——念願の映画を撮り終えて、達成感も大きいのでは?
西田「いやぁ本当にそうですね。ありがたいことなんですけど、これまで脚本の仕事をやらせていただいている時に、どうしても何本かの作品を並行してずっと書いている状態が続いておりまして。そうすると、その作品のそのキャラクターだけを突き詰めて考えるっていう時間がそれほど持てないものなんです。
あ、あれですよ! 勿論精一杯作ってるんですよ。今の発言は、その作品だけを考えることができないのが辛いという意味で、時間が足りない、満足していないという意味ではないです。で、そんな中で、この映画の最中は他の仕事を一切動かさず、進とより子だけを考えて撮影に臨めたのでとてもスッキリしました。心がとても満たされた仕事でしたね」
——小説の段階から、進役には向井理さん、より子役には片桐はいりさんを想定されてたそうですね。このお二人が姉弟役ってことに意外性も感じたのですが、西田監督としてはどのへんが決め手だったんですか?
西田「以前『ママさんバレーでつかまえて』っていうドラマで脚本と演出をやらせていただいたんですけど、その時に出演していただいていた向井くんとはいりさんの芝居の相性を見て、何か二人でできたらいいなっていうのは当時から漠然とあったんですよね。で、小説を考えていく中で、これはあの二人なんじゃないかって。だから、よく二人が姉弟なんて意外だって言われるんですけど、僕の中ではもともとあの二人が姉弟に見えないっていう考えがなかったんですよね。そこは僕に客観性がなかったところかもしれません(笑)。でもそんなふうに思っちゃったのは、たぶん二人が持っている空気と大事にしているものが一緒だって感じたからだと思います。人に対する接し方の距離感がすごく礼儀正しい。礼儀正しいぶん、人に対して求めるもののラインも高いんですよ。すごく丁寧だし、人当たりもいいんだけど、ちゃんとしてない人には厳しいみたいな、そういうところが僕の中で、姉と弟として自然に見えたんですよね」
——監督のおっしゃるとおり、画面の中のお二人は完全に姉弟でした。しかも、あれが素なのでは?と思うほど自然体で。
西田「そう言っていただけるのはすごく嬉しいです。僕が監督として一番こだわったのはそこだったので。二人が撮影を待っているところで喋ってる空気っていうのが、まさに進とより子そのまま。それをいかにそのまま、演じるというスイッチを入れずに芝居に入ってもらうかを考えたので、それが一番嬉しい感想だったりします」