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資本主義の後の世界「ポスト・資本主義」との向き合い方について提示。ステファン・ブルッゲマン、オリオール・ヴィラノヴァによる展覧会「Economy and Love」




KOTARO NUKAGA(六本木)では5月20日(土)より、7月8日(土)まで、パリのポンピドゥー・センターで大規模なインスタレーション作品を展示するなど世界で活躍するステファン・ブルッゲマンと、ヨーロッパを中心に様々な美術館で展示・収蔵される気鋭のコンセプチュアル・アーティスト、オリオール・ヴィラノヴァによる展覧会「Economy and Love」を開催。(公式HP: https://kotaronukaga.com/exhibition/economy-and-love/ )


ステファン・ブルッゲマンは、メキシコ生まれで、メキシコシティやロンドン、イビザ島を中心に活動。ブルッゲマンは、我々が日常的に目にする、ニュースやSNS、街なかに溢れる広告などのテキストを、辛辣な現代社会批評とポスト・ポップの美学的視点を交えて巧みに組み合わせ、日々加速するデジタル社会にはびこる矛盾をあぶり出す。鮮やかな色彩と鏡やネオンサイン、ベニヤ板といった身近な素材を操り、時代性を読み取る洞察力をポップに具現化する手法が高い評価を得ており、2019年にはパリのポンピドゥー・センターで大規模なインスタレーション作品を展示するなど、各国で展覧会やプロジェクトを展開している。日本でもタグチアートコレクションやOKETA COLLECTIONに収蔵されるなど、著名コレクターからの高い注目を獲得している。オリオール・ヴィラノヴァは、スペイン生まれでブリュッセルを拠点に活動。ステファン・ブルッゲマンと深い親交があり、ヨーロッパの数々の美術館で展示・収蔵されている気鋭のコンセプチュアル・アーティスト。ヴィラノヴァは、蚤の市をくまなく探り、ポストカードのコレクションを構成し、それらを通じて自身の制作する芝居やインスタレーション、そしてパフォーマンスの思想的な素地を与えてくれる「思考する機械」を作り出そうとしている。

本展「Economy and Love」において、ブルッゲマンとヴィラノヴァのふたりは、「economy(経済)」を「エモーショナルなもの」として捉えることが可能なのかということを鑑賞者に問いかける。「economy(経済)」と「love(愛)」の関係性を並列に扱い、「資本主義」の限界が指摘される昨今、その後の社会、つまり「ポスト・資本主義」との向き合い方を提示し、考える機会を創出する。



ステファン・ブルッゲマン《Untitled View (Google)》2022


ステファン・ブルッゲマンは、本展において「金箔」をメディウムとして用いた新作《Untitled View》シリーズを発表。「金箔」は、紀元前から高貴な人々だけが装飾品として身にまとい、儀式や葬いで象徴的に用いられるなどスピリチュアルな存在であり続ける。一方で1816年には英国で貨幣の価値基準として金を用いる「金本位制」が始まるなど、価値の高いものの象徴として経済的な面でも珍重されてきた。ブルッゲマンは、このスピリチュアルと経済という、相反するコンテクストをもつメディウムである金箔を支持体にラフに貼り付け、作品の表面を作る。どの作品もその表面の一部がのぞき窓のように切り取られている。ウェブブラウザの検索窓のようにも見える、その煌めき、反射をする金箔の中の空虚ともとれる窓、これは英語において「わたし」を示す「I」を寝かせたもの。経済活動も含めたあらゆるものがデータ化され、インターネット上にある現代において、作品の窓から向こうを覗こうとすることは、「わたし」自身を構成する情報やモノとつながっていく現代社会の構造を仄めかし、わたしたちに熟考を促す。



リオール・ヴィラノヴァ 《Economical Poem(From 20 to 10 in 16movements)》2022


オリオール・ヴィラノヴァは、本展において《Economical Poem》というペインティングのシリーズを展示。本作はニュートラルなグレーを背景とし、白く描かれた数字によって構成されている。極めてパーソナルなテキストを送り合うポストカードというメディアの特性に注目したヴィラノヴァの作品の重要な点は、蚤の市(マーケット)のリサーチとそこでのポストカードの蒐集。ヴィラノヴァはほぼ毎週何度も蚤の市へ足を運び、そこで売られているポストカードを購入することから制作をスタートした《Economical Poem》に描かれた数字は、この蚤の市(マーケット)において、ヴィラノヴァがポストカードを蒐集するために、売主と交わしたコミュニケーションを表したもの、つまり、実際に交わされた値引き交渉のやり取りにおいて現れた価格とその推移になる。左列は売主、右列は買主であるヴィラノヴァが提示した価格。最後は交渉が成立し、同じ価格が描かれる。描かれた数字がヴィラノヴァのアーティスト活動を支える、マーケットにおけるコミュニケーションであるとすると、「数字」は単なる「符号」ではなく、まるでその場にいたふたりのやり取りの声が聞こえてくるように意味を持つコードとなる。



展示風景 “UNLEASHED SPEED UNLEASHED SPEECH” Curated by Stefan Brüggemann, 2020, KOTARO NUKAGA(天王洲)


「Economy and Love」
会期: 2023年5月20日(土) – 7月8日(土)
開廊時間: 11:00 – 18:00 (火-土) ※日月祝休廊
会場: KOTARO NUKAGA(六本木)
住所: 〒106-0032 東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル2F
https://kotaronukaga.com/about/

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