新世代のガーリーカルチャーを牽引する“台風の目”として、注目を集めているシンガーのハナエ。3月4日にリリースされたセカンドアルバム『上京証拠』では、従来のキュートかつ上質なエレクトロポップ路線に独特の毒気と艶っぽさをミックスさせ、新たな境地を見せている。前作『十戒クイズ』から続き、現代のポップマエストロとして名高い真部修一(元相対性理論)がサウンドプロデュースを担当。人気アニメ「神様はじめました◎」のOPテーマ「神様の神様」とEDテーマ「おとといおいで」などウィスパーヴォイスが映えるキャッチーな曲に加え、アルバムの冒頭とラストでは新機軸のラップにも挑戦した。セルジュ・ゲンズブールへの憧れを語り、フレンチ・ロリータとヒップホップを同時に愛する21歳。本インタビューでは真部との関係性にフォーカスを絞り、歌はもちろん、ファッションからアートディレクションまで自分自身のトータルプロデュースに力を発揮するアーティストとしてのあり方に迫った。
──新しいアルバム『上京証拠』、檻をあしらったカバーフォトが印象的でした。ハナエさんはもともとライブのヘアメイクを自分で行ったり、音楽とビジュアルをリンクさせてアーティスト像を構築していく作業に自覚的ですね。このジャケットにもやっぱり自分のアイデアが色濃く反映されてます?
ハナエ「そうですね。まず最初に私からコンセプトを提案し、それをもとにアートディレクターの方やスタイリストさんとディテールを詰めていく流れでした。今回は〈かわいさ〉と〈色気〉と〈毒〉が見た瞬間にバーンと伝わるものにしたかったんです。それでいろいろとアイデアを出し合って。最終的に檻のイメージに落ち着きました。実はアルバムタイトルや楽曲のレコーディングよりも先に、このビジュアルは完成していて」
──へぇ、アルバム全体のトーンとすごくフィットしている感じがしてたので、ちょっと意外ですね。まず楽曲があって、その内容を伝えるアートワークを考案する順番じゃなかった。
ハナエ「はい。楽曲については私、レコーディングに入るまでほぼ何も聞かされていないので。極端な話、スタジオに行って初めて、曲と歌詞を手渡されて。『さぁ、本番です!』みたいな(笑)」
──それも凄いですね。2013年にリリースされたファーストアルバム『十戒クイズ』に続いて、今回も真部修一さんが10曲すべての作詞・作曲を手がけています。セカンドアルバムを作るにあたり、2人の間で「次はこういうテーマで」みたいな打ち合わせもなかったとか?
ハナエ「制作期間に入る前にちょこっと世間話みたいなのはあったけど、基本的にはなかったなぁ。レコーディングの合間も、好きなマンガのことだったり(笑)。くだらない会話ばかりしてた気がします。ただ『十戒クイズ』では、真部さんが作り込んできた世界観が1曲ごときっちりできあがっていて。その世界に私が飛び込んで変身していく感じだったんです。今回のセカンドでは、その流れも汲みつつ『ハナエちゃん自身のパーソナルな部分もスパイスとして採り入れていきたい』と、真部さんが言ってくださって」