——ハマくんはNegiccoに次はベーシストとして参加したいんですよね?
ハマ「本当にそうですね。小西さんの曲がリリースされた時も書いたんですけど、Negiccoはフルバンドでも絶対面白いだろうと思うんです。再現できないオケで歌ってるアイドルもいるけど、作ってる人が作ってる人だからNegiccoはすごく生オケが似合う。結局のところ、そこも大きいんですよね。僕は結構好き嫌いが激しいので、パッと聴きでダメな曲は理解できるまでに時間がかかっちゃうし、特にアイドルソングは幅が広い分、上手く出会わないと好きになれない。Negiccoももっと前に知ってたらそこまで意識できなかったのかもしれないし、出会うタイミングもよかった。音楽を好きになるきっかけって、出会うタイミングだと思うので。その頃、ダンス☆マンが編曲でちょっとかっこいい時期だったハロプロを掘り返してて、アイドルグループにもフォーカスを当てていた時期だったんです。でもそこからちゃんと聴くようになったグループって実はNegiccoの他に全然いないんですよ。Negiccoは出会ってから毎曲毎曲かっこよくて嬉しいし、単純に次の新譜が楽しみだなと思える1つのグループですね」
——確かに生音は映えそうですね。“サンシャイン日本海”もまさに、ですよね。しかも、PVは8ミリで、あの昭和感もすごくよかったです。
Megu「新潟の観光特使もさせてもらってるので、観光案内してるイメージで」
——曲も含めて、郷愁と新しさの混じり方が素晴らしい。
ハマ「日本って60年代くらいからアイドル文化があるじゃないですか。それを追って見ていくと、2010年代くらいからは全然バンドシーンより楽しいんですよね。それはなぜかというと、本人たちはもちろんなんですけど、それを動かしたり、楽しいからもっと広めたいと思ってる人たちの熱量が全然違うんですよ。全体的に否定したいわけじゃないけれど、バンドを動かしてる人たちの熱量とはやっぱり今は特に違う。だから田島貴男さんだし、小西さんだし。みんなで面白がってるし、みんなで最高と思って、全力で動いてる感じが見ていてすごく楽しくて。そこに楽曲のクオリティも伴っているって、一番いいことですよね。本人たちがどれだけダンスが上手だろうが歌が上手かろうがやっぱり動かしてる人が面白がってやってくれないと絶対広まらないし、いいものが届けられないと思うんで」
−−確かに。
ハマ「例えば、キャンディーズもバックバンドがガチなんですよ。MMPという、後にスペクトラムというバンドになるんですけど、あれはそもそもプロデューサーの方がキャンディーズを同期組とは全く違う形で出していこうという中で組まれた。キャンディーズはアイドルじゃない、ミュージシャンだと。だから、レコーディングも事前にデモを渡して練習して来いじゃなくて、バンドと一緒に初見でやれと。MMPもキャンディーズのことをアイドルだとしてなくてプロジェクトとして認識していたから、『間違えてんじゃねえ、Bメロ』みたいな感じで接していて。最初ファンは、『可愛いアイドルを観に来てるのに、なんで出てくる前にお前らが2曲もやるんだよ!』って叩いてて。だってファンクのインストなんかをやるんですよ(笑)。でもファンも徐々に追いついて、これじゃないとキャンディーズじゃない、という感じになるんです。その悲壮感と必死さに打たれるというか。だから解散ライヴの1曲目がアース・ウィンド&ファイアーのカバーだったりするし、それが超ファンクでかっこいいんですよ」
Megu「そうなんですね!」
ハマ「ぜひ観てみてください。僕は音楽が好きなんで、アイドルを音楽の1個のジャンルとして見てきていて、やっぱり今すごく面白いし、Negiccoはいいなと思うんです。今の時代の温度感がすごく伝わる。帯で書いた『アイドルスタンダード』というのは、下手な表現なんですけど、俺の中ではそういう想いで。わりと好きだった80年代の、いわゆるアイドル全盛期の頃のあの全員でやってる感じ。それに全員で乗っかっている感じと、作られすぎてないというと過剰な言い方なんですけど、そういう感じがして。かえぽが夜中にすごく個人的なツイートをしたりするのは、それが今の現代のスタンダードだなと思う。当時は現場に行かないと会えない存在だったけど、今はSNSだなんだってなってる世の中で、怒られそうなちょっとメンタル的ツイートもするわけですよ。それをファンのみんながどうするでもなく相手してる感じとか、俺、ひそかに見ててすごくいいなと思ってるんです。3人ともいい意味でバラバラだし。そこがすごい魅力的であり、いいなって」
——逆に、立場的に巻き込んでる、中心部にいる身としてはどういう風に見えてるんですか?
