「Can I Believe in a Fortunate Tomorrow? ー幸せな明日を信じてもよい?ー」メインビジュアル《Drone in Search for a Four-Leaf Clover》
KOTARO NUKAGA(天王洲)では、2024年11月2日(土)から2025年1月25日(土)まで、マルチメディアアーティストで映像作家としても知られるスプツニ子!(Sputniko!)の個展「Can I Believe in a Fortunate Tomorrow? ー幸せな明日を信じてもよい?ー」を開催。
2009年のアルスエレクトロニカ(オーストリア)への参加以降、メディアアート、テクノロジーの世界を駆け抜けてきたアーティストであるスプツニ子!による本展は、未発表の新作を含む3シリーズの作品で構成。1〜30分程度の16点の映像作品を見ることができる。
アーティストによるステイトメントは以下。
2000年代から2010年代にかけて、インターネットやソーシャルメディアの発展によって思い描かれたユートピア。しかし、2020年代になると、そのユートピアは瞬く間に、誤情報の拡散、不平等の深刻化、そしてそれらに伴う社会の分断といった冷厳な現実へと姿を変えました。この目に見える分断や漠然とした不安は、私の心に重くのしかかっています。
11月上旬に実施されるアメリカ大統領選挙は、こうした分断の現状を鮮明に反映しており、私たちは、テクノロジーがもたらすはずだった「幸せ」や「希望」が今どこにあるのか、再考する必要に迫られています。
効率性や利便性は、本当に私たちの幸せに繋がっているのか?
テクノロジーは、私たちを解放するのか、それとも新たな束縛となるのか?
私たちは、まだ未来を信じることができるのか?
本展を通じて、こうした問いを皆さんとともに考えていければと思います。
Sputniko!
《Drone in Search for a Four-Leaf Clover》シリーズ 2023
シリーズ①:《Drone in Search for a Four-Leaf Clover》
昨年金沢21世紀美術館で開催された「DXP(デジタル・トランスフォーメーション・プラネット)―次のインターフェースへ」展で展示され、現在イギリスの著名なデジタルアート・アワードのひとつであるThe Lumen Prize(ルーメン・プライズ)にもノミネートされている国際的にも高評価を得ている作品。
群生するクローバーの上をドローンがゆっくりと飛行する映像をAIが解析し、「幸せの象徴」とされてきた四つ葉のクローバーを見つけ出すという映像作品だが、テクノロジーによって大量に発見できるようになった四つ葉のクローバーは、果たしてわたしたちを幸せにしてくれるのだろうか?
テクノロジーは、かつては人の目で地を這うようにして探すしかなかった四つ葉のクローバーを簡単かつ効率的に発見することを可能にする。その精度とスピードは驚くべきものではあるが、その「進歩」には違和感を覚える部分もあるのではないだろうか。
《Can I Believe in a Fortunate Tomorrow?》シリーズ 2024
シリーズ②:《Can I Believe in a Fortunate Tomorrow?》
「彩雲」、つまり太陽近くの雲が虹のように七色を帯びて見える現象を、AIによってシミュレートした映像作品。
雲の中の水や氷の粒で光が屈折・散乱することで雲が七色に輝く「彩雲」は、古来「吉兆」と信じられてきた。本作では、流れる雲の映像をAIに画像解析させ、虹色の輝きを合成することで、「彩雲」がシミュレートされている。
映し出される映像は「彩雲」そのもので、見る人を本物の彩雲同様に幸せにする一方、映像自体はといえば、AIによるシミュレーション、つまりある種のフェイク映像とも言える存在であり、本作には、テクノロジーが示す未来の両義性が暗示されている。
《Tech Bro Debates Humanity》シリーズ 2024 | 「Tech Broたちの人類論争 #3 – 人類はなぜ宇宙進出すべきか?」
シリーズ③:《Tech Bro Debates Humanity》
ふたつのモニターに、さまざまな人類の課題について議論をしつづける2人の男性が映し出される。この2人は、アーティストであるスプツニ子!の容姿や声音を生成AIモデルによって「白人男性」化し、さらにイーロン・マスクやピーター・ティールなどのいわゆる「Tech Bro」的思考を憑依させたアバター(コミュニケーションを行う分身・キャラクター)。2人の議論の内容も、全てAIによって生成されている。
スプツニ子!(Sputniko!)
「Can I Believe in a Fortunate Tomorrow? ー幸せな明日を信じてもよい?ー」
会期: 2024年11月2日(土) – 2025年1月25日(土)
オープニングレセプション: 2024年11月2日(土) 16:00-18:00
開廊時間: 11:00 – 18:00 (火-土) ※日月祝休廊 ※11月10日(日)は開廊
会場: KOTARO NUKAGA(天王洲)
〒140-0002 東京都品川区東品川1-32-8 TERRADA Art Complex II 1F
トークイベント概要
11月9日(土)に展覧会会場にてトークイベントを開催。
タイトル:「社会を変えるアートとテクノロジーの交差点」
登壇者:
スプツニ子!(アーティスト・株式会社Cradle代表取締役)
黒澤 浩美(金沢21世紀美術館チーフキュレーター)
施井 泰平(アーティスト・スタートバーン株式会社代表取締役・株式会社アートビート代表取締役)
日時: 11月9日(土)16:00 – 17:15 (開場 15:30)
※事前予約不要 ※着席定員40名
※展覧会自体は11:00 – 18:00いつでもご覧いただけます
スプツニ子!
東京生まれ。東京を拠点に活動。
インペリアル・カレッジ・ロンドン卒業。ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(英国王立芸術学院)修了。
スプツニ子!は、バイオテクノロジー、ジェンダー・パフォーマンス、異なる生体間のコミュニケーションといった幅広いテーマを取り扱うマルチメディア・アーティストおよび映像作家である。科学やテクノロジーを駆使して現代社会における社会的価値観を掘り下げ、鑑賞者に向けて次々に登場する新しいテクノロジーの文化的、社会的、倫理的影響について問いを投げかけている。2013 年から 2017 年までマサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ助教として Design Fiction Group を主宰。現在は、東京藝術大学准教授を務めている。
作品はこれまでに、ニューヨーク近代美術館(ニューヨーク/アメリカ)、ポンピドゥー・センター・メス(メス/フランス)、ヴィクトリア&アルバート博物館 (ロンドン) 、クーパー・ヒューイット国立デザイン博物館(ニューヨーク/アメリカ)、森美術館等にて展示。また、ヴィクトリア&アルバート博物館(ロンドン/イギリス)、金沢 21 世紀美術館、横浜美術館、M+(香港)に作品が収蔵されている。