《彼岸の空間と此岸の空間》2017
顔料インク、アクリル・シルクスクリーン、 ガラスの粉末、ラメ、アクリル絵具/カンヴァス
217 x 300 cm(3 幅対)
国際的に高い評価を得る日本人アーティスト、田名網敬一 (1936‐) の初となる大規模回顧展が開催。
田名網は幼少期に経験した戦争の記憶とその後に触れたアメリカ大衆文化からの影響が色濃く反映された、色彩鮮やかな作品で知られている。本展は当時の資料を含めて田名網が手掛けた膨大な作品を紹介することで、これまで包括的に捉えられることがなかった、その60年以上におよぶ活 動を「記憶」というテーマのもとに改めて紐解く。
①《1967 東京》1967
シルクスクリーン印刷/紙 103 x 72.8 cm
②《Wonder Woman》1967
インク、コラージュ/紙 38.5 x 48.5 cm
③《Gold Fish》1973
アクリル絵具/イラストレーションボード 36.4 x 51.5 cm
田名網は武蔵野美術大学デザイン科に入学後、篠原有司男、赤瀬川原平、荒川修作らと出会い、彼らの活動に最前線で触れながら、1957年に日本宣伝美術会主催の日宣美展で特選を受賞する。
在学中からデザイナーとして仕事を依頼されるようになり、卒業後は博報堂に入社。2年ほどで退職した後は画廊での展示に固執せず、1966年にはアーティストとしての出発点ともいえる作品集『田名網敬一の肖像』を出版。アンディ・ウォーホルの美術やデザインといったひとつのメディアに限定しない制作方法に大きな刺激を受け、自らを「イメージディレクター」と名乗るようになる。その後、シルクスクリーンによるポスター(①)、コラージュやアニメーション、イラストレーションや絵画などの作品を精力的に手掛けるようになっていった(②,③)。
④《フレデリック・ロイス ー 臓器の劇場》1987
アクリル絵具/カンヴァス 145.5 x 145.5 cm
⑤《回廊(B)》1986
アクリル絵具、色鉛筆/カンヴァスで裏打ちした紙 130.5 x 130.5 cm
⑥《昇天する家(C)》1986
木、ラッカー 100 x 63.5 x 24 cm
1960年代後半からは音楽や映画、文芸に係る多くの雑誌のエディトリアルデザインを行い、1975年には日本版『PLAYBOY』の初代アートディレクターに就任。この頃、並行して実験映像も制作し、映像作家・松本俊夫と上映会を開催するなど表現の幅を着実に広げていく。
1980年代は中国への旅行と1981年に経験した約4か月にわたる入院中に見た幻覚をきっかけにして、東洋的な楽園や奇想の迷宮を思わせるようなイメージを描くようになる(④,⑤,⑥)。 1991年には京都造形芸術大学の教授にも就任し、後進の育成にも携わるようになる。
⑦《キリコ劇場》2009
アクリル絵具/カンヴァス
194 x 145.5 cm
⑦《気配》2022
デジタルカンヴァスプリント、雑誌のスクラップ、インク、アクリル絵具、クリスタルガラス/カンヴァス
194 x 130 cm
2000年頃からはこれまで田名網自身の作品に現れていた様々なモチーフが再び組み合わされることで、より複雑でダイナミックなイメージが展開されている(⑦,⑧)。田名網にとって作品制作とは過去の記憶を辿っていく作業であり、記憶が自身のなかで無意識のうちに変化していく様子を捉えようとする行為でもある。
87歳となった今も旺盛な創作活動を続ける田名網の存在は、世代や国を超えたアーティスト、そしてデザイナーたちを魅了し続けており、コラボレーションを求める声は後を絶たない。これは60年以上にわたる活動のなかで、田名網自身が常に自らの表現方法を刷新し続けてきた稀有な感性を持ったアーティストであるからだといえるだろう。また近年、田名網は海外文化を独自に受容した戦後日本の作家としても世界的に評価が進み、ニューヨーク近代美術館 (アメリカ)、ウォーカー・アート・センター(アメリカ)、シカゴ美術館(アメリカ)、M+(香港)、ハンブルガー・バーンホフ(ドイツ)にも作品が所蔵されている。
本展は多方面から注目が集まる田名網が現在まで探究を続けている、虚実が入り混じった記憶のコラージュのような作品世界を存分に体感できる待望の機会となるだろう。
⑩《NO MORE WAR》1967
シルクスクリーン印刷/紙 63 x 48 cm
田名網敬一 記憶の冒険
Keiichi Tanaami: Adventures in Memory
https://www.nact.jp
会期:2024年8月7日(水)~ 2024年11月11日(月)
休館日:毎週火曜日
開館時間:10:00~18:00
※毎週金・土曜日は20:00まで
※入場は閉館の30分前まで
会場:国立新美術館 企画展示室1E(〒 106-8558 東京都港区六本木7-22-2)
お問合せ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
主催:国立新美術館、朝日新聞社
協力:NANZUKA
観覧料:一般2,000円、大学生1,400円、高校生1,000円
※中学生以下は入場無料。
※障害者手帳をご持参の方(付添の方 1 名含む)は入場無料。
チケット情報は後日、国立新美術館ホームページ等でお知らせします。
©Keiichi Tanaami
Courtesy of NANZUKA