——及川さんと山本さんは、監督とは初タッグになりますよね?
及川光博(以下、及川)「はい。西田さんからは本当に細やかな演出と指示がありました。でもそこで求められてることが何かっていうのが一度掴めてしまえば、やりがいのある現場でしたね。先ほど向井くんが悪人が出てこないっておっしゃっていましたが、僕が演じた浅野という男は、最初、台本を読み終わるまではイヤミな奴、ずる賢い奴っていう僕の得意なパターンかと思ったんですけど(笑)、別にそういう悪意はないんだなっていう。逆に、ごく普通の人間として存在するのが難しくもありました」
——山本さんはいかがでしたか?
山本美月(以下、山本)「私は舞台ではご一緒していなかったので、ちょっとアウェーなのかなと思って最初心配してたんです。でも、現場では西田さんが間に入っていただいて向井さんとか片桐さんとお話しできるようにしてくださったりして。すごく気を遣われる方なんだなって思いました」
向井「なんかすごかったよね? もっと話しなよ〜って(笑)」
片桐「そうそう、ものすごい近付けようとしてた(笑)。及川さんの時はなかったですよね?」
及川「だって向井くんとは一緒のシーンがなくて、ロケ現場でちょっと話したぐらいですから」
片桐「そっかそっか。何だったんだろうね、あれ(笑)」
——映画の中では姉弟の掛け合いが楽しく、この取材でもみなさん仲がいいのが伝わってきますが、片桐さんと向井さんはお互いが相手だからこそあの関係性が生まれたと思いますか? また、及川さんと山本さんは、あの姉弟の関係を見てどう感じられたかを教えてください。
片桐「実は6年くらい前から、西田さんからはこういう小説を書いて、それを映画、舞台、ドラマにしたいんですっていうのを聞いてたんですよ。その頃から相手役は向井くんだって話になっていたので、なんていうか小さい頃からの許嫁みたいな感じ(笑)。それこそ、ハリウッドスタイルよりも長く、何年もかけて役作りしてるわけで(笑)」
向井「かっこよく言えばね(笑)」
片桐「いやいや、本当に。なので、最終的に撮影の段階では別に喋らなくてもいいくらいの、現場でもお互い好き勝手なことしてるような感じになってました」
向井「たしかに、それぐらいナチュラルな感じでしたよね」
片桐「特に気負うこともなくね。それに、舞台や映画になるまでの間も他のドラマで共演したり、姉弟とは全然違う関係とかもやってるんですけど、その時も『いつか、この人の姉弟になるんだな』みたいな(笑)。そういう気持ちは常に持っていたと思います」
向井「舞台でも3か月間、毎日ずっと稽古してましたもんね。地方に1週間っていうのもありましたし。舞台の演出も幕が開くと二人芝居から始まる形だったので、幕開け前は二人で必ず握手をして。映画は、そういうのがあっての集大成な感じもします」
及川「いい話だなぁ」
片桐「そういう意味でも今回は珍しいケースでしたね」
及川「心の片隅には常にお互いがいたわけですね」
向井「そういうことですね」
片桐「テレビに向井くんが出てきたら『あ、弟だ……』ってね(笑)」
一同:爆笑