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天野太郎(横浜美術館 主席学芸員)「美術は近くにありて思ふもの」Vol.1 美術と音楽の類似性 ゲスト: MARCY(THE BAWDIES)

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横浜トリエンナーレや奈良美智展など数多くの重要な展示を成功させ、現代アートの名裏方として名高い天野太郎。その天野が様々なゲストを迎え、アートの定義や成り立ち、醍醐味を語る連載企画の初回、「アートのことはさっぱりわかりません」と戸惑いながら現れたのはTHE BAWDIESのドラマーMARCY。両者の意外な接点とは? 果たして天野はMARCYにアートへの興味をもたせることができるのかーー?

学芸員ってどういう仕事なんですか?

ー 読者からはお2人の接点がわからないと思うんですが、早々に種明かしすると天野さんのご子息(天野光太郎)がMARCYさんと高校の同級生だったんですよね。

MARCY「はい。高校時代、光太郎君はうちの学年で一番ギターが上手かったんです。で、聴いてるのもヒットチャートとかじゃなくて、キング・クリムゾンとかレッド・ツェッペリンで。ジョージ・ハリスンが亡くなった時も、1人で体育館で新聞広げて黙祷してるんですよ(笑)。そういう、音楽をやってる友達の中でも、俺らがあんまり知らないところを知ってた。で、実はTHE BAWDIESの前身バンドのベースでもあったっていう」



ー あ、そうなんですね。じゃあ天野さんは高校時代からMARCYさんと交流があったんですか


天野「サッカーしかしてないなあ。横浜美術館の近くにいいフルコートがあって、そこでサッカーやったよね」

MARCY「そう。光太郎君から誘われて、そこで初めて天野さんにお会いしました。元々家が近かったから、家にお邪魔した時におじさんにも挨拶したりして、たまに顔を合わせたりはしてて」

ー MARCYさんが音楽をやっているのはご存知でした?

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天野「うちは娘が2人いて、これが兄貴の情報は全部持ってるわけ。そこから聞いてね」

MARCY「(笑)。俺はおじさんが美術館で働いてるというのは知ってるんだけど、学芸員ってどういう仕事なのかが実は全く分からないんですよ」

天野「ああ、『美術館とは何か』を裏付けているのは、コレクションを持ってるか持っていないかなの。所蔵作品を持ってなくて展覧会だけをやっている施設は、英語ではミュージアムではなくアート・センターっていうんだよね。だから『美術館って何ですか?』っていう答えには『美術品のコレクションを持って美術を紹介する場所』というのが一番わかりやすい」

MARCY「じゃあ横浜美術館も持ってるんですか?」

天野「1万点くらい持ってる。ルーブル美術館は39万点持ってんねん(笑)」

MARCY「すごっ! 出してない作品もいっぱいあるんですか?」

天野「ものすごくある。39万点持ってる一方で、自分たちが持ってないものを集めて展覧会もするわけ。例えば、世界中のルノアールを集めて展覧会をしたりね。つまり学芸員の大きな仕事は、コレクションを紹介することとその研究。あとは展覧会。例えば今やってるプーシキン展みたいに他所の作品を借りてきて展示すること。で、僕の専門は現代美術と写真。しかも生きてる人限定。だから作家に会ったりとか色んなことをして、個展や展覧会をやる。それで展覧会をした後に作品を買ったり、寄贈してもらって、コレクションにしたり」

MARCY「あ、そういうこともできるんですね」

天野「できるというか、やらないといけない」

MARCY「へえ。そもそも現代美術って何なんですか?」

天野「アーティストが生きてるってこと」

MARCY「えっ、そういうこと!?」

天野「あはははは! この話をするとキリがないんだけど、日本語の現代美術を英語に直すとコンテンポラリー・アートって言うわけ。コンテンポラリーって同時代って意味だから今、2013年でしょ? じゃあ2000年は現代美術じゃないのかってなる。それとは別にモダン・アートって言葉があって、これは近代美術って訳すんだけど、19世紀から今までのやつを全部指すわけ。僕らが現代美術って何気なく呼んでるのは1945年、つまり第二次世界大戦が終わって以降のもの。でも、それは実は厳密には決まってない。人によって言い方が変わってくる」

MARCY「明確な定義がないんですか?」

天野「ない。皆さん知らないかもしれないけど、ないねん」

MARCY「へぇー」

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