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藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」#6 気内臓 チ・ネイ・ザン

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翌月曜日からしばらくの間、朝から夕方までみっちり学び、どうにかこうにか免状をいただくことになったのは、成り行きの人生を基本とする私が招いた縁なのか、生温い半生を一喝すべく空の上の貴人が用意した甘い罠なのかは知る由もない。
とにかく北都チェンマイで、晴れて気内臓使いの端くれに加わったのは、確か暑い夏の頃だったと思う。東南アジアの重い夏の一片に残された学びの日々は、四十過ぎの手習いの喜びと共に、希望のような揺らめきを、私に与えてくれた。そのことを何に感謝してよいのかは分からないのだが、やはり手を合わせて頭を垂れておかねば、と思う。
さて、気内臓と私との出会いと、習得にまつわる与太話はこのぐらいにして、気内臓について、もう少しだけ語ろうと思う。
おそらく大方が、読み方を忘れているだろうから、再唱すると、チ・ネイ・ザンである。
もともとは中国において道教の修行者・道士たちが、健康維持と霊的修行に不可欠な高次のエネルギーを獲得するために生み出した方法とされ、中国系タイ人の謝明徳(マンタクチア)氏が整えたヒーリングタオシステムの一つとして普及されている。
多々ある他の療法との大きな違いは、内臓に直接アプローチして、そこに痼りや堅さとして現れている負のエネルギーを解放し、健康維持の手助けをするということだろう。それには呼吸や、発声など諸々のテクニックがあり、ある程度習えば、セルフヒーリングも可能だ。
ざっと語るとこれだけになってしまうが、まずは受けてみていただきたい。幸い、タイマッサージを習う人々の間では、少し前から気内臓を合わせて習うことが多くなっているらしく、探せば、自宅から一時間半径に一人くらいはいると思う。タイマッサージに比べれば、遥かにマイナーな存在だが、身体だけでなく心のメンテまで意識をされているなら、試していただきたい。
私が施術した経験からだと、術後は受けた方の潤いと生気がはっきりと戻っている。目は輝いて、内側から何かがむくむくと。
もし、近くに気内臓をする人がいなかったら、内臓を自分の感覚でマッサージしてみても良いと思う。割と深く押しても大丈夫だし、空腹時に三十分ほどやると効果が分かるはず。
はじめは痛いかもしれないけれど、毎日やっていたら一週間もすれば、消えると思う。なんとなく心も身体も軽いと感じたら、習慣化を考えてもいい。どうしても受けてしまうストレスを定期的に自分でデトックスすれば、しみじみ気づくと思う。腹に何かを溜めないことが、平和だということが。

(つづく)
※『藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」』は、新月の日に更新されます。
「#7」は7月27日(日)アップ予定。

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