うーん、確かに(笑)。でもこんな意気地なしのチューヤを演じるにあたって、役作りはどのように進められたのだろう? そう尋ねると、こんな答えが返ってきた。
「僕も兵庫から東京に出てきた経験があるから、彼の気持ちはよく分かりました。だから人物像はすごく作りやすかったですね」
一方、演技面では新たな挑戦もあったという。野村はこう打ち明ける。
「この映画ではまず周りのメンバーが盛り上げて、それを自分の役柄が受け止める。実は、そういう“受け身”の芝居って僕にとって初めての経験だったんです。いったいどんな撮影になるのか不安もありましたが、基本的に男の友情の物語なので、いざ撮影に入ってしまえば割と自然に演技できちゃってました」
また、野村はこうした現場を乗り越えられた要因として、吉田康弘監督にも惜しみない感謝の言葉を捧げる。
「吉田監督とは『江ノ島プリズム』に続いて二作目でした。リハーサルの時はグイグイ引っ張ってくれるし、言うべきところはビシッと言ってくれる。それでいて、僕らの意見にもちゃんと耳を傾ける。あらゆる面で本当にアニキみたいな存在でした」
なるほど、本作のナチュラルな演技の裏側には、そんな現場の雰囲気の良さも隠されていたのだ。