“古来より引き継がれてきた自然の恵みを活かし、まだ知られていないハーブや植物の効能を日本から世界へ”をコンセプトに、全て自然由来でひとつひとつ手作りのウェルネスプロダクトを手がける「kiiks(キークス)」。水原希子が2024年2月にローンチした同ブランドの第3弾として、『Green Tea Seed Hair Oil』と『薩摩つげ櫛 お茶染めケース⼊り』が発売された。『Green Tea Seed Hair Oil』はkiiks初の試みで、⽔原希⼦と⻑年親交があり、環境配慮へのヴィジョンを共有するモデルのローラがコラボレーション。プロダクトを通じて、耕作放棄地や職人の後継者問題に取り組んでいる。国内外で活躍する二人ならではの日本への視点や想い、そしてプロダクトを通じて届けたいメッセージについて伺った。
――今回の『Green Tea Seed Hair Oil』と『薩摩つげ櫛』は、それぞれの生産にまつわる耕作放棄地や後継者問題に貢献するプロダクトだと思います。お二人が社会課題に関心を持たれたきっかけがあれば教えてください。
水原「社会課題にずっと関心は持っていましたが、深く考え始めたのはコロナ禍にスキューバダイビングをするようになったのがきっかけです。海が本当に綺麗で、すごく癒しを受けていたんですが、ダイビングをする際に使う日焼け止めやマスクの曇り止めに塗る食器用洗剤について疑問を持ち始めました。マスクがぼやけると海の中で辛いし、みんなが当たり前にやっている。でも、珊瑚を傷つけるし、『これでいいのかな?』って胸が痛くなってきて。そんなふうに感じ始めた頃に、あるダイバーの方に出会って、食器用洗剤の代わりに植物の葉っぱを潰して曇り止めにする方法を教わったんです。正直最初は『本当かな?』って心配で。これで曇ったら海の中で困るなって思ってたんですけど、雲らなかったんですよ」
ローラ「わぁ!」
水原「すごいよね。そのときに自然のパワフルさを感じ、自然のものでなんでもできちゃうのかもと思って。私は自然に癒しを受けているから、私も自然に優しく、自分にも優しいものを作ろうと考えるきっかけになりました」
ローラ「私は、きっかけはいろいろあるかも。でも、ずっとお仕事をし続ける選択をしてきたなかで、ある日、自分を見失っちゃったときがあったの。『私は誰なんだろう?』『何してるんだろう?』『何が一番したいんだろう?』って考え始めちゃって。そこから運動するとか、自分を大切にするようなことを始めた。そうすると、少しずつ環境問題にも関心がいくようになって。そういう風に自分を愛することをはじめたら、どんどん地球環境も気にするようになっていったのはすごく覚えてるかな。
地球に興味を持って調べていくと、例えば日本が何千年という歴史のなかで築き上げてきた伝統文化がここ百年くらいでどんどん少なくなっていて、なくなろうとしていることとか、このまま10年、20年経つとプラスチックの山だらけになってしまうこととかがわかって。しかも、これは遠い未来じゃなく実はすぐに起きてしまうこと。じゃあ自分には何ができるんだろうって気持ちが芽生えてきて、(サステナブルな)ブランドを始めることとかでアクションを起こしたの。ライフスタイルも、食や心に関心が芽生えて、それがみんな繋がっていると感じて。そうやって感じたことをどんどん自分のプラットフォームを通じて発信していってる。そうしたなかで去年、希子ちゃんがナチュラルコスメブランドをはじめて、希子ちゃんも同じ方向に向かっていることがわかって。それが自分の心のなかの自信にも繋がったし、このままでいいんだってモチベーションにもなった。だから今回コラボの話をもらえたことがすごく嬉しかった」
――そのお二人の関係性がプロダクトにどう反映されたと思いますか?
