──参加しているジェイミー・ウーンやリル・シルヴァ、ソン、トータリー・イノーマス・エクスティンクト・ダイナソーズはみな英国人です。彼らとはどのようにしてつながったのでしょう?
BANKS「みんな違う経緯で一緒にやることになったの。リル・シルヴァは英国でのレーベル・メイトなの。トータリー・イノーマス・エクスティンクト・ダイナソーズは音楽出版社が間を取り持ってくれて実際に会ったら、すごく良いペースで制作ができた。ソンは今はウィーンにいるけれど、ロンドンで一緒に制作したの。リミックスもしてもらったんだけれど、私の曲が持つ意味や魂をそのまま保ちながら、不気味で虚無な空気感をプラスしてくれて、それがすごくクールな仕上がりになったのはすごくうれしかった。みんな、それぞれインスピレーションを与えてもらったと思うわ」
──その中でもジャスティン・パーカーも起用していますが、彼はラナ・デル・レイの主要な曲をほとんど手がけています。アルバムの6曲目「ユー・シュッド・ノウ・ホエア・アイム・カミング・フロム」はイントロのピアノからして、すごくジャスティンの色が出ていますし、あなたの歌唱も少し強めに出ていますね。ラナと比較されるのは覚悟してのアレンジだったのでしょうか?
BANKS「比べられても、全然気にしてないわ(笑)。もちろん彼女はすばらしいアーティストよ。私自身は彼女とはまた別の魅力を持つアーティストでもある。だから、気にならないの」
──アルバムまでずいぶんと楽曲を公表してきていますが、いざアルバムというフォーマットにまとめる際に気遣ったことはありますか?
BANKS「自分の心の中にある感情を曲というかたちあるものにして、そしてそれを並べるだけ。これはシングル、こっちはアルバム用って意識することはないの。誠実に曲と向き合うだけね」
──ご自身の音楽についてダーク、ゴシック、R&Bと形容されることが多い気がしますが、どれも的を射ていない感じがします。むしろ感情の揺れの幅を音の強弱や響きを用いて表現しているというのが近いのかなと。
BANKS「そのとおりよ。今日1日で思ったんだけれど、アメリカ人のジャーナリストよりも日本のジャーナリストの方が私や私の音楽のことを理解してくれているみたい(笑)。私はジャンルで音楽を考えないの。R&Bって何? ダブ・ステップって何?という感じで、アーティストというよりも個人が持っている資質が重要なのよね。ジャンルではなく、曲が伝えたい感情が大切。もちろんダークな面もあるけれど、壊れやすい光の面もある。それをゴシックと形容してしまうと、全然違うものになってしまうけれど。難しいわよね、言葉で表すのは」
──では、アルバムの中でも最も占めている感情は?
BANKS「曲それぞれに違った感情が込められているから、聴き進むに連れて移ろっていくものかも。例えば「ブレイン」を書いたときは、いちばんアグレッシヴなくらいに怒りに満ちていた。それがいちばん強い感情かなと思ったけれど、次に「アンダー・ザ・テーブル」を書いたときは自分のもろさが出ていて、そうなるとそのもろい感情がいちばん強いかなって思っちゃう。やっぱりどの感情がというのはないわね。だから、その曲ごとに私がどんな状態でいたかを感じ取ってもらえるとうれしい。そういうアルバムなの、この『GODDESS』は」
撮影 山谷佑介/Yusuke Yamatani
文 油納将志/Masashi Yuno
編集 桑原亮子/edit Ryoko Kuwahara
BANKS
LA出身のシンガー・ソングライター。口コミだけでHypemチャートのトップに昇りつめ、話題に。勢いある作曲と共感を呼ぶ歌詞は、鮮やかにポップなアレンジと優しい歌声に乗って、一つ一つの音、コード、吐息までを、大事に伝える。魅了させるビート、ピアノ、エコー感と、そのやみつきになる歌声で、BANKSは様々なジャンルを自由自在に行き来する。歌手であり、詩人であり、ピアニストであり、語り手であり、そして何よりも、彼女はアーティストなのである。
http://www.universal-music.co.jp/banks/
BANKS『GODDESS]
発売中
https://itunes.apple.com/jp/album/goddess/id865056657
http://www.amazon.co.jp/Goddess-BANKS/dp/B00LG92GBA/ref=ntt_mus_ep_dpi_1