触れるということが、コミュニケーションの基本であることは、出産の現場でも言われていることだ。
出産後に触れられることが少なかった乳児は、健康を損なう事が多い。成長ホルモンは触れられることによって分泌が促進されるからだ。
また、育児においても親とのスキンシップが過度に少ない子供は心身に悪影響が生じることも分かっている。オキシトシンの分泌が不足し、社会性が未発達になったりする。
これらは成人間においても不足の影響は現れて、意外なのは女性よりも男性の方が実は触れられることを必要としている事実だ。マッサージに通う男性が多いのは、身体的疲労だけが原因ではないということだ。
では、ハグはどの程度スキンシップとなっているかと言えば、実は大した効果はないらしい。そもそもせいぜい数秒の行為に過度の効果は期待できない。欧米の人にとってハグはスキンシップというよりも社交や慣習なので、彼らが日本人に比べてスキンシップに長けているわけでもなさそうだ。
また、夫婦間においても、肌と肌との触れ合いは年月と共に少なくなる傾向が強く、性的なものとは別に日常的な触れ合いが本当は必要なのに、それの不足が関係悪化の要因の一つとも言われている。
ジョンが言ったように、愛は触れることに違いないが、そうままならないのが多くの人の現実ではないだろうか。
どんなに容姿に恵まれた人でも、社会や人との接点を失うと、くすんでいく。引き籠ることは免疫力を低下させ、顔の筋肉硬化や心のフラット化によって、表情や感情が乏しくなり、その人が本来持っている美点を消してしまう。現実での人間関係の希薄さをSNSで補うが、そこには実際の触れ合いが無いので、上滑り感は拭えないままになる。
肌を触れ合うことで、オキシトシンを分泌させ、リラックスした状態を作り、健康的な社交性を増すことが、その人の本来持つ美しさを見いだす一つ方法だ。
何かの健康商品の謳い文句みたいになってしまったが、つまりはこういうことになる。
とはいえ、特定のパートナーの有無を問わず、こちらの都合に合わせてタイミングよく触れてくれる、もしくは触れられる人はなかなかいないだろう。