——しかしまぁ1曲目から「この暴風の中で何が見えてくるんだろう?」みたいな曲(”救世なき巣”)から始まるわけですが。
小林「この曲のテーマは実は、海外で起こっている戦争や紛争がきっかけで。自分の子供が生まれるってなった時に、子供たちの未来とか、子供たちの現状みたいなものをちょっとモチーフに曲を作りたいと思ったんで」
——ああ、なるほど。
小林「まさに暴風雨みたいな人を覆い尽くしてしまいそうな轟音の中で、聴こえそうで聴こえないような声があるじゃないですか。で、そういうものをすごく表現したくて。声が届かないとか、言葉が聴いてる人に届きそうで届かない、でも誰かが何かを言ってるだけはわかるって、すごくその戦争の中にいる人…過去も未来もそうなんですけど、戦争の中にいる、一方的に当事者にならざるを得なかった受け手の人たちっているじゃないですか。その人の人生みたいなのを表現できたらいいなと」
——そして2曲目はこれまで具体的に表現してなかったかなと思うんですけど、Blankey Jet Cityの影響を感じて。
小林「実はベンジーの影響がいちばん出たのは4曲目で。“Blood Music.1985”はRomeo’s bloodの”blood”からきてるんです」
——ああ、確かにリフの感じはそうかも。
小林「そうそう(笑)。なんかベンジーとやってて、曲作りでベンジー節みたいなリフをロメオズのリハスタで僕が弾いてたんですよ、それをベンジーが「それいいじゃん」とか言って、一瞬セッションぽくなってたんですけど、次のスタジオの時にはもう忘れてて、流れちゃったから自分で曲作ろうと思って。それで「ブラッドミュージック」っていう小説もあるのも知ったのでそこで結びつけて」
ーーそして楽曲の“Rhapsody in beauty”はフジロックのステージで1曲目にやってた曲ですか?
小林「そうです。あの時はまだちょっとラフでしたけど」
——『今日も生きたね』の時のインタビューで、もっと広いフィールドに出て行くスタンスについて話していて、その布石みたいな曲なのかな?とあのライブを見て思ったんですけど。
小林「ホントにその通りで、フジロックでやったら、野外で昼間で人がたくさんいてっていうときにこんなふうにできたらきれいだなとか、そういうモニュメントみたいな曲を1曲目にやって人前に出て行きたいなっていうのがあって作ったんですけど。でもこれも実は2011年以前に作ってた曲で。ただ形とか歌詞は全然違うんですけど。これを改めて作ろうと思ったのが、過去どうのこうのってお題があったからで」
——“こういうことさ 自由に生きるのは”ってヴァースに繋がる構成が明るいだけじゃない内容の曲ですね。
小林「僕が今回“Rhapsody in beauty”や“Romancé”、“僕らはなんだったんだろう”とかで共通して描いてるのは、ただ人が死ぬっていうのをモチーフに…1人の人生がただ終わっていくとか、1人の人生がただこう、閉じていくというか、そういうものが自分自身とかバンドに重ねて表現できたらいいなと思って。“Rhapsody in beauty”自体の歌詞は、1番までは自由って素晴らしいなってことで、2番が自由を謳歌するっていうのはこんなふうに自分に何かが降りかかっても引き受けなくちゃいけないことなんだというか。だから昔の自分が思ってた自由と今の自分が思ってる自由が共存してて。今作を作る前の自分だったら、『自由って素晴らしいっていうけど自由にも代償があって、それって不健康だから僕はあんまり選びたくないな』とかいうところで、もしかしたら終わってたかもしれないけど、死ぬかもしれないけどこの一瞬すごく美しいじゃないのっていうか、やっぱり美しいものは美しいんだから作品にしたいよっていう、今の自分がいる。そういうところですかね」
——“ラプソディ”の意味をこのアルバムでちゃんと知りました。
