トークセンに関してもう少し説明すると、木槌と聞けば叩くというイメージが最初に出て来ると思う。従って、肩たたきのようなもので、道具として木槌を使うのだろうぐらいの予想はつく。つまり凝りを叩きほぐすイメージだ。実際自分も始める以前はそう捉えていた。
これは効果として勿論あるのだが、トークセンはもう少し、深いことを狙っている。
振動。これがキーワードになる。
指圧などの圧力には、施術側の指の強度や、受けて側の痛みへの耐性などの限界があり、おのずとそれ以上は踏み込めない。
だが振動は深く、細かく入っていく。どのくらい深いかと言えば、体は軽く突き抜けている。寝ている人を叩けば、床に振動が伝わるということだ。さらにどのくらい細かくかと言えば、細胞レベルへ及ぶ。人体の7割は水で出来ている。水へと振動として細かく細かく入っていくことが可能となるのだ。
つまり、トークセンによって与えられた振動によって、停滞している部位や体液の流れが、再び活性化されることで体調が戻り、健康を維持出来る。
前出の桜井さんが考案したラバー付きの道具でトークセンを行うと、繊細な振動が生み出されて、さらに深い効果がある。これは本国タイでも日本から逆輸入される形となって評価が高い。彼は、タイの伝統施術全般に通じているが、とりわけトークセンマスターとして、チェンマイでも有名だ。
トークセンの実技的な説明は簡単に言うとこんな感じだが、実は術前に唱えられたり、道具に書かれたりしているマントラ(呪文)があり、これも大切だ。
トークセンにおいては振動が大切だと記したが、マントラには波動がある。意味は分からなくても、唱えたり、唱えられたりすることで、清められたり、魔除けになったり、その音韻で癒されたりする。
マントラに関しても最初は訝しく感じていたが、その効果を実感するとやはり認めざるを得ない。瞑想の時などに唱える音が在ると無いとでは、全く違うのを知っているので、このトークセンにおいてもマントラは、大切なのだろうと思う。言葉が音になれば、やはり振動、波動として、人に影響を及ぼす。
覚えれば、女性でも気軽に扱える道具なので仕事で疲れた足などにトントンとトークセンすればむくみも解消されて美容効果ももちろん期待大だ。実際桜井さんの奥様は、美容視点でのトークセン施術をサラの二階で提供している。
まだまだ日本ではマイナーなトークセンだが、都市部には案外使い手が生息しているかもしれない。まずは、経験してみてはいかがか。自分もバックに潜ませてます。
(つづく)
※『藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」』は、新月の日に更新されます。
「#12」は12月22日(水)アップ予定。