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スパイク・ジョーンズ『her/世界でひとつの彼女』インタビューVOL.2

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誰もが彼のことを奇才と呼ぶ。その発想は常に奇想天外。いたずらっ子のように無邪気な眼差しで観る者を斬新な驚きへといざない、それでいて時折、胸の張り裂けそうな切なさや、心の襞に触れるほどの優しさで包み込んでくれる。そんな現代の魔術師、スパイク・ジョーンズ監督による4年ぶりの長編作『her/ 世界でひとつの彼女』(6月28日ロードショー)がいよいよ日本公開を迎える。近未来のLAが舞台の本作は、愛を失ったばかりの男と、人工知能搭載のOSが恋に落ちてしまう異色のラブストーリー。果たして彼がこの作品に込めた想いとは? 映画を彩る音楽、ファッション、そして唯一無二の妄想術に至るまで、じっくりと話を訊いた。

(VOL.1より続き)

−−『her』はオーウェン・パレットやアーケード・ファイアの音楽も素晴らしいですが、特にカレン・Oの”The Moon Song”は主役のふたりの心に寄り添っていて最高でした。どのようなきっかけで生まれた曲なんですか?

スパイク「カレンは心に感じたものを、とても深い形で楽曲に反映することのできる優れたアーティストなんだ。まず最初に彼女が僕のアパートに遊びにきて数時間ほどこの映画についてお喋りして、あとは自分の家に持ち帰って、レコーダーを前に1時間足らずで書き上げたらしい。でも彼女とはもう10年来の親友だから、実質的な作曲時間は1時間でも、実際には僕らの10年分の友情から生まれた曲と言えるのかもしれないな」

−−一方、本作の衣装デザインでは、1920年のファッションを果敢に取り入れていますよね。ストーリー自体は近未来を舞台としながらも、衣装に関するベクトルを過去に求めたのはどうしてですか?

スパイク「世の中はファッションをはじめ、いろんなものが周期で巡ってくるよね。10年前に流行ったものがまた再興したりして。そんな中にあって、1920年代という時代はあまりカムバックを果たしていないように感じたんだ。ってことは、これからも盛り上がる可能性は大アリってこと(笑)。そこで当時流行ってたハイ・ウエストのパンツをはじめ、柔らかい素材や、ストライプの柄、ヒゲ、ちょっと派手なデザインといったものを数多く取り入れてみることにした。だけど最終的なゴールはといえば、あくまで時代性にとらわれず、自分たちなりのポップで温かみのある近未来をデザインするということだった」

−−ジョーンズ作品は炸裂する妄想がどれも素晴らしくって、それを楽しみにしているファンも多いと思います。最近のお気に入りの妄想が何かあれば教えてください。

スパイク「妄想はいつだって起動しているよ(笑)。このインタビューは楽しくて好きだけれど、時々、楽しくないな〜って思いながら質問に答えている時なんか、目の前のテーブルに火をつけてやろうかとか、燃え盛る炎を気にもせず取材はなおも続行中……といったイメージを想像したりね」

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Photo courtesy of Warner Bros. Pictures

 

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