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天野太郎(横浜美術館 主席学芸員)「美術は近くにありて思ふもの」Vol.4 言語を剥ぎ取った先の可能性 前編 ゲスト: TAIGEN KAWABE(BO NIGEN)

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天野「アメリカ人相手だと飲みに行って話をするときにわりとストレートなことが言えるわけですよ、政治的なことでも。ところがイギリス人はまずストレートなことを言うのが基本的にありえない。そうするとこの人はこれが好きなんだろうか嫌いなんだろうかというのもよくわからない。けれどいつもニコニコしている。1、2回会っただけで深入りするような話は非常に難しいんです。ところがV&Aのオープニングに来てるようなアーティストになってくるとまた違う」

TAIGEN「色んなタイプがいますね」

天野「イギリス人というのはイングランドもあるし、ウェールズもある、アイルランドもあるわけで。ザ・ビートルズも元々はアイリッシュですよね? 港町のリヴァプールに行くと、同じ英語でもよくわからないし。そういう複合的な文化があると同時に、僕はポップや音楽の世界とかはよくわからないけど、ある種のアバンギャルドが出てくる背景にはロイヤルファミリーというのが前提としてあるとは思うんです。そのがっちりとした枠組みがあって、さっき言った中々ストレートなことを言わないような人たち、つまりジェントルマンは非常に控え目で距離を保っている。そしてその反対軸が成立しているんじゃないかと。ロンドンではアバンギャルドとしてリアリティをもってぶつかる相手が環境的に元々あったのかもしれないというのは興味があります。

そのように、イギリスの特殊性について音楽をやっていて感じることってありますか? 例えば美術だとイギリスのアーティストはすぐ分かるんですよ」

TAIGEN「僕はベースボーカルなので、リズム隊の音を聴くとイギリス人はすぐわかります。ちょっと否定的になっちゃうんですけど、詰めが甘いというか。僕が好きなイギリスのバンドはキングクリムゾンだったり、レッド・ツェッペリンだったり、60、70年代くらいのものが多いんですね。当時のリズム隊はとても強固なものがある。それがなぜこんなに変わっちゃったのかなと思うくらい80年代からフラットになっちゃって。

今もそうなんですが、演奏していてダルいのが格好いいみたいなところがあって、そのルーズなところが味でもある。今流行ってるインディーロックと呼ばれているようなものも、若者のそういうファッショナブルな音楽性がとても顕著なんです。それは僕がロンドンに渡ってがっかりしたポイントでしたね」

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