいけないから。まあ、それもあんまりできないんだけど(笑)。でも、赤坂でカントリーをやるときはその場でパッと弾くのね。感覚が全然違うんだよね。1日3ステージあるんだけど、3ステージ目の後半くらいにだんだん感覚が戻ってくる。そのころにはだいたい自分も酔っぱらってるんだけど(笑)」
——それがまたいいんだよね。酔っぱらいながら自分本来のチューニングに戻していくというか。
長岡「そういう音楽もあるという感じで。常連さんには『その服はなんだ? パジャマかよ』とか言われながら(笑)」
Salyu「あはははは。それくらいホームなんですね」