台湾ドラマ「ショコラ」やジョン・ウー作品など、日本から世界に活躍の幅を広げる女優・長澤まさみ。初の海外進出となった「ショコラ」では、環境も文化も人も異なる地に4ヶ月半滞在し、全編中国語での撮影に挑んだ。女優人生のターニングポイントとも言える台湾の仕事について、またその経験がいかに現在とシンクロしているか訊いた。
外国では“長澤まさみ”じゃなくて“日本人”なんです
―今撮影中の「都市伝説の女」(テレビ朝日系)はシリーズ2作目ですが、意気込みは?
「このドラマはもともとふざけたテイストだし、日常のくだらないことをいいよねっていうのが醍醐味だと思うんです。すでに現場チームもできてるので、もっと遊びながらいい意味でくだらなさを出していけたらと思ってます」
―音無月子はどんな感じで帰ってくるんですか?
「アメリカ帰りが影響しているのか、自由奔放っぷりがパワーアップしてます。アドリブを入れてもいい役は月子が初めてなので、芸達者な竹中(直人)さんや(溝端)淳平くんたちとのアドリブ芝居の中でも、月子の魅力を出していきたいです。あと、新キャストの大久保佳代子さんと女のバトルもあるみたいなので負けないように頑張ります。それから寄りの映像は足だけでもいいんじゃない?ってふざけて監督に提案したらスタッフも大笑いしてたので面白い映像になってるかもしれません(笑)」
―パワーアップした月子を演じるにあたって、前作の時と変わったことはありますか?
「このドラマのプロデューサーの方が『ショコラ』の撮影現場に来てくれた時に『生き生きしてるから台湾合ってるんじゃない?』って言われたんですが、先日『今、それが良い方向に出てる』とも。無自覚でしたがもしかしたら台湾の経験が影響してるのかもしれないですね」
―初の海外進出となった「ショコラ」は全編中国語の連続ドラマで、しかも主演。やはりセリフには苦労しましたか?
「勉強する時間が全然なくて、台湾に行く前の2週間台本を読んだだけだったんです。だから撮影前の1週間は毎日9時間、自分にムチ打ってやってた感じ。セリフが多かったので、発音の練習をして、ひたすらセリフを覚える。撮影が迫ってたので丸暗記するしかなかった。覚えたら2週間撮影して、また練習して覚えて、撮影の繰り返し。だから休みは何もしないで頭をリセットするか、買い物に行って気分転換するだけ。月一回は東京で他の撮影もしながらトータルで四ヶ月半滞在して、精神ボロボロで疲れました。だから本当は休みたいんです(笑)」
―台湾と日本の撮影を並行してやってみて違いや気付いたことは?
「撮影の仕方は基本的に同じですが、台湾はテストなしで本番っていうことがけっこうあったし、現場がうるさくても誰も注意せずに、そのまま撮るとか、外の音をうるさいって言いながらドアを閉めないとか。キッチリ決め込まないラフな感じの撮影に、『え? どういうこと?』って思うこともありましたね。でもそんな中で自分だけしっかりしようと気を張ってても疲れるだけだから、最終的にはあんまり人のことを気にしないというか、気を遣わなくなりました。日本は気遣いができないと傲慢とか、横柄とか、無愛想とか、ネガティブに受け取られるけど、台湾ではみんな小さなことは気にしない。初めは戸惑いがありましたけど、何か言われることがないから楽になって行きました」
―以前から海外に興味があったんですか?
「そもそも旅行とか外国に行くのがすごく好きだから、外国の仕事をしたいだけですね。前はこんなことは浅はかだと思ってて言えませんでしたが、台湾に行って、こういう感覚でもいいんだって思えるようになりました。台湾は小さい国だからバイト感覚で外国に働きに行くらしいんですが、私も『あっ、じゃあやってみるかな』みたいな感じで割と何でもやっちゃうタイプだから、同世代の人たちが一生懸命やってる姿は刺激的でしたし、そういう社交性を台湾人から学びました」
―海外に出たからこそ見えた日本の良さは?
「日本の気候や土地感がすごくいい。あと、日本以上にご飯が美味しい国はないと確信しました。それ以外はどこも一緒だと思います。違うのは国だからではなく、あくまでも個性。そうやって多くの個性と接すると勉強になるし逆にみんな一緒って思えたかもしれません」
―ジョン・ウーの作品も控えてますが、日本人として世界に出て行くという意識はありますか?
「日本代表として行ってると思うこともありました。外国で仕事をする時は“長澤まさみ”じゃなくて“日本人”なんです。だからこそ日本を好きになってもらいたいし、色んな国の人が仲良くなっていけばいいなと思うので、日本人らしい振る舞いかどうかは分かりませんが、人とちゃんと向き合うことを心がけました」
―今後、一人の「日本人女優」として守っていきたいことはなんですか?
「不思議なことに仕事にはやってることで評価される仕事と、貶される仕事が存在してます。ですが、貶したり、讃え合うのもいいことなのかも知れないけど、どちらもその人の目標に繋がっていると思うんです。どんな仕事も誠実に向き合っていれば、自分の力次第でその質が変わると思うし、それを目指したいです。以前は仕事に対して、受け身な考えが強かったけれど、大人になってきて、ある程度自分でも仕事との向き合い方を判断して自分発信で出来るようになったような気がします。そんな中、台湾ドラマやジョン・ウー監督の作品などで、色んな面を見ることが出来て、人生楽しそう!って思いました」
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