—今回はアナログの録音設備が整ったスタジオでレコーディングがされたそうですが、そうしたアプローチが今作にもたらした最大の効果は何でしたか? アナログ特有の音の温かみが、メロディやあなたの歌声の魅力をより引き立てている印象を受けましたが。
ジョセフ「(テクノロジー的に)デジタル化の著しい今の世の中で、アナログで録音するということは、自らの意志でオールド・ファッションになることを意味するんだ。手紙を書くのと同じだね。今はもっと速く、ずっと正確に相手に届くものがあるから。僕の中では、アナログで録音するというのはまったくアーティスティックな決断だった。『完璧』を求めるのであればデジタルで録音しただろうけれど、僕は自分の手書きをありのままに見てもらいたかったんだ。同じように、キャラクターや温かみを実際の手書きで見てもらいたかった。このようなアプローチにおいて、曲を伝えられるのはメロディとキャラクターに尽きるね」
—「Dummy」のインタヴューだったと思いますが、今作にはファースト・アルバムの『ピップ・ペイン』に通じる部分がある、と話されていましたね。確かに、インストゥルメンタルのミニマルなテイストや、前作の『イングリッシュ・リヴィエラ』と比べればローファイと言っていいオーヴァー・プロデュースを排したプロダクションなど、個人的にも連想させるところがあったのですが、具体的にあなたの意見をうかがえますか?
ジョセフ「確かに『ピップ・ペイン』とは多くの共通点があると思う。ローファイ度の高い音質が関係あるかも知れないね。ただ、意識的な決断でもあったんだ。以前やっていたものでも、時にやりそびれてしまうものがあるので」
—“アイム・アクエリアス”のドゥーワップや、“ラヴ・レターズ”の女性コーラスがとても印象的ですが、あのような演出はどんなアイデアから生まれたのでしょうか? 60年代のモータウン・サウンドに思い入れがあるそうですが、そうした個人的な音楽の原体験が投影されている部分もあるのでしょうか?
ジョセフ「モータウンや60年代の音楽は、もちろん生まれてこの方ずっとファンだったけれど、恐らく以前は何が古くて何が新しいのかという気持ちで頭がいっぱいだったんだと思う。これらの影響の上に音を描くことが、何か新しいものを生みだす手助けになる気がしている。また、4作目のアルバムにバッキング・シンガーを入れるというのはパーフェクトな『お約束』でもあるんだ」