——また、向井さんに関しては、今まで見たことない感じだったというか。これまでのクールでかっこいいという印象が、ちょっとずぼらで情深くてっていう、本当の向井さんはこっちなんじゃないか?という気もしました。
西田「それも嬉しいですね。そこを見せたくてこの作品をやっているよな部分もあったので。向井くんのそういうチャーミングなところを友人として知っているからこそ、パブリックイメージじゃない面を引き出したかったんです。なので、それが伝わって良かったです」
——キャスティングの意外性のほかにも、今作に出てくる登場人物にはそれぞれに共感できるところがあって、その人の言動にいちいち「わかる!」と思いながら観ていました。そういう意味では西田監督は女性の気持ちと男性の気持ち両方を理解されてるのかなと思ったんですけど、ご自身ではどう思いますか?
西田「うーん、どうなんでしょうねぇ。僕はいつも、作品を書く時に女の人だからとか男の人だからとかっていうのを意識せずに書くようにしてるかもしれません。ヘンに考えすぎると嘘くさくなっていくんですよ。例えば女の人だったら、わかりやすく『◯◯だわ』って言葉遣いになったり。けど、そんなこと言わないよなって(笑)。だから、女の人のセリフも男言葉で書いたり、あまり性別によっての差を自分で作らないようにしてるんです。あくまでも一人の人間として、自分だったらこうするかなっていう考え方で。やっぱり自分が理解できないと書けないですからね」
——向井さんがおっしゃっていたのですが、西田監督が書く作品には一人も悪人が出てこないんですよね。今作で言えば及川さん演じる浅野が、クスッと笑えるような嫌味のないキャラクターになっていて。そのへんは監督自身も気を付けているのでしょうか?
西田「書いていくと、どうしてもそれぞれのキャラクターに思い入れが出てくるんですよ。なので、便利使いはしたくないなって。どの作品を書くにしても、主人公に葛藤を与えるため、苦しみを与えるためだけの悪役っていうのは書きたくないんです。その人にもその人の人生があるだろうから、何か理由があってこうなっているっていうふうに考えていくと、やっぱりどのキャラクターにもそれぞれの生活があって、一生懸命生きているが故にそうなってるんだろうと思っちゃう。だから自然と悪人にはなっていかないんですよね」
——監督にとっては、どのキャラクターも愛おしいものだと。
西田「そうですね。だから、すごい脇役の人に対して、この人がすごく好きでした!って言ってもらってもうれしいくらい。そういう想いで毎回書いてます」