小林「僕も全然知らなくて。熱狂的な詩とか物事を伝承していく詩の形態とかいうのを後から知って。で、“ラプソディ・イン・ブルー”っていう、まぁ往年のスタンダードナンバーがありますよね。”イン・ブルー”っていうのはブルーノートによるっていう”イン”なんですよね文法的に。だから”イン・ビューティ”にすると”美しさによる”って言い換えられるなと思って。”美しさによる狂詩曲”、みたいな雰囲気で。最初なんてキザなんだろうと思ったんですけど、それが途中から堪らなくなってきて(笑)」
——そして今回最も新しい音像の“Romancé”ですが。
小林「(裸の)ラリーズの“黒い悲しみのロマンセ”から”ロマンセ”っていう言葉をもらって。それこそレコーディングエンジニアの岩田さん(岩田純也/トリプルタイムスタジオのオーナー兼エンジニア。ASIAN KUNG-FU GENERATION、Syrup16g、ART-SCHOOL、indigo la Endなどを手がける)とは毎日実験をして。どうやったらもっと80sのプールバーとかああいうネオンの感じが出せるんだろうか?とか(笑)。AORをコクトーツインズが演奏してる感じとかっていうのを僕がずっと言ってて。で、お互いの叡智が結集して、このなんとも言えない(笑)音像になったっていうか」
——私はずばり、坂本慎太郎であり、最近のOGRE YOU ASSHOLEにも通じ聴こえ方でした。
小林「あ、はい。でも坂本さんの新譜を聴いて、パーカッションの使い方とかいいなと思って。で、自分でパーカッションを組んだりして、曲のあのアイデアに使っていったりしたんで。元々“Romancé”の仮タイトルが“坂本”だったんです、だからまさにおっしゃる通りで(笑)」
——なるほど(笑)。足が15センチほど浮きます(笑)。
小林「(笑)。結局ノイジーなもの…とかロックっぽいものをわーって作っていって、プラス物悲しい曲が出揃った時に自分の中で少しモヤモヤがあって。これだけだとまだ作品にしたくないなって。それはなんだろ?ってなったときに、自分の80s的なものへの渇きみたいなもので、で、唐突に80sサウンドみたいなものが挿入される構図になったんです。でも結局、自分のルーツは80sだったりするんで、そういうとこに帰ってくるのかなと思いましたけどね。でもYoutubeのコメントとか見てると外人がすごく反応してくれてたりとか、『10年代のキュアーになるのか?』とか書いてる人がいたりとか」
(後編へ続く)
撮影 山谷佑介/photo Yusuke Yamatani
文 石角友香/text Yuka Ishizumi
編集 桑原亮子/edit Ryoko Kuwahara
THE NOVEMBERS
『Rhapsody in beauty』
発売中
http://www.amazon.co.jp/Rhapsody-beauty-THE-NOVEMBERS/dp/B00MMSUZPS/ref=ntt_mus_ep_dpi_1
https://itunes.apple.com/jp/album/rhapsody-in-beauty/id923995837
THE NOVEMBERS
2005年に結成した日本のオルタナティブロックバンド。2007年にUK PROJECTから1st EP”THE NOVEMBERS”をリリース。2012年からはiTunes storeで世界62か国への楽曲配信を開始。海外バンドの来日公演のサポートも増えTELEVISION,NO AGE,BORIS, BO NINGEN,Wild Nothing,Thee Oh Sees,ULTERIOR等とも共演。そして、台湾の「MEGAPORT FESTIVAL」にも出演し、国内だけでなく海外からの注目も高まる。2013年10月、自主レーベル「MERZ」を立ち上げ更なる躍進中。2014年7月にはFUJI ROCK FESTIVALに出演し、10月から開催されるTHE NOVEMBERS 5th album and Tour – Romancé –のファイナルは新木場スタジオコーストにてワンマンライブを行う。2014年10月15日5th アルバム『Rhapsody in beauty』をリリース。詳しくは下記HPにて。