現代美術センターCCA北九州で、ベルリンを拠点に活動するアーティスト、ローザ・バルバの日本初となる個展が開催中。日本で初めてのローザ・バルバの個展となるCCAでのプロジェクトは、バルバの映画的な彫刻と映像作品に焦点をあてる。
「地球の中心から外へ」(2007)は、消滅の危機にさらされた島を舞台にしたフィクションを軸に展開。それぞれが生き残り、社会を存続させるためには、住民が一致団結して行動を起こさなければならない、という設定だが、島は年間1メートルずつ移動しているということで、どこか現実味を帯びてもいる。作中の研究者や専門家による報告は、超現実的な雰囲気を醸し出し、美しいドキュメンタリー映画に見えていたのが、より抽象的になり、人々が苦悩する姿やその弱さを露呈していく奇妙な映像になっていく。
バルバの映像作品では、現実と非現実があいまいに表現されることがよくあるが、「経験的な効果」(2010)もその一つ。舞台となるのは、南イタリアのヴェスヴィオ山のある地域。2009年夏に撮影され、主人公は前回起きた1944年のヴェスヴィオ山噴火を生き延びた、「赤の地域」と呼ばれる噴火の直接被害が及ぶエリアの住人だ。「経験的な効果」は、社会のストーリーを記す。信じられない程の緊張と隣り合わせながらも、無力で穏やかでもある生活を送る社会を映し出しだしている。
この2つの映像作品は、自然災害や疎外感、生き残ることの様相によってもたらされる自然と人間の力の間にある複雑な関係について描いたものだが、「Enigmatic Whisper :不思議なささやき」(2017)は、20世紀を生きた一人の芸術家に焦点をあてた作品だ。その芸術家をアレキサンダー・カルダーという。16mmフィルムで撮影されたこの作品は、アメリカ、コネチカット州にあるロクスベリーのカルダーのスタジオを映したもの。映画が描きだしているのは、カルダーが使ったまま保存されている、制作に使われた道具や素材のイメージを通してみた映像的なポートレートであり、また自然の外側の文脈でもある。「不思議なささやき」は、カルダーの一つのモビールに焦点をあて、このキネティックな彫刻は、カルダーのアイコン的な作品として、今なおスタジオの天井から吊るされている。映像のリズムは、何度も起こる突然のシーンの変更とともに、ドラムとトランペットの音と同時に、動きにあるキネティック彫刻によって発せられる音によって明確にあらわされている。
その他、三次元の作品「Footnote」(2013/2019)や16mmフィルムを使った「Color Studies」(2013)、「The Long Poem Manipulates Spatial Organizations」(2014)では、空間におけるオブジェの中で、映画的な表現を追求するバルバの試みを見ることができるだろう。
ローザ・バルバ:
イタリアに生まれ、現在はベルリンを拠点に活動しているアーティスト。 ケルン・メディア芸術大学で学び、スウェーデンのルンド大学にて博士号を取得。ロンドンのテート・ギャラリーやニューヨーク近代美術館、マドリッドのソフィア王妃芸術センターなど、世界各地の美術館やアートセンターで作品を発表する他、ベネチア・ビエンナーレやシドニー・ビエンナーレの国際美術展にも参加、また映画祭でも作品を発表している。 日本では、2019年の瀬戸内国際芸術祭に参加。
会場:現代美術センターCCA北九州 CCAギャラリー(北九州市若松区ひびきの2⁻5 情報技術高度化センター2F
会期:2019年6月29日(土)~2019年9月6日(金)
開場時間:月~金:10時~17時/ 土:12時~17時/日・祝日:休館
公式WEBサイト:http://cca-kitakyushu.org/gallery/20190629_project_barba/