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「飼い主さんの話し」の重要性

    5歳のマルチーズが泡を吹いて倒れた。

     

    「あのっ、犬にもてんかんってあるんですか!」

     

    電話越しでも、女性のひどく慌てた様子が伺える。

     

     

    幸運なことに、愛犬はすぐにいつもの状態に戻ったそうだが、

     

    それでも目の前で急に倒れた姿を見たら誰だって取り乱してしまうだろう。

     

     

    原因として考えられる病気はいくつかあるので、動物病院で詳しい検査をする必要はあるが、

     

    犬も人と同じようにてんかんを起こすことはある。

     

     

    てんかんは突然脳に嵐が発生するようなもので、発作などの神経症状が繰り返し起こる。

     

    「今までに同様の発作を起こしたことはありませんか」との問いかけの答えは「半年前に1度だけ」というものだった。

     

    それなら治療は今すぐ必要ないかもしれない。

     

     

    てんかんは、月に1回以上の発作が治療スタートの目安となるからだ。

     

    しかし、相談者の次の発言で考えを改めた。

     

    「前回も今回もたまたま仕事が休みで家にいたから良かったけど……」落ち着きを取り戻し、

    話のついでという感じでそう話した。

     

    「運が良かったわ」と。

     

     

    週に5日は留守番をさせており、その間は誰もいない。

     

    そうなると、普段から発作はあり、たまたま2回を目撃しただけかもしれない。

     

    外出中に発作を起こしていてもすぐに治まるため、失禁などがない限り帰宅後気づくことはできないからだ。

     

    受診の際には、発作に気づいたのは2回であるが、普段は留守にしているためその間のことはわからない、と主治医に伝えるようお願いした。

     

     

    今回のように、飼い主さんがリラックスしたときに放つ何気ない発言の中には、獣医師にとって重要な事柄が隠れていることがある。

     

    そのためにも、気負いなく話していただけるように飼い主さんとの雑談を大切にしている獣医師もいるが、それでも診察室だと緊張してしまう方は多いだろう。

     

    「大したことじゃないから」と口をつぐむ前に思い出してもらえたら嬉しい、飼い主さんの話の中には大きなヒントが隠れているということを。

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