EUKARYOTEでは、2025年1月17日(金)から2月9日(日)までの会期にて、磯村暖、大山日歩、胡桃志歩、丹羽啓、本間賛、釣光穂、山岸紗綾、7名の作家による「GOLDILOCKS ZONE」を開催。POOL SIDE GALLERY(金沢)にて昨年末開催された同タイトルの展覧会に2名の作家を加え、再構成する内容となる。
地球の生物多様性は、ゴルディロックスゾーンという概念と深く結びついている。例えば、太陽から適度に離れた位置で公転している地球上の水は、気体の水蒸気にも、個体の氷にもならず、液体として存在している。海洋、森林、草原など、様々な環境を育む温度、酸素、土、水ーあまたあるこれらの条件が相互に作用、適切に調和し、異なる種が共存することで、生物多様性は成立しているのだ。本展で紹介する作家や作品たちもまた、ゴルディロックスゾーンのように、適切な条件が揃うことで多様なスタイルが生まれ、それぞれが人類の創造性の証となっている。土と鉱物、化合物、水と熱など、根源的な要素を共にしながら、材料・技法、そして地域と文化、様々な要素が交わることで、人の手による工芸・芸術作品は時代の変遷を反映し続け、常に新しい表現が生まれる。
胡桃志歩と釣光穂、そして本間賛は陶芸を、山岸紗綾は漆芸といった、伝統的な技法領域の最前線で、独自の視点と方法論を用いて新たな表現のかたちを模索している。そして一方では、地球史に紐づいたコンセプトのもと丹羽啓は石彫作品を制作するほか、大山日歩は今日的なテーマを探究する過程において、彫刻と工芸の境界ともとれる制作を行なっており、これまで絵画からインスタレーションに至るまで、多彩な手法で社会規範に対する批評的な活動を続けてきた磯村暖は、かねてから陶器への絵付けに取り組んできた。
各々の作家たちの、技法によるこれまでの分類を超えた多彩な作品群をその目でぜひ。
「GOLDILOCKS ZONE」
会期 : 2025年1月17日 (金) – 2月9日 (日)
作家:磯村暖、大山日歩、胡桃志歩、丹羽啓、本間賛、釣光穂、山岸紗綾
会場 : EUKARYOTE 1 – 3F (東京都渋谷区神宮前3-41-3)
[東京メトロ銀座線 外苑前駅 出口徒歩10分]
時間 : 12:00 – 19:00
休廊 : 月曜日
https://eukaryote.jp/exhibition/goldilocks_zone/
磯村 暖 | Dan Isomura
1992年東京都生まれ。2016年東京芸術大学美術学部絵画科油画専攻を卒業したのち、2017年ゲンロン カオス*ラウンジ 新芸術校第2期卒業。
主な個展に「カ」(EUKARYOTE, 東京, 2023)、「んがんたんぱ」(銀座 蔦屋書店GINZA ATRIUM, 東京, 2020)、近年の主なグループ展に「きおくの未来 : アジア、日本の美術と戦後の暮らし」(nichido contemporary art, 東京, 2024)、「ALLOS and ERGON」(POOL SIDE GALLERY, 石川, 2024)、「山梨国際芸術祭」(中村キース・ヘリング美術館、清春芸術村, 山梨, 2023)など。
大山 日歩 | Nichiho Oyama
水で溶くと流動的になり、すぐに固まる便利なモルタルは、19世紀以降に急速に普及し、近代都市を象徴する建材となる。
一見、硬くて丈夫に見える素材だが、実際は脆弱だ。陶器のような焼成による強さも、石のような堅牢さも持っていない、モルタルはいわばモータルな存在なのだ。
「モータル」(死を定められたもの)と「モルタル」という、よく似た日本語の響きにあやかって、定められた寿命がありながら、命が尽きる時期はわからない、そんな都市の民藝について試みたい。
都市における民藝は、かつての民藝運動の「土と火」ではなく、「モルタルと水」で形作られる。
1992年奈良県生まれ、2018年金沢美術工芸大学大学院美術工芸研究科彫刻専攻修了。2020年よりアーティストコレクティブ「カタルシスの岸辺」においても活動を続けている。主な個展に「新興の園地」(彗星倶楽部, 石川, 2018)、「無題の彫刻」(芸宿, 石川, 2017)、主なグループ展に「TOUR」(UNITED ARROWS金沢店, 石川, 2023)、「ストレンジャーによろしく」(金沢20世紀カフェ 喫茶おあしす, 石川, 2021)、「アートアワードトーキョー丸の内2018」(行幸地下ギャラリー, 東京, 2018)など。
胡桃 志歩 | Shiho Kurumi
意図した形がどこか歪む瞬間に、思いがけない面白さを見出している。その歪みがシンプルな形に個性を宿し、自分らしさへと繋がると感じている。結晶が浮かぶ釉薬を用いることで、形の静けさと表面の豊かな表情が調和する作品を目指す。素材そのものの質感と手仕事の痕跡が熔け合うところに、創作の楽しさと新たな発見を感じている。
1993年愛知県生まれ、2018年愛知教育大学大学院教育学研究科芸術教育専攻修了。2022年多治見市陶磁器意匠研究所セラミックスラボ修了。主な展覧会に「新しい風ーishokenのデザインと表現一」(ジェイアール名古屋タカシマヤ 11階美術画廊, 愛知, 2023)、「4人の造形展」(ギャラリー数寄, 愛知, 2017)など。
丹羽 啓|Satoshi Niwa
