フィジカルな距離を求められる今、オンラインに没入する時間が増加傾向にある。情報収集や人との繋がりはもちろん大切だが、同時に自身を落ち着いたオフラインの環境に置くこともまた重要だ。自分が求めるものや喜びを感じるものを、己の手を動かして創り上げる時間は、長期戦が見込まれるこのニューノーマルを生き抜くための術でもある。NeoLではハンドメイドのアートで人々を魅了する作家の作品を紹介するとともに、ものづくりの時間へ誘う。
モールという素材に着目し、ポップでどこかノスタルジーを感じさせるキャラクターたちを次々と生み出している藤崎琢磨。頭の中で動いているというキャラクターたちに形を与え、手を動かす中でさらに躍動する息吹を落とし込む、その制作の過程について、新たな形でのアートとの触れ合いの場を作ろうと模索する今について聞いた。
ーーモールを用いた創作を始めたきっかけを教えてください。
藤崎「グラフィックデザインの仕事でモールを使った店舗装飾企画を提案した時、デスクにモールを置いていて、暇な時にちくちくいじっていたら、何か面白そうなものが作れそうと思い、そこからモールを大量に買って色々作り始めたのがきっかけです。
特にこれで作品作ろうとはおもわず遊びみたいな感じで始めました。
その後グループ展に誘われたとき、実験的に作品を展示してみたら意外と反響があって、そこからのめり込んでいきました。それが10年前です」
ーーモールの魅力をどのように捉えられていますか。
藤崎「モールは表面的には可愛くてキャッチーなイメージですが、集合体になり作品になることで可愛くてキャッチーなイメージを残したまま異質感や毒々しさなどいろいろな感情に変化します。その変容ぶりが面白いと思います。そして自由自在に形を変えられるのでどんどん創作のイメージが広がります」
ーー基礎知識/技術はどのようにして習得されましたか。
藤崎「全て独学です。いろいろ考え、学びながら作業しモールの可能性を常に探っています。モールを使って10年が経ちますが、モールの使い方に関しては常に様々な発見があります」
ーー最初に作った作品はどのようなものでしたか。また今振り返って自身にどのようなアドバイスをしたいですか。
藤崎「今見ると粗々な作品でした。こんなものをよく作品と言っていたなとも思います。でもその中にも何か味があって、それは今の制作スタイルでも出せないものだったりします。きっとそれぞれの過程でベストなものを作れていたと思います。アドバイスは、質のいいモールを使った方がよいということですかね」
ーー作品の中にご自身の“核/個性”をどのような形で表現されていますか。
藤崎「特に意識したことはないでが、モールを使って表現することが核/個性になってると思います」
ーーその“核/個性”を作り上げたプロセスを教えてください。
藤崎「カラフルでポップなものが好きで、そういうものにはかなり影響を受けてきました。その中で自分独自のモールアートという表現を見つけたという感じです」
ーー制作のプロセスで一番難しい箇所は?