水原「ローラのことは昔からずっと知ってるんですけど、LAに行ったときに深く話す機会があったんです。私たちは日本に生きていて、ミックスで、同い年で、同じようなことを感じて、考えていて、さらに二人ともファッション業界に生きてきて、クリエイティブなものが好きだというピュアな気持ちがあります。こんないろんな共通点を持っている二人だからこそ届けられるメッセージがあるんじゃないかなと気づきました。環境問題を巡る現状はシビアです。緊急事態と言ってもいいくらいで、未来を考えると怖くなる。でもその問題をどうやって若い人たちに伝えるかというときに、なるべくストレスをかけずに、『楽しいよ!一緒にやろうよ!』というアプローチをしていきたいというのがありました。ときめかせることで引き込みたい。その想いで、二人で一緒にものづくりをして、ビジュアルをつくりました。それをきっかけにその奥にあるメッセージやストーリーを伝えられたらなって。
ローラもさっき話していたんですけど、環境問題について考え始めたときって、すごくストイックになりがちなんです。私もコロナ禍にそうなったことがありました。『プラスチックは絶対買わない』『これもダメ、あれもダメ』って感じで、どんどん苦しくなっていったんですね。でもやっぱり苦しいと長続きしない。だから、どうすれば楽しみながらみんなで手を取り合って、自分たちのやりたいことをやりながら前に進んでいけるのかというのがキーなのかなと思います」
ローラ「希子ちゃんとのコラボレーションはすごく楽しかったし、自分が好きなことだからポンポンポンってアイデアも出てきた。実際に自分たちでお茶の実を獲ったんだけど、触れたり感じたりすることで愛着が生まれたし、思い出や気持ちを持って人にも伝えられるし、素敵だなって思った。希子ちゃんも私も本当に好きなオイルだから、同じ気持ちになってくれる人が増えたらいいなって思う」
――ローラさんはオイルの香りを担当されたんですよね。
水原さん「香りだけじゃなく、原材料の厳選から何からローラがやってくれました。彼女はLAでも自分でコスメをつくってて、それが自然のものだけなのに本当にパワフルなんですよ。だから今回もすごく心強かった。オイルって、入れようと思えばいくらでもいろんなものを入れられるんですけど、今回ローラはなるべく少ない原材料でやりたいという希望があって、原材料は五個に絞っています」
ローラ「椿オイルをベースにちょっとホホバオイルを合わせて、茶実油を入れるというバランスにして、そこにジャスミンと白檀で香りづけしたよ!」
――バランスもローラさんが決められたんですね。
水原「そうです。茶の実を使うことは決まっていたのですが、ローラが原材料を少なくすること、調合、バランスをサッと決めて。決断が早いんですよ。私が入る余地はない(笑)」
ローラ「そうそう。『これ!』『これがいい!』って感じで決めていって」
水原「でもその直感で決めた素材や配合が本当に素晴らしいんです。だから、ローラが決めものでいいねってなりました(笑)」
ローラ「自宅でも、研究所みたいにつくって試してつくって試して、直感でやっている」
水原「 私はすごく迷っちゃうタイプなので、ローラの直感で本当に素晴らしいものができて、最高です」
――チームワークとしてもいいバランスですね。ときめきで引き込みたいというお話がありましたが、今回お二人でつくられたビジュアル(*)がミニマルなのに力強くてとても印象的でした。アートディレクションやモデルとしての視点から、どんな想いを込めたかお伺いしたいです。
水原「髪にまつわるプロダクトだったので、二人の髪の長い女性がたくましく佇んでいるイメージを持っていました。髪が長いということが『紡ぐ』というキーワードに繋がったり、自分なりの細かいメッセージがあったんですけど、とにかくシンプルに、パワフルに、そして削ぎ落としたイメージで作りました。できるだけリラックスした状態にしたかったから、LAの友達の家で撮影して、スタイリングもあってないようなもので、着付けもLAで長年着付けをされている日本人女性にやってもらったんです。本当に全てが手作業な感じでした。商品自体もそうなんですが、『自然体で格好いい』というのがビジュアルに出てほしかったんです。だから環境づくりも含めて、友達の家で、少人数で、みんなで楽しく、クリエイティブにやりたかった。やっぱり映るんですよね。人が大勢いて、少し無理をしてるときって。人はわからないかもしれないけど、自分では写真を見てわかるんです」
ローラ「モデルの表現をしているから、私たちの顔にも出ちゃうよね」
水原「出ちゃう。目とか動きとか全てに出ちゃうけど、今回の撮影はすごくリラックスしてたよね」
ローラ「うん! してた」
水原「だからとても楽しかった。メイキングは見えなかったとしても、そういうところが作品を通して伝わると思っていて、実際に今回のパワフルなビジュアルは大きな反響があったから、これをきっかけにより多くの人が商品を見てくれてたらいいなと思います」
ローラ「希子ちゃんは本当にグッドセンスだから、撮影のイメージを聞いたときにすぐに『全部OK!』ってなって。リファレンスをたくさん送ってくれたんだけど、どれも好きだったし、イメージも沸くし、希子ちゃんがつくってくれたものだったから余計にワクワクした。実際、撮影当日も素敵なクリエイティブがパーってできたから、広告として撮るっていうよりも一つのアート作品を撮ろうっていう気持ちが表れたのかなって思ってる」
ーー最後に、お二人はグローバルに活動されていますが、そのことで逆に日本のことが見えてくるというか、今回のプロダクツの特徴でもある日本の伝統文化や素材への気づきに影響していたりしますか?
