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ハナエ『上京証拠』インタビュー

──「優雅な生活が最高の復讐である」という有名な書物のタイトルにならえば、「かわいさこそが最高の復讐である」という感じでしょうか。

ハナエ「そうですね(笑)。そういえば先日、スポーツの見出しで“どSかわいい”という素敵なキャッチコピーを付けていただいたから、とりあえずそっちにしとこうかなぁ」

──じゃあ、「どSかわいさこそが、最高の復讐である」で。

ハナエ「本当を言うと、私的には“毒かわいい”の方が語感的にしっくりくるんですけれど(笑)。復讐というとちょっと強く聞こえてしまうけれど、自分が好きなことに対して愛を持って生き、それを表現すること。実際、それを聴いて『励まされた』と話してくれる女の子たちも増えてきているので──そういうラブの連鎖を生みだしていくことが、私にとっては過去への落とし前でもあるのかなって」

──そう考えるとハナエさんの創作活動において、ファッションやヘアメイクへのこだわりは、音楽と同じくらいの意味を持っていると言えそうですね。

ハナエ「はい。もちろん作業的には全然違うんですが、私の中では繋がってますね。二十歳を超えた頃から、昔はやりたくてもできなかったことにも、思いきってチャレンジできるようになりました。たとえば今回のカバーフォトで着てるセクシーめなドレスとかも、以前なら選ばなかったと思う。もともと私、子供の頃はロリータと同じくらい、昔のピンナップ・ガールっぽいテイストも好きだったんですね。でもそういうセクシーなドレスって、十代の女の子には着こなしが難しいでしょう。その意味では少しずつ、好きなものを着られるようになってきて……今は早く30代になりたい(笑)。いろいろと楽しいことが待っていそうですから」

──音楽的な面では今回、オープニングの「EXODUS」とエンディングの「S-T-A-R-S」にも初挑戦しています。

ハナエ「よく似合わないって言われますが、ヒップホップは昔から好きだったんですよ。それも向こうのギャングスタ・ラップよりもむしろ、Aメロ・Bメロがあってサビに行くというJ-POP的展開のラップが好きで……SOUL’d OUTさんの大ファンなんです。あと一昨年くらいかなぁ、Nujabes(ヌジャベス:トラックメーカーの瀬葉淳、1974〜2010年)を知って。それまでインストはあまり聴いてなかったんですけど、すごくいいなと思いました。レコーディングの合間、そんなお話をポロッと真部さんにしたら、彼もまた大のヒップホップ好きだと判明して。2人で盛り上がって、じゃあ今回のアルバムに入れようとと」

──挑戦してみて、いかがでした? 

ハナエ「そうですね、やっぱり歌よりは普段の喋り声に近いので。特に『S-T-A-R-S』みたいに自分の感情を吐き出す楽曲だと、より生々しくなった部分はあったかなと。もともと私、歌ってるときと喋ってるときでかなり声質が違っていて」

──あ、たしかに。

ハナエ「声帯の形状もあって、歌だとどうしても細くてウィスパーになっちゃうんですね。シンガーとして最初はそれがコンプレックスだったんですけど、だんだんその声質をプラスに生かす方に発想が変わってきた。でもラップだと、強いフレーズをそのまま言えるというか……『ふっざけんじゃねーよこの野郎』みたいなキーになるラインも、エモーションたっぷりに言えたかなと。福岡時代の暗い気持ちとかを思い出して、最後らへんは涙声になっちゃってますけど(笑)」

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