NANZUKAは、スペイン人アーティスト、Julio Anaya Cabanding (フリオ・アナジャ・キャバンディング)の新作個展「Wunderkammer」を開催する。本展は、キャバンディングにとって、昨年NANZUKA 2Gにて開催した小個展に続いて、神宮前NANZUKA UNDERGROUNDにおける初となる大規模個展。
キャバンディングは、1987年スペインのマラガに生まれ、現在もマラガに在住のアーティスト。2018年に、マラガ大学ファインアート学科を卒業。地元マラガ市内の廃墟や橋の下、港など人があまり立ち寄らないような場所に、美術史上の著名な絵画を引用した細密な絵画をグラフィティとして描き、一躍その作品はSNSを通して世界中に知れ渡った。昨年には、リヨンビエンナーに参加し、Théodore Chassériau(テオドール・シャセリオー)の名作「Le Christ au Jardin des Oliviers」(「オリーブ畑のキリスト」)を引用した大作を発表し、大きな話題に。
キャバンディングの創作活動は、廃材のダンボールや石膏ボード、板などを拾い集めることから始まる。そして、誰もが教科書で知っているような美術作品を、捨てられたゴミや荒廃した街の壁に描く。それは、アートを神格化させるシステムへの強烈なカウンターであり、同時にエコシステムの中で生み出される絵画の最終形態とも捉えることができる。
かつてマルセル・デュシャンが既製品の便器を美術館に持ち込んだことと同じように、キャバンディングは美術史上の著名な絵画を美術館から街の中に持ち出す。どちらも、高尚なアートの存在をどこまで身近な存在とできるかという挑戦だが、その手法は真逆。キャバンディングの作品は、アプロプリエーションアートの亜種として説明することが可能だが、更に美術館と公共空間(ストリート)、 耐久性とアートの価値といったテーマを複合的に捉える。現在の美術館やアカデミズムを頂点とするアートのあり方に、一石を投じようとする 21世紀の新しいアートの形と言えるだろう。
今回の展覧会タイトル「Wunderkammer」は、日本語では「驚異の部屋」と訳されるルネサンス後期およびバロック期に確立された様々なオブジェクトをその異なる起源で組み合わせて提示するキャビネットを意味する。キャバンディングは、本展のために恐竜の化石、古代エジプトのミイラ、ピカソやマティス、ゴッホや葛飾北斎、ウォーホルやバスキア、はたまたスニーカーから鉄腕アトムのおもちゃ、そして空山基やハビア・カジェハの作品まで縦横無尽に模倣を尽くした作品を制作し、それらをキャビネット方式で陳列してみせる。また、1F展示室ではピカソのゲルニカをオリジナル作品とほぼ同じスケールで描いた作品を展示する。
フリオ・アナジャ・キャバンディング
Wunderkammer
NANZUKA UNDERGROUND
2023年9月2日(土) – 10月1日(日)
水曜日 – 日曜日 11:00 – 19:00
*月曜、火曜休業
Opening reception: 2023年9月2日(土) 16:00 – 18:00