—テーマ性の強さというのは?
小林「僕の個人的な話をすると、楽曲が持ってるモチーフを積極的に迎え入れることができなかったっていうのがいちばん強いかな。一度、あるコンピのためにデモを作ったんですけど、あまり好きになれなくて。暴力的なものやレイプとかをテーマにした映画を見漁っていたときに、そういう悲惨なできごとでも、自分はきれいな音楽とかで昇華することができて……つまりネガティヴなことをポジティヴなものに変換する力を自分は持ってるんだっていう大義名分が気持ちの中にあったんです。でも、いざ(デモの)音源にするぞってときに、思想は立派なんだけど気持ちは付いてこれなかった気がして。それ以降、演奏するときはあまりテーマとかを気にしないというか、特別な曲過ぎて妙な距離感があったんです」
—何故、ネガティヴなことをポジティヴに変換することを大義名分だと感じてしまったんでしょう。
小林「世の中を見渡したとき素敵だなと思うことも、素敵じゃないなと思うこともどちらもたくさんあったとして、素敵なものを見たときに、素敵な気分で素敵な歌をうたうっていうのは、素敵な行為ではあるんですけど、それはいつでもできるような気がしていて。『感動できる気持ちがあるって素晴らしい』で終わっちゃうというか。いろんな問題提起をしていく中で、自分の良心を以てして、何かを徹底的に軽蔑したりとか、否定や批判する態度をとった音楽にも僕はいい影響を与えてきてもらったので。ただそのときは、自分も表現者としてそういうふうになれたらいいなっていうのをすごく意識していた時期だったからだと思うんですよね」
—その後、小林さんがさらに態度や言葉で表明できるようになり、〈Ceremony〉で“ブルックリン最終出口”と向き合うことで、今、音源化することと合致した?
小林「そうですね。いろいろタイミングも含めて、今なら作品にできるし、お客さんも自分たちも大事にしてきた曲なんだなって実感があって。距離はあったけど、捨てたことはなかった曲なので」