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映画『百円の恋』安藤サクラ × 新井浩文 対談

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──安藤さんは一子を演じるにあたって、何を一番大切にしていました?

安藤「もちろん身体のことも大きかったですけど、私も一子さんという人は、今まで出てきた映画の中でも一番と言っていいくらい、自分と重なるところがなかった役なんですよね。それでいてなんだろう、すごくワザトラシクなりがちでもあるというか。30歳をすぎて引きこもりで、見かけもわかりやすくブスで、家を飛び出てコンビニでバイト始めて……そういう役、いかにも私、演ってそうじゃないですか(笑)」

新井「ははは」

安藤「でも、それは絶対に違うなって思った。少しでも『いわゆる』って感じになっちゃったら、一子さんじゃないなって。ただ暗い女っていうのとも違うし、単に自堕落なだけの子でもないし。すごく微妙なところにいかなきゃいけないんだって。それは撮影中ずーっと思ってました」

──それが僕が感じた「純情さ」なのかもしれませんね。 

安藤「なんだろう……撮り終わったときに監督と話したのは、『これ、結局ボクシングの映画じゃないよね』って。一子さんと祐二にしても、その周りにいる家族やバイトの同僚にしても、みんなヘンな人たちばかりで。でも、すごく愛おしいというか」

新井「うん。人生のタフな局面を生きてる人たちを描いたドラマとして、めちゃめちゃ面白いと思う。そこは見て損しないと思うんですけどね」

──最後に、クリープハイプが歌う主題歌「百八円の恋」が本当にすばらしかったです。ラストシーンで尾崎(世界観)さんの歌詞が聞こえてきたとき、ウワーッと思った。あんなに歌詞がストレートに突き刺さるエンディングテーマは、久々でした。

新井「うん。めちゃくちゃマッチしてますよね」

安藤「あそこはほんとゾクゾクッとしました!」

新井「全部が全部そうとは言わないけれど、最近の日本映画を観てると、『わ、なんでこの歌?』っていうエンディングテーマも多いじゃないですか。まぁ政治的なこともあるのかもしれないけれど……。でも今回の主題歌は、尾崎さんがものすごく思いを込めて書いてくれた曲で。映画という“作品”と音楽という“作品”が、いい意味でちゃんとぶつかってる。そういう映画に出会えると素直に嬉しいですよ、やっぱり」

安藤「しかも尾崎さんがこの曲を書いてくださったのって、まだクランクインする前でしょう。でも歌詞が、現場でうまれたものとピタッと合っていてびっくりした!ホントにちょっとしたニュアンスまで、まるで撮影をずっと観てたみたいで……。そういうことって、ほんとにあるんだなって」

 

 

撮影 中野修也/photo  Shuya Nakano

文 大谷隆之/text  Takayuki Otani

T0019514

『百円の恋』

安藤サクラ 新井浩文

稲川実代子 早織 宇野祥平 坂田 聡 沖田裕樹

吉村界人 松浦慎一郎 ・ 伊藤洋三郎 重松 収/根岸季衣

監督:武正晴

12月20日(土)よりテアトル新宿ほか全国順次ロードショー!

(C)2014東映ビデオ/R15+

 

32歳の一子(安藤サクラ)は実家にひきこもり、自堕落な日々を送っていた。ある日、離婚して子連れで実家に帰ってきた妹の二三子と喧嘩になってしまい、ヤケクソで家を出て一人暮らしを始める。夜な夜な買い食いしていた百円ショップで深夜労働にありつくが、そこは底辺の人間たちの巣窟だった。そんな冴えない日々の中、一子は帰り道に通るボクシングジムで寡黙に練習するボクサー狩野(新井浩文)と出会い、遅咲きの恋が始まる。しかし、ささやかな幸せの日々は長くは続かなかった。どうしてもうまくいかない日々の中で、衝動的に自らボクシングを始める一子。人生のリターンマッチのゴングが鳴り響こうとしていた――。

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