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藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」#1 イントロダクション

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 さて、ヒーラーになるとだけ先に決めたあとのことである。
 目標となる人や、何かがあれば、行程がおのずと出来るので、あとは行くだけ。ある意味簡単なのだが、そんなものは全く無かった。
 ヒーリングを思って世の中をぐるりと見渡せば、真面目そうなものから、見るからに聞くからに怪しげなものまで、その名の傘の下に、百花繚乱魑魅魍魎である。その中から、何を選ぶかは完全に自由で、さてさてどうしようといった感じだった。
 写真家になったきっかけは、大学卒業後に就職もせずバイトしていた店が、たまたま写真家がオーナーの店だったというものだったし、小説も、たまたま編集者に書いてみたら?と勧められたからだった。
 自分は箱が決まってから中身を考えるタイプらしく、今回ヒーラーが先に来ているのも同じパターンだった。
 そして、たまたまは何度だって繰り返さる。今回は、友人がたまたまレイキマスターだった。
 もともと、それがどんなものかは良く知らずに、レイキに対してぼんやりとした興味は数年前からあった。超能力とまではいかないが、それに近い能力を駆使して癒しを与えていく、そんなイメージをレイキに対して勝手に持っていたし(後日レイキは超能力ではないと知りました)、それを知った頃から、自分もいつか出来るようになる気がしていた。今は手元に残っていないけど、クイックレイキという洋書の翻訳本さえ持っていた。
 思い返せば、きっとヒーラーへの扉はその頃から、自分の目の前に存在していて、あとはドアがいつノックされるかだけのことだったのだろう。
 ノックされたドアの向こうには、まずレイキが現れた。それは徒歩圏にあって、その頃住んでいた沖縄の家の川向こうにあった。
 自分は指定された時間に、歩くでなく、アメリカ製ハンドメイドの赤いキャノンデイルに股がってペダルを回して向かった。
 レイキマスターの友人宅へは五分程遅れて到着し、中へ入るとホワイトセージの香しい煙がまだ残っていた。その草が、ネイティブアメリカンの教えでは浄化のために使われることをなぜか知っていて、友人はこれから始まるレイキのアチューメントのために、浄化された場を用意してくれていた。
 今でもあの日のことは鮮明に覚えている。これから続くヒーラーとしての自分の最初のページはきっとあの日になるのだろう。よく晴れた日で、窓からは祝福のような日差しが室内を明るく輝かせていた。

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