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text by Ayana Waki
photo edit by ©︎circusfamily 2020

.nl Issue:人の力だけでは不可能だと思われる作品を最新テクノロジーの力によって実現させることで知られるオーディオビジュアルデザイナー集団Circus Familyインタビュー/ Interview with Wouter Westen from audiovisual designer group Circus Family


Photo by Circus Family

オランダのクリエティヴ業界を盛り上げているアーティスト11人を取り上げる「.nl Issue」特集。近年、多くの国が国境を閉鎖しナショナリズムが高まり、世界共通の言語でもあるアートを通して団結することが以前よりも重要となってきている。NeoLでは、現在の状況と予測不可能な未来のために、議論ができる空間を様々な形で人々に提供するアーティストやアクティビストへのインタビューに取り組み続けている。本特集では、限界に挑み続け、フロントランナーとして走るオランダに在住するアーティストを紹介し、国の魅力についてはもちろん、今現在の環境、社会構成、政治などの問題を乗り越えるために必要とされる緊急性と行動力を喚起したい。
不可能を可能にすることを信念に、様々なテクノロジー媒体の専門知識をもつメンバーからなるオーディオビジュアルデザイナー集団、Circus Family。NIKEやRed Bullなど名門ブランドをクライアントとしてもつ彼らは、人の力だけでは不可能だと思われる作品を最新テクノロジーの力によって実現させることで知られる。最近の作品としては太陽の軌道データを用いて、太陽がDJ役を担うインスタレーション”solar mix table”や、空港での暇つぶしのために、リアルタイムで話したい人のホログラム画像と会話ができる”Hologram bar”などが挙げられる。また、昨年の12月には”How did I get here?”というタイトルで初めての個展を開催した。今後、ますます注目されるCircus Familyに近年のプロジェクトと今後の展望について話を聞いた。
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ーーまず、Circus Familyという名前の由来を教えてください。

Circus Familiy「僕たちはグラフィックデザイナーや映像プロデューサーなどフリーランスが集まったグループなのですが、このスタイルを象徴でき、なおかつ堅苦しすぎず、プロフェショナルに見える名前を探していました。そこで、個々のメンバーの能力が高く、はっきりと意見を持つ人が集まり、世界を旅しながら人々にもてなしをするグループである『サーカス』が浮かび、Circus Familyと名付けました。今も同じメンタリティーで活動しています」

ーーCircus Familyのメンバーを紹介してください。

Circus Family「業界に広いネットワークを持ちますが、中心メンバーは5人です。Taco Potma(アートディレクター / モーションデザイナー)、Cas Dekker(テクニカルディベロッパー/ ディレクター / プログラマー / ウィザード)、Lotte Hoeksema(プロデューサー / プロジェクトマネージャー)、Selcya Westen (アートディレクター / アーティスト)、Wout Westen(クリエイティブディレクター / 設立者)で構成されています」

ーー昨年12月に初の個展”How did I get Here?”がDe Schoolで開催されました。制作プロセスはクライアント向けの作品と比べ、どう違いましたか?

Circus Family「様々な面でユニークだったと思います。初めて友達や家族、身近で支え続けてくれた人に、私たちの大規模な作品を見せる機会でもあったので、パーソナルな面もありかなり感動しましたね。この個展を成功させる上で大切なロケーション、音楽、人、食べ物全てが理想の形になったので、とても満足しています。企業向きか、カルチャー向きかというように、それぞれの用途や目的にフィットした雰囲気づくりをするのを僕たちは得意としているんです」

 


Photo by Circus Family

ーー個展をなぜ”How did I get here?”と名付けたのですか。

Circus Family「タイトルはTalking Headsというバンドの曲”Once in a lifetime”からきています。というのも、歌詞に隠れている意味と曲の姿勢にとても感銘を受けたからです。今回の個展での作品の全て、彼らの曲の歌詞をベースに制作しました。また、お客さんに私たちの作品を真面目すぎず、巧妙でどこか風変わりなものとして受け取ってもらいたかったというのもあります」

– How did i get here?
– Into the blue again after the money’s gone
– Letting the days go by
– Same as it ever was
– Time isn’t holding up


ーー作品は周囲に人が近づくと動きだし、離れると止まる仕組みになっていますよね。ストーリー性を重視されるそうですが、個展を通してお客さんにどんなメッセージを伝えたかったのでしょうか?

Circus Family「主に、周囲の人や環境を新たな目で見渡し、そして受け入れることの大切さを伝えたかったんです。また、お客さん自身が『自分は何を見て、何を聞いているのか』を疑問に感じてもらい、それについて考えてもらう時間を作って欲しいという思いもありました。そこで、作品において素材、色、大きさの予想外の組み合わせをし、お客さんからそういった感情を引き出そうと試みました」

ーーNIKEやEDMデュオYellow Clawなど、様々なクライアントを虜にしてきたCircus Familyですが、そういった過去の経験はこの個展のインスタレーション作りに役に立ちましたか?