Megu「自分たちでは巻き込んでるつもりとか全然なくて(笑)。今、T-Palette RecordsさんでCD出させていただいているんですけど、出してもらう前に、浅草にあるまつり湯さんのステージで歌を歌ったことがあるんです。そこにたまたまタワーレコードの社長さんがプライベートで来られてて。その時に、音響トラブルがあってマイクが使えなかったんです。それで『マイクが使えません、すみません』って言ってお客さんを待たせることがダメだと思って、その場を繋げる何かしようって、リーダーのNao☆ちゃんと急に漫才をすることになったんですよ。持ちネタとか全然ないけど、その場を離れてお客さんが悲しむよりも、何かしなきゃって。それでザ・たっちさんの幽体離脱というネタをやって(笑)」
ハマ「双子じゃないから何も成立しないですけどね(笑)」
Megu「(笑)。それをタワーレコードの社長さんが『すごい!』と思ってくださったんです。マイクが使えないのに、人を楽しませようとしているその姿勢がさすがだ、泣けると思ってくれて、Negiccoのこと気に入ってくれたみたいで。お客さんとしてハイタッチとかに参加してくださってたんですけど、社長さんだと思わなくて。その後にタワーレコードさんでCDを置きませんかという風に話がつながっていって」
——じゃあそういう根性みたいな部分が色んな人がひっかかるポイントなのかなと?
Megu「そうですね。結構Negiccoって名前だけでバカにされてきたというのもあって(笑)。今でこそアイドルは憧れだったりしますけど、私たちの年代では『何言ってんの?』って感じだったし、やっぱり沢山悔しい思いもしてきたので、3人ともなにくそ根性は秘めてます(笑)。悔しかった思い出を肥やしに頑張ってきたとこがあったので、ピンチの時は3人で助け合ってという」
——一番悔しかったことは?
Megu「色々あるんですけど……控室がなくて、ゴミ箱の脇で着替えたりとか、外で着替えたりというのはありました。新潟から来ているので、東京から来られたアイドルさんが先に楽屋に入っていて、今だから言えるけど、みなさん結構殺伐としてて。戸を締められちゃったり、『Negiccoってなんだ?』って感じで笑われたり」
ハマ「まだその人たちは活動してるんですか?」
Megu「もういらっしゃらないです……」
ハマ「ほらね(笑)。そういうことになるわけですよ。絶対自分たちはしないじゃないですか、経験してたら。『は?入れねーよ!』みたいなことには絶対ならない。それは本当に大事なことですよね」
(後編へ続く)
撮影 中野修也/photo Shuya Nakano
文・編集 桑原亮子/text & edit Ryoko Kuwahara
OKAMOTO’S
OKAMOTO’Sオカモトショウ(Vo)、オカモトコウキ(G)、ハマ・オカモト(B)、オカモトレイジ(Dr)。2010年5月にアルバム『10’S』、11月に『オカモトズに夢中』、2011年9月に『欲望』を発売。2013年1月に4thアルバム『OKAMOTO’S』を発売し、7月には両A面シングル“JOY JOY JOY/告白”を、11月6日にニューシングル“SEXY BODY”をリリース。2014年1月15日に岸田繁(くるり)を迎えた5th アルバム『Let It V』を、8月27日にはRIP SLYME、奥田民生、黒猫チェルシー、 東京スカパラダイスオーケストラ、 ROY(THE BAWDIES)らとコラボを果たした5.5 thアルバム『VXV』を発売。5周年アニヴァーサリーツアー「OKAMOTO’S 5th Anniversary HAPPY! BIRTHDAY! PARTY! TOUR!」が9月21日の札幌PENNY LANE24からスタート。ツアーファイナルは10月25日、東京・日比谷音楽野外大音楽堂。
Negicco
2003年に結成された新潟発アイドル・ユニット。 メンバーはNao☆、Megu 、Kaede。 西寺郷太、小西康陽、矢野博康、田島貴男などのプロデュースによる楽曲を リリースし、今年はSUMMER SONICやROCK IN JAPANなどのフェスにも出演。 最新シングル”サンシャイン日本海”はオリコン11位を獲得。