Motomasa Suzuki
reflections-no.6 (detail)
2024, Acrylic on wood, (H)112.5 x (W)83.0 x (D)15.0 cm
©︎Motomasa Suzuki
Courtesy of Takuro Someya Contemporary Art and the artist
Takuro Someya Contemporary Artは 2024年12月14日より、鈴木基真による個展「あわいとあいだ」を開催。
2016年の個展「wall, roof, window」から約8年ぶり、TSCAが天王洲にギャラリーを移転して以来初の個展となる本展は、多様なメディウムを用いて制作を行う鈴木にとって主軸となる木彫の発表でありながらも、スケール感の変化やペインティングへの近接など、これまで以上に魅力的な鑑賞体験を可能 にする展覧会となるだろう。
アメリカ映画に見られる風景や建築のモチーフを手がかりに、鈴木基真は物質と空間のはざまに漂う場の記憶を形にしてきた。
その彫刻は、ミニチュア模型やジオラマを思わせる一方で、光学的な歪みやスケールの操作を通じて不思議な知覚体験を引き起こす。複層的な考察を繋ぎ合わせる鈴木の風景彫刻は、情感に満ちたワンシーンを細密に刻み出しながら、イメージと物質性、静と動、過去と現在を行き来し、場の記憶を掘り下げる装置として機能。そして、現代彫刻の可能性を広げながら、私たちの感性に新たな問いを差し出し続けている。
Motomasa Suzuki
reflections-no.2
2024, Acrylic on wood, (H)120.0 x (W)158.5 x (D)9.5 cm
©︎Motomasa Suzuki
Courtesy of Takuro Someya Contemporary Art and the artist
「あわいとあいだ」と題した本展では、鈴木がウェブ検索を通じて収集した窓のイメージをもとに彩色された、7点の木彫彫刻が展示。
それぞれ異なる環境に存在していた窓が一つの空間に集められ、現実の延⻑でありながら視覚的な違和感と調和が織り交ざる非現実的な異空間が生み出されている。通常はガラスがはめ込まれている窓の映り込みを描いた表現は、鑑賞者の視線をガラス窓向こう側の風景へと誘導するが、実際には木製の支持体にアクリル絵具で描かれており、物質性を際立たせるとともに絵画的な平面を前景化している。また、窓というモチーフは、内と外、見る者と見られる者を繋ぎ、同時に隔てる存在として機能し、絵画のフレーム が風景を切り取るように、記憶の曖昧さを静かに浮かび上がらせる。
こうした手法は、彫刻作品における表面性を強調し、物体が持つ量感と、そこに描かれる平面的なイメージとの間に複層的な対話を生み出している。
立体的構造の中に描かれた平面のイリュージョンは、まるで写真がある瞬間を封じ込めるように時間と空間を折りたたみ、固定化された意味を拒みつつ、観る者に多層的な解釈の余地を与える。やわらかく触覚的で有機的な素材を扱う作品は、一方で支持体を彫塑する時間の痕跡を伴いながら、窓枠に仕切られた平面に反射した光や風景の断片を描きこむことで、内的記憶と外的風景が共鳴する新たな作品世界をつくり出している。
鈴木の作品には、多様な要素が秘められた親和性によって瞬時に結びつき、偶発的で詩的な情感が立ち上がる瞬間がある。それは、ガストン・バシュラールが『空間の詩学』でいう「親密さ」と「無意識の記憶」 の視覚化とも響き合う。バシュラールが家の隠れた隅々や扉、窓に宿る詩的想像力を論じたように、鈴 木の彫刻は風景を一つの内的な空間として再編することで、鑑賞者の記憶や感覚と交錯する場を形成していくのだ。それは、映画の構築されたイメージそのものでも、目の前の風景でもなく、記憶の襞を漂い、感覚の裂け目を縫い合わせるような場所であり、極めて現代的な「場」の性質を静かに示唆している。
鈴木基真|あわいとあいだ
Motomasa Suzuki | Scenery reflected in the window
会期:2024年12月14日(土)〜2025年2月1日(土)
*初日の14(土)は15時ごろより作家在廊予定
冬季休廊:2024年12月24日(火)〜2025年1月6日(月)
開廊:火〜土 11:00〜18:00
休廊:日曜・月曜・祝日
会場:Takuro Someya Contemporary Art
〒140-0002 東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA Art Complex I 3F TSCA
TEL 03-6712-9887 |FAX 03-4578-0318 |E-MAIL: gallery@tsca.jp