Circus Family「もちろんです。クライアント向けの作品、文化的なもの、個人的な作品それぞれから、アイデアやコンセプトが生まれます。作品がお互いに影響されあった結果、それそれが強化されたり、より良い方向に向かうのです。逆もまた然りですが……。アートプロジェクトでの研究や学びが、クライアント向けの作品に無意識に役立つことが多いですね。目的問わず、どのタイプの作品も楽しみながらやっている点が私達のプロジェクトと働き方に反映されていると思います」


Photo by Circus Family


Photo by Circus Family

ーー”Solar Mix Table”についてお聞きしたいと思います。クライアントからどんな企画書が送られてきて、どう解釈したのですか?

Circus Family「デジタルエイジェンシーのCote D’Azurから「クライアントのSol Beerのために、アイスランドで行われるSolstice Festivalというフェスにおいて、当日の日照時間のデータを用い、その情報をもとに音楽がかかるというインスタレーションを作って欲しい」という簡潔な企画書をいただきました。そして、そのアイデアを起点として太陽の軌道に関するデータを使って、プレイリストと曲の順番を選んでくれる機械を作る発想が生まれました。これは、他に例を見ないシステムだと思いますね。『太陽のDJ』というコンセプトを推し進めることで、人目を引くような外見を作れただけでなく、お客さんのフェスでの体験もより魅力的なものになったと自負しています」

ーーCircus Familyは実現不可能だと思われるプロジェクトを作り上げることで有名ですが、クライアントから依頼されたものでかなり難関だった作品はどれですか?また、一番印象的だった作品についても教えてください。

Circus Family「KLMから頼まれた3箇所の空港ターミナルに設置した”Hologram bar”ですね。制作過程から実現に至るまでかなり苦労しました。あと、ミネラルウォーターブランドSPAのために制作した”Rain Project”もです。ベルギーの森林の中、雨が降っている夜に撮影するのが大変でした。私たちは、実現不可能と思われるものを制作することで有名なので、クライアントにゼロから作って欲しいと依頼されることがよくあります。使い慣れた技術を用いることもありますが、新たに特殊な技巧を混ぜ合わせて作品が完成することが多いですね。
印象的だった作品に関しては、どれも個性的で毎回お客さんの反応にやりがいを感じられるので、なかなか簡単には決められませんが、やはり自分たちの初めての作品”TRIPH”ですかね。お客さんから頂いた熱意はとても特別なものでしたし、Circus Familyのこれからの方向性が見えてきた作品でもあります。そして、”How did I get here?”で更に私達の作品の必要性が認められ、今後のモチベーションに繋がりました。また、昨年レッドブルやラッパーのSticks、Fundatie美術館と共催した展覧会”Turbulence”も印象的な作品となりましたね。僕達の専門知識を駆使し、美術館の中で人はどう芸術と触れ合うのかということを感知できました。すごく刺激的な経験でしたし、自分たちの専門知識が活用できる新たな可能性も感じました」

ーーVR, 拡張現実からIotやAIまでテクノロジーを上手く使いこなせば、人間の可能性をより広げることにも繋がりますが、オーディオビジュアルデザイナーとしてとして、逆にテクノロジーが不利だと感じたことはありますか?

Circus Family「テクノロジーを使用するかしないかは自分たち次第ですし、一つの手段としてしか見ていないので、不利だと感じたことはありません。プロジェクトを簡潔化し、それをより良いものにするためにテクノロジーを上手く使う方法を導くのが私達の仕事なので、テクノロジーによって作品がダメになってしまうことは絶対にありません。テクノロジーが思っていたほど効果を発揮できない場合でも、必ず代替品を見つけ成功に導いています」



Photo by Circus Family


Photo by Circus Family


Photo by Circus Family


ーー多くのデザイナーやアーティストが住む都市、アムステルダムの特徴を教えてください。

Circus Family「中心に位置していて、国際的で、小さな子供にとっても暮らしやすい快適な環境が整っていますね。大きすぎず、程よい知名度があるから、他の都市と比べ住みやすいように感じます。また、アムステルダムの税法は大企業にとって有利なので、企業はたくさん仕事をくれますよ」

ーーオランダ出身のグラフィックデザイナーWim CouwelやDe Stijl運動で有名なオランダの画家はミニマリストとして有名ですが、あなたにとってオランダという国を代表するスタイルとはどのようなものですか?

Circus Family「オランダ人は実用的なものを作ることが多いと思います。ミニマリズムは多くの人が共感するものですが、個人的には昔特徴とされていたオランダデザインの陽気さが恋しいですね」

ーーCircus Familyの今後の予定を教えてください。

Circus Family「2020年はかなり忙しい年になると思います。現在は音楽とパフォーマンス、ビジュアルとインスタレーションを融合させ、様々なアーティストとコラボしています。これからは、NIKEやRed Bull、Vliscoなど大手との関係を保ちながらも、急成長しているアジア圏のブランドやアーティストとも新たにコラボし、私達のノウハウを提供していきたいですね。また、今年の春はニューヨークでまた大規模な作品を展示する予定です」


Photo by tdm.space

Circus Family. (est. 2007)
A family of audiovisual designers with a passion for bringing challenging projects to life using graphic design, moving image, music and interactive technology.
circusfamily.com
https://www.instagram.com/circusfamily/

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