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藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」#11トークセン

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昨日、脳ドックというのを受けてきた。MRI、MRAなどと言われても良く分からないが、放射線ではなくて磁気を用いて輪切り撮影した画像により脳内を診察していただいた。
2年前に人間ドックを受けた際に、胴の輪切り画像は見ていたが、脳は初であった。
耳栓をさせられるほどの騒音が頭部周辺で鳴り続ける中で待つこと約20分。頭部をしっかり固定された上に、その上から密閉されるのだが、あまりの狭さに棺桶を連想した。閉所恐怖症でなくても、かなりの圧迫感である。事前に勧められたように目を閉じ、何か異常があった時のために握らされたボタンを左手で握り胃の上に置いた。
間もなく訪れた睡魔にうとうとしながらも、やはり病気にはならないでおこうと、今更ながら強く思ったのだった。
なるべく病院のお世話にならずに、老衰によって清らかにこの世に別れを告げる。人生の夢を訊かれて、こういう答えを返す人は、いったいどれほどの割合になるのだろうか。人の夢とは、人生の途上の高みについて、例えば、物質的な充足(平均よりは多く満たされたいなど)、精神的な充足(家族と子供に恵まれるなど)に設定されることがほとんどだろう。人生の終わり方を第一に注目している人は少ないと思う。
注意しない気持ちの根底には、どうせ死ぬのだから死に方にあまり執着するよりも、途中を豊かにすることに気を向けたい、というのがあるのだろう。まあ、もっともである。大病や大事故で死のうが大往生で死のうが、そこでおしまいなのだから、今からそわそわと不安を抱えても仕方がないということだ。まあ、ごもっともである。不安は無い方がいい。
だが、あの脳ドックのような検査機に入れられている間のなんとも言えない感じ。あたかも自分が物体として扱われざるを得ない状況を体験すると、検査の繰り返しと管を入れられたり抜かれたり、薬を飲んだり採血されたりする環境に浸らざるを得ない老後というのは、やはり避けたいと改めて強く思った。

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