藤崎「集中できる作業時間を確保すること。アイデアを新鮮なままモールアートに抽出できるかどうか。作品のイメージを頭の中で完結させないことを目指しています」
ーーグラフィックからモールという立体にはまっていったプロセス、そして培ったグラフィックの技術や知識の活かし方を教えてください。
藤崎「もともと模型制作が好きだったので、グラフィックをいかに立体として表現できるかは常に考えていました。粘土などでも作っていましたが、モールが表現したい表情をいちばんうまくコントロールできたと思います。
作品を見てもらう場として半分以上はSNSやwebなので、ここは1枚絵になるグラフィックの要素が強いと思います。そこで見てくれる方のために写真の出来栄えやデザインをどうするかいつも考えています」
ーー色彩もとても特徴的ですが、どのようなバランスを考えられていますか。
藤崎「色を考える上で“色”と“形”はとても重要な関係にあるとおもいます。色と形の組み合わせで心地のいいものを常に追求しています。モールの色は限られていてどうしても自分の理想の色というものがないときが沢山ありましたが、最近ではモールの色自体もオーダーして制作していますので色の表現力をぐっとあげることができました。世界は色彩にあふれているので街を歩いていて不意に飛び込んできた色彩なども参考にしたりします」
ーー子供の頃に想像した怪獣のような一風変わった、けれどもどこか優しくノスタルジックを覚えるキャラクターたちです。どのように各作品の特徴を作っていかれるのでしょうか。最初に作りたい像があるのか、作るうちに自然と方向性ができてくるのかなど。
藤崎「キャラクターを作るときは様々な発想がありますが、後者の作るうちに自然と方向性を作っている、に近いです。頭の中でイメージが完成しないところから作り始めます。自分でもどんなふうに完成するのか作りながら考えることでとてもワクワクした感じになります。そこが一番楽しかったりします。
作品が出来上がったときは、初めて出会った人のような印象をもちます(笑)。
そこから頭の中でキャラクターと対話していくことで、そのキャラクターに合った性格やバックグラウンドを作り上げていきます」
ーーモールのコマ撮りアニメ「モールガール」でご自身のモールが動く様をご覧になっていかがでしたか。
藤崎「映像化は本当に夢のようでした。自分の頭の中では動いていますが(笑)、それがちゃんと視覚的に表現されていることは衝撃的でした。と同時に声優さん、コマドリのアーティストさん、プロデューサー陣、運営の方など本当に様々な方が関わっていたので映像化するまでのプロセスを経験できたことが何より嬉しかったです。映像化にはもっとこうしたいという思いがたくさんあるのでまたぜひやってみたいです」
ーーモールのワークショップを行われるとしたらどのようなものを用意され、どのような制作指導を行われるのか差し支えない程度で結構ですので教えていただけますでしょうか。
藤崎「これまでにさまざまなワークショップをやっています。一つは体験型ワークショップ。これは実際にモールを使って何かを作ってみるというもので、他にもモールのワークショップはありますが、僕のワークショップでは最初に作り方を簡単に教え、その後自由につくってもらうという完成の形がみんなそれぞれ違うものになります。作ってる人それぞれにモールの可能性を感じて欲しいからです。
もう一つは僕がお客さんの望むものを制作するというワークショップ。オーダーいただき、いただいたその場で制作するというものです。1個20分くらいでモールのブローチなどを作っています。かなり体力を消耗してなかなか最近やっていませんが、自分が制作するモールの可能性を感じて欲しいものになります」
ーーこれから創作を始めるビギナーに向けて、技術的、精神的なアドバイスをお願いいたします。
藤崎「ものづくりのは頭で考えるより、体や手を動かす!徹底的に遊ぶ!だと思います。頭を使って考えることも必要かと思いますがそれだけだと長続きしません」
ーー素材や道具の購入にオススメのメーカー/オンラインショップがあれば教えていただけますでしょうか。
藤崎「モールは全て創&遊さんに手配してもらい、京都にある中野モールさんでモールを制作していただいています。間違いなく世界一のモールを制作していただける大切はパートナーさんです」
ーー新型コロナウィルス感染症(COVID-19)でクリエイティヴ面にどのような影響が出ていますか。
藤崎「展示場などで生で作品を見られないというのは、新しい見せ方の発想について考えるいいきっかけになりました。今後はWEBをメインとした作品の見せ方なども模索していきたいです。同時に、実際に生で作品を見る大切さもさらに感じられると思うので、見た人の心に訴えかけるような作品作りは忘れずにしていきたいです」
ーーこの側面で新たに気づいたこと、やってみたいアイデアがあれば教えてください。
藤崎「ZOOMなどでリモートでワークショップをすることなどもありかなと思っています!」
ーー事態が好転し、COVID-19が収束したらしたら何をしたいですか。
藤崎「今は休業している、僕が経営している表参道のギャラリーMATを再開させたいです。アートと実際に触れ合う機会がない少ないなか、早くそういう場所を作っていきたい。あと家族で遊びに行ったり、美味しいものを食べにいきたいです」
ーーニュースなどお知らせがあればお知らせ下さい。
藤崎「COVID-19収束後は
藤崎琢磨
アートディレクター/モールアーティスト
Twitter: mogols_tokyo
IG : mogols_tokyo
HP: http://mogols-fuji.jp/
Online store
https://mogols1111.thebase.in/