ローラ「そうだね、そこはあったと思う。やっぱり日本で素晴らしいものを見ると『これを世界に届けたい』って気持ちになるし、世界でいいなって思うものを見ると『これを日本に届けたい』って気持ちになるんだよね。私たちはミックスなんだけど、そのアイデンティティと、したい行動がすごく似てるというか、そういう架け橋になりたいって気持ちはお互いにあると思うし、年々強くなっていっている。昔は、私は何人にも見えないし、みんなの輪の中にいない感じがして、自分ってなんなんだろうってちょっとわからないこともあった。日本語も上手じゃないし、母国のベンガル語も、バングラディッシュに帰ったら忘れていたし。色々迷う時期があったんだけど、大人になればなるほど、ミックスでいいんだって自分を受け入れられるようになってきて、今は楽しい」
水原「本当にそう。私も似たところがあります。やっぱり子どもの頃から自分のアイデンティティがコンプレックスで。日本で育ってるから日本人って感覚がすごく強いんですけど、子どものときに『半分韓国で、半分アメリカ』って言ったら、『日本人じゃないじゃん!』って感じのことを言われたのががすごく怖かった。そこに対しての不安がずっとあって、たぶん今もちょっとはあると思うんですよね。でも今は、自分のアイデンティティを考えたときに、何か一つに絞らなくても、ミックスでもいいんだって思える。いろんな人に否定されることもあるんですけど、でもそれはその人たちが決めることじゃなくて、私が決めることだから。そう考えたときに、日本のことをもっと伝えていきたいって思えたんですよね。
日本には素晴らしい伝統工芸がたくさんあるし、それは世界中の人が愛しているもの。なのに、今は伝統工芸でも廃れてるものがたくさんあって、今回コラボさせていただいた薩摩つげ櫛も、もう職人さんが二人しかいないんです。そういうことも含めて伝えて、どんな国の人でもどんな形でもここからインスピレーションを受けたって人に繋がって、それが後継に繫がったらいいなって思ってるんです。そういうものを一つでも多く、若い人たちに『これって古いものじゃなくて、むしろ一生使える重宝すべき素晴らしいものなんだよ』って自分のフィルターを通しながら伝えていきたい。私はハンドクラフトって、おかしくなるくらい好きなんですよ(笑)。日本には本当に素晴らしいハンドクラフトがたくさんあるから、単純にファンだし、単純に守っていきたいっていう気持ちがすごくあります」
photography Marisa Sudsa(https://www.instagram.com/marisatakesokphotos/)
text Noemi Minami(https://www.instagram.com/no.e.me/)
Green Tea Seed Hair Oil
おり茶の実から抽出された茶実油という美容効果の高いオイルを使用して作られたヘアオイル。日本全国で農業従事者の高齢化や若者の農業離れが深刻な問題となっているなか、鹿児島県の錦江町田代地区でも、近年は茶の消費量や茶葉の価格が低迷し、広大な茶畑の耕作放棄地が増加している。そこで、この地域の課題を解決するため、茶の実を使用した特別なヘアオイルが開発された。自然に優しい茶の実油と、桜島産のツバキ油をベースに、サンダルウッドとジャスミンのエッセンシャルオイルをブレンド、心地よいアロマで香りを整えた『Green Tea Seed Hair Oil』は、美しい髪を育むだけでなく、地域の課題解決にも貢献する、一挙両得のアイテムとなっている。
薩摩つげ櫛 お茶染めケース⼊り
江⼾時代から「櫛になりたや薩摩の櫛に諸国の娘の⼿に渡ろ」と歌い継がれ、その名が全国に広がった⻑い歴史を美しい櫛は、特に薩摩地⽅において深く愛されており、整髪料がない時代から⼀⽣ものの道具として重宝されてきた。⽊材の成⻑が遅いため、年輪は狭く、きめ細かく弾⼒のある質感が特徴とし、なめらかな肌合いを持つ薩摩つげ櫛は、椿油を染み込ませて使⽤することで、髪を梳くたびに⾃然な艶と潤いを与えてくる。現在、この貴重な伝統⼯芸は後継者不⾜という課題に直⾯しており、次世代の職⼈を育てる取り組みが急務とされている。“薩摩つげ櫛” の素晴らしさを広め、伝統⼯芸を守るきっかけとなることを願い、kiiksから展開されているのが『薩摩つげ櫛 お茶染めケース⼊り』だ。
購入はこちら:kiiks ONLINE https://kiiks.online/
*kiiks第三弾発売時に話題となったビジュアル