——Salyuさんの歌のどういうところに惹かれてますか?
津野「歌が耳にスッと入ってきて強く心を動かされるから、最初はSalyuさんが曲を作ってると思ってたんですよ。でも、そうじゃないって知ったときにますます好きになって。こんなに歌うことに集中してる人がいるのかと思って」
——六本木のイベントの前に米咲ちゃんはSalyuさんのワンマンライブを観に行って、感動のあまり号泣して終演後に挨拶するはずができなかったというエピソードもあるんですよね。
津野「そう。終演後の挨拶って関係者の方がいっぱいいるじゃないですか。そのなかでひとりワンワン泣いてたら恥ずかしいなというのもあって。お顔を拝見したらこらえられなくなると思ったので失礼したんです。でも、それくらいすばらしいライブでした」
Salyu「ありがとうございます。前回のレイジくんもそうだけど、こうやってフレッシュに輝いているアーティストのみなさんが私のファンだと公言してくれることがとってもうれしいです。信じがたく、ありがたいですね」
津野「レイジくんとメールでSalyuさんの話をしたりします(笑)。ここまでプロフェッショナルに歌と向き合ってる方ってなかなかいないと思うので、迷いなく大好きです」
——米咲ちゃんが特定のシンガーにここまで夢中になってるのは珍しいのかなとも思うんですけど。
津野「そうなんですよ。歌い手さんにワーッとのめり込むことってあんまりなくて。赤い公園は曲と歌詞を私が書いてるんですけど、うちのボーカル(佐藤千明)に対して歌に込めてることを完全に理解してくれとは思わないんですよ。『あなたにパスするから自分のものにしてくれ』という気持ちで。Salyuさんの曲を聴いていて思うのは、楽曲をもらったときの解釈の仕方がきっとすごく自然なんだろうなということ。その純粋な感じがここまで歌に出ているという人はなかなかいないと思うんですよね。だから聴いていてすごく幸せな気持ちになる」
Salyu「津野さんのようなクリエイターの方にそう言ってもらえるのがすごくうれしいです。ホントに私ができるのは歌うことだけなので。その動機もとにかく歌が大好きということだけなのね。私は自分で曲を作らないから、必ずどんな制作現場にもパートナーとしてサウンドクリエイターだったり、作曲家だったりがいる環境でずっとやってきているので。津野さんのようにその立場にある方からそう言ったいただけるのは歌い手冥利に尽きますよね」
津野「たとえば今もアイドルはそのシステムが貫かれてるけど、昔はもっと作詞家さんと作曲家さんと編曲家さんがそれぞれいて、歌うことだけで魅了できる人が歌手っていう認識があったと思うんですね」
——それぞれのプロフェッショナルが分業していて。
津野「そう。でも、時代が変わってどんどん歌手自身が上手に歌詞を書けるようになって」
——分業制によって構築される歌謡からシンガーソングライターの時代になっていった。
津野「そうなんですよね。そんななかで赤い公園のスタイルもバンドシーンのなかでは珍しいもので。私のようにボーカルではないメンバーが曲も書いて歌詞も書いてという。Salyuさんの歌を聴いてると『それでいいんだよ』って励まされてるような気持ちになるんです。だから、バンドでもボーカルが素直に歌ってくれるのがいちばん好きで」