先日、大変お世話になっている大先輩より御招き頂き「能」を鑑賞してまいりました。
渋谷のセルリアンタワー能楽堂で開催されました 第78回 櫻間會例会に行ってまいりました。
番組(演目)は、独吟「天鼓」連吟「鵜之段」能「融」というものでした。
能楽堂での能鑑賞は3回目になりますが カッコつけずに正直に言います。
能に関しての知識は、まったくありません。そしていつも途中でコックリコックリしています。そんな僕の今回の感想です。
始まりの独吟・連吟とつづく語り部のような唄は現世界から幻世界に観客を誘い込む呪文の様に耳から頭、身体に入り込んできます。
声量と発声、呼吸に操られた声の色は、お寺で聞くのお経にも似たエネルギーを発して僕を支配しました。
これを睡魔と呼ぶ事もできますが、このなんとも言い難い心地よさはたまりません。
そして休憩がります。(もしかすると この休憩は意識が戻ってしまうので要らないのかもしれないです。)
休憩後、いよいよ、能が始まります。
シテとワキと呼ばれる演者の唄と舞の緊張感は、まさに神事のようであり演劇でもあり神の領域を覗いている気分になります。
鼓(つづみ)、太鼓、笛の音色と「いよ~っ!」という掛け声のような発声が特有のリズムを奏でることで その演出は効果を存分に発揮して幻の世界感を強調します。
演じられている物語自体は、本当に短い内容なのですが とてもゆっくりとした展開とゆっくりな台詞回しによって、現世の慌ただしい時間の感覚も奪われます。この空気感から発生する睡魔にも似たエネルギーにより意識と無意識の間を行き来する事ができます。思考は停止していたと思います。
つかの間の時空旅行が終わり、ふと、意識が現実に戻ったタイミングで舞台はおひらきになっていました。
全く知識のない僕ですらこれほど面白い感覚に身を委ねられたのですから、能が好きで知識のある人は安心して夢現(ゆめうつつ)の世界を楽しめるのだろうと思いました。
開演前に招待してくれた先輩から「いびきをかかない程度に寝ても良いから」と言われ「いやいや、寝ないで最後までしっかり勉強させて頂きます。」なんて言った僕ですが、もしかすると能の本質は、うつらうつらしながら楽しむエンターテインメントなのかもしれないと勝手に思ってしまいました。(本当は歴史文化や物語の背景を理解した上での話ですが)
能は、ダンス、演劇、音楽やお笑いといったステージ上で展開されるエンターテインメントとは、全くと言ってよいほどの別次元だという事をすこしだけ体感することが出来ました。大先輩、有難うございました。
セルリアンタワー以外にも話題のGINZA SIXなどにも能楽堂が造られるほど、現代の日本でとても注目される表現の文化です。
ダンスや演劇、デザインやファッション、アートなど表現に興味のある方は、とにかく体験してみてください。
無知識でも能楽堂に問い合わせをして初心者だと伝え初心者向けの鑑賞券を手に入れてみてください。
そして濃いめのコーヒー1杯飲んで能鑑賞に挑んでみてください。眠らずにしっかり楽しむのもすてきです。眠るか眠らないかのギリギリの楽しみ方もちょっとお勧めします。
*この文章は私稲葉の主観での内容ですので能および業界関係者の想いを冒涜する気持ちは微塵も御座いません。
勉強不足の稲葉が幻想的な能の世界を稲葉なりに楽しむことが出来たという事を伝えるための表現です。
万が一不快な思いをされる方が居られましたら無礼者の戯言とどうぞご容赦頂けます様お願い申し上げます。