地球史と日常生活との繋がりを想像した石彫作品を制作。「生活が地球を彫刻する」という考えをもとに、私が地球に刻んだ生活の痕跡を石に留める。
1994年愛知県生まれ、2019年金沢美術工芸大学彫刻専攻修了。2023年より金沢美術工芸大学技術専門員現職。近年の主な個展に「痕跡の彼方」(刈谷市総合文化センター, 愛知, 2024)、「大地より」(GALERIE SOL, 東京, 2022)。主なグループ展に「ここに、ありつづける/Here to Remain」(TURRELL, 金沢, 2024)、アートトラック展示「余所」(とらとふくgallery, 富山, 2024)、「Komoro-Mori-more202 小諸アーティストインレジデンス、「2T4T」(pool side gallery, 金沢, 2024)、「呱々くるめく」(土のミュージアムSHIDO, 兵庫, 2023)「翼果の帰郷」(古川記念美術館分館為三郎記念館, 愛知, 2023)、「IAG AWARDS 2022」(東京芸術劇場, 東京, 2022)、「第3回枕崎国際芸術賞展」(枕崎市文化資料センター南冥館, 鹿児島, 2022)。
本間 賛|Sun Homma
陶芸を主に鋳造やガラスなど保存性の高い素材、技術を用い、自身の天文や占星術等の造詣とを掛け合わせながら、朽ちて失われていくものや、無形である個人的記憶であったり観念的なものを、長い年月を超え標本のように形に残す方法として作品を制作している。
一人で考え込み何度も同じような思考のループを辿っていた悩みについて、土やその他の素材に触れ、表情を探りながら考えを巡らせると、素材が新たな視点を提示してくれることがある。自身の悩みやコンプレックスを作品として昇華し、素材を介して自身と対話する事が解消、緩和につながると考えている。作品制作を通し、自身や他者との関わりについての考えを深めたい。
1998年 東京都生まれ、2023年東京藝術大学美術学部 工芸科卒業。現在東京藝術大学大学院美術研究科修士課程 工芸専攻陶芸 在籍中。これまでの個展に「海王星にそそぐ雨」(JINEN GALLERY, 東京, 2024)、「フェンスと星」(Bcafe & Lab, 東京, 2023)。主なグループ展に「六本芽」( 六本木蔦屋書店, 東京, 2024)、「snow blindness」( POOL SIDE GALLERY, 金沢, 2024)、「日本中の家をアートだらけにする!藝大アートプラザが日本橋に出現」 (誠品生活日本橋, 東京, 2024)、「第60回杜窯会作陶展」( 日本橋三越本店, 東京, 2024)。2021年平山郁夫奨学金賞受賞。
釣 光穂 | Mitsuho Tsuri
陶磁器の素材と技法を用いて、編み物のような表現と明るい色彩で日々の記憶をとどめるような制作をしている。粘土をひも状に伸ばし撚りあわせ、下から少しずつ積み上げて成形。ひもづくりの技法を応用し細分化することで、自分の身体性と回り道をするような時間感覚の変化を感じている。ものをつくる普遍性と喜び、生きて目にするものの儚さを探求している。
1991年兵庫県生まれ。2016年京都市立芸術大学美術研究科修士課程工芸専攻陶磁器修了したのち、2020年金沢市卯辰山工芸工房修了。現在金沢市内にて制作活動を行う。主な個展に「WHEN/WHERE」(ガレリアポンテ, 石川, 2023)、「編憶入裡-釣光穂陶藝個展」(新北市立鶯歌陶瓷博物館 陶芸長廊, 台湾, 2022)、「パレットの実験」(KUNST ARZT, 京都, 2021)、近年の主なグループ展に「Gimhae,the sea of gold knocks on Asia」(クレイアーク金海美術館, 韓国, 2024)、「陶芸の進行形」(菊池寛実記念智美術館, 東京, 2023)など。
山岸 紗綾 | Saya Yamagishi
木を削り、漆を塗り重ね、金銀貝や卵殻など自然素材を取り込み、小さな彫刻作品や装身具を制作する。主な作品として、架空の植物を標本のようにコレクションしてゆく作品群「plant collecting (2013-)」、日本の情景を絵画的に描いた装身具「景色を纏う (2015-)」などがある。
今展で発表する作品は、中世装飾写本に魅了された山岸が写本と対話していく中で生まれた作品である。 2023年より、写本に込められた祈りやそこに描かれる模様と、自身の作品観や描いてきた模様とに親和性を見い出し、制作を通して意匠の深奥や普遍的な人の思いを探求している。西洋と東洋それぞれの装飾の中に見られるもの。模様は往来、融合しているという作家独自の考えから作品に描く模様に”祈り”を込める。制作の過程では、写本という書き写しの行為自体を反芻するように、蒔絵や螺鈿という技巧の中で文字や模様を幾重にもなぞる。
1981年石川県生まれ。2006年金沢美術工芸大学美術工芸学部工芸科漆・木工コース卒業後、2013年金沢市卯辰山工芸工房修了。主な個展に「Quiet Dialogue」(gallery emmy art +, 東京, 2023)、「秋の庭」(gallery DiEGO表参道, 東京, 2022)、近年の主なグループ展に「JAPANESE LIKES PINK – この島国が桃花色に染まるとき」(Gallery O2, 石川, 2024)、「秋葉絢・山岸紗綾 二人展」(ギャラリーアルデバラン市ヶ谷, 東京, 2023)など。