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天野太郎(横浜美術館 主席学芸員)「美術は近くにありて思ふもの」Vol.4 言語を剥ぎ取った先の可能性 前編 ゲスト: TAIGEN KAWABE(BO NIGEN)

天野「なんで変わったんだと思う?」

TAIGEN「電子音楽的なところでリズムマシンが入ったり、生演奏の割合が減ったり、色々な文化が入ってきたところがターニングポイントなのかなと思います。かつてのグルーヴが面白かった人やバンドたちは電子音楽——低音に特化したクラブ音楽に行ってまして、そこに移民の音楽が入ってきたことが大きい。アフリカ系やインド系、色々な国が混ざってるんですけど、そういう人たちがクラブカルチャーに入ってきて、日本で流行っているダブステップなどもそうであるように、黒いグルーヴみたいなものがイギリス人にとってかっこいいということになった。元々ダブやレゲエなどが流行っていたお国柄でもあり、それがザ・クラッシュなどバンドに流れていた時代もありましたが、今は直下してクラブに行っちゃうんですよ。だから僕が面白いと感じるグルーヴ、リズム隊のグシャグシャ面白い蠢いてる感じというのはクラブに持って行かれた感じがしています。

逆にそれはイギリスらしいとも言えるんですよ。アメリカのクラブ音楽とは全然違いますし、ドイツのいわゆるテクノなどとも全然違いますし、音で言うと、イギリスのシーンというのは最近わかりやすくなってきた気がします。イギリス人の性格と音を合わせてみると良さも悪さもイギリス人らしいというか。詰めが甘いとかルーズであったりするけど、アメリカ人や他のヨーロピアンとは違うタフさがある。マッチョじゃないけど、ガッツみたいなのがあるんです。

僕はアートはわからないんですが、クラシックの方はやっぱり育ちの良さじゃないですけど、さっき仰ったストレートに出しちゃいけない感というのを自然に感じます。逆にヨーロッパからイギリスに来ているアートキュレーターや美術館のイベントなどで会う人は、ビシッと自分でシールドを張っているポライトな感じがありますね。作っている感じと作らずして隠している感じというのがわかりやすいかな」

(中編へ続く) 

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