──どんな空間だったんですか?
シュガー吉永「天井が高く吹き抜けになっていて、ニュー・アルバムのアートワークが壁に直接描かれていていて。そこでワークショップをやったりとか色んなイヴェントが行われていたんですが、私たちはライヴをやってほしいとピーターさんから頼まれた。何でもボランティアの人たちとペイントしながらバッファロー・ドーターを聴いていたんですって。それで生の音がこの空間で流れたらいいのにということで依頼があったんです。どういうテーマで、どういうライヴをやればいいの? ってピーターさんに聞いたら、彼はディスコがテーマの空間だと話してくれたんですけれど、ディスコと言っても色々あるから、どういうディスコをイメージしているの? と聞いたんですね。そうしたら彼がイメージしていたのは地域で行われているようなブロック・パーティで、子供達がキャンディー食べたり、バルーンが上がっていたりとか、彼が小さい頃に経験した、音楽を聴きながらみんなが楽しんでいる感じを再現したいと教えてくれて。なるほど、ということで私たちなりの解釈で演奏したわけです」
大野由美子「日本だと町内会のお祭りみたいな感じなんでしょうけれど(笑)、アメリカの街角なんかで体験したことがあるから、そういう光景を思い出しながら演奏しましたね。来ている人たちと一緒に食べたり飲んだりして楽しめればいいかなって」
ムーグ山本「ぼくは実際にブロック・パーティーを体験したことがないので、あまりよくわからなかったんですけど、金沢21世紀美術館で演奏したときの雰囲気が近いんだろうなって思いましたね。実際に地元の方たちも観に来ていて、クラブにいるようなお客さんではなかったので、ピーターさんが子どもの頃に体験したブロック・パーティーもそういうことなんだろうなと。子どもが間違えて入っちゃったディスコみたいな。そういうイメージだったかな。アートワークもそういう風に見えたので」
──そこで用意した楽曲をアルバムに入れるとなった時に変化していったとのことですが、どのような変化があったのでしょうか?
シュガー吉永「すぐに録音はしたんですけれど、アルバムに入れるにはちょっとピンとこなかったんですよね。そのあとに仕上げるのに時間がかかって。」
──では、昨年発表の20周年記念ベスト『ReDiscoVer. Best, Re-recordings and Remixes of Buffalo Daughter』から何か再発見があって新作にもたらされたことなどはありますか?
シュガー吉永「権利の関係で過去の音源が使えないとわかったので再録音するはめになって、なら意地でも同じ音に録り直してやると怒ったんですよ。そのために過去の作品をエンジニアリングを含めて思い出しながら再現しようとしたんですけれど、さすがにまったく同じだと買ってもらう方たちにも悪いのでゲストに参加してもらったりしました。プロセスはおもしろかったですけどね、でも今でも腹が立つ